【栄養療法】微量でも、とても大切な鉄分について2

 先週から鉄について解説を始めています。頭痛や肩こり、風邪をひき易い、めまい耳鳴り、疲れやすい、などのありふれた症状が、鉄欠乏性貧血の診断にならなくても、鉄欠乏により生じている可能性がある、ということでした。

 さて、今日は鉄の代謝についてです。

 鉄は吸収率が必要量や摂取した鉄の形態、同時に摂取した食物などに影響を受けます。

 食物中の鉄分は一時小腸粘膜細胞の中に貯蔵されます。そして必要時には吸収されるわけですが、不要な場合には小腸粘膜ごとはがれおち、便となり排泄されます。小腸がこういう機構を持っているので、鉄が過剰に吸収されるということは考えにくいわけです。

 動物性食品の中にはヘム鉄が豊富に含まれます。吸収率が10~30%と高くなります。一方、植物性食品の鉄は非ヘム鉄で吸収率は5%以下です。同時に摂取した食物により吸収率が左右されやすい性質があります。

 鉄の吸収を妨害する物質とは、鉄と不溶性の塩を形成するものと考えられます。フィチン酸(穀物の外皮に含まれる)、リン酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、お茶やコーヒーに含まれるタンニン、食物繊維、カルシウム、防腐剤に含まれるEDTAが挙げられます。

 逆に鉄が可溶性で吸収されやすくなるためには、2価鉄が酸化されないこと、または3価鉄が可溶性キレートを形成することが条件になります。ビタミンCは最も有効な物質と考えられ、他には食肉中の含硫アミノ酸、有機酸が挙げられます。

 読者のHさんからは、カフェインの影響について質問がありました。ここで調べた限りですが、コーヒーの場合にはタンニンの方が影響あるようです。たくさんの人が緑茶をペットボトルで飲んでいますけれど、鉄の代謝の観点からはあまりおススメできないことのようです。

 Hさん、ありがとうございました。
 来週は鉄欠乏の臨床についてお話します。

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2010年07月10日