耳鳴について考える2~脾と心の異常

 耳鳴の講義を菅沼栄先生から受けました。菅沼先生のプロフィールとも言えるサイトを先週もご紹介しました。東洋学術出版社のサイトです。 

 耳鳴治療は難しいものですが、基本的考え方を整理したいと考えています。先週は腎の異常についてお話しましたが、今週は脾と心の関わりについてお話します。

 脾は消化吸収の働きを担いますが、脾の力が減少すると吸収したエネルギーが頭(心)に届かなくなり、耳の失調が起こるとされています。この状態は心血不足といわれる状態です。こういう人には活血法と昇陽(エネルギーを上(頭=心)に送る)が必要になると考えられます。

 脾の働きが悪いので、昇陽させることを重点的に考えるなら、代表的処方は補中益気湯だと思います。ただし、後で触れますが、痰湿が頭に生じて症状が出ている場合には、降濁しにくくなり、症状が悪化することもあります。

 活血については、以前にお話した認知症の活血法と同じように治療をしていきます。更年期の耳鳴などはここに含まれると予想できます。

 当帰芍薬散が使いやすいですが、積極的に活血したい場合には、冠元顆粒も考えてよいでしょう。

 逆に、頭で生じた老廃物を体に戻すのも脾の働きですが、この働きが弱ることでも耳の症状がでてしまいます。汚れた水が頭に溜まるという意味で痰湿(あるいは陰濁)が頭に溜まると表現します。この場合、降濁(汚れを頭から除く)が治療の基本になります。清暑益気湯(せいしょえっきとう)には黄柏(おうばく)という生薬が入っていて、その作用を生じます。痰湿を除くということを中心に考えるならば、温胆湯(うんたんとう)を考えます。 

 美食でも痰湿が全身に現れ、頭まで上昇してしまうことがあります。この場合にも降濁して治療しますが、入ったカロリー量が多いため、湿熱の状態になっているため、同時に清熱(熱を除く)する必要があります。食事の内容も少し考えるべきなのかもしれませんね。

 次回は肝にまつわる耳鳴について解説します。

メルマガ「実践!新ロハス生活~これであなたも医者いらず」より

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2009年06月07日