ヘルスプロモーションと学校保健
ヘルスプロモーションと学校保健
「しぶやの学校保健」第70号より
健康を考える時に患者さんも医師もついつい個々の事例に終始しがちで、社会の包括的な枠組みには思いが至らないことが多いものです。私は社会全体の状況をコントロールして個々の健康を守るというヘルスプロモーションの考え方に大いに賛成です。この取り組みを達成するためには健康教育が重要であると考えますが、現在の日本では健康教育が行える可能性のある施設は学校だけであると思います。そのことから私はヘルスプロモーションが学校保健の主要な役割として位置づけられるべきであると考えています。
学校保健のヘルスプロモーションにおける役割は、主に健康教育とデータ収集であると思います。子どもは大人よりもむしろ身体に対する興味が大きいので、それぞれの年齢に応じた教材と教育の場が与えられることにより健康教育は達成され得るはずです。しかし実際の学校現場には健康をテーマにした良質な教材は著しく不足しているように感じます。
健康教育教材作りは医師の重要な仕事であると思いますが、そういう教材を医療者が提供することには慣れていません。普通に疾病予防に関する知識を伝えることでさえ難しいのに、その上、子どもが理解できる内容にすることも必要ですし、子どもが興味を引く仕掛けも作らなければならないでしょう。現実には医療と教育産業が共同で作業する必要があるのではないでしょうか。
また健康教育の効果を見るために、データを収集するための事業デザインが必要になると考えられます。そこで得られた結果をフィードバックして教育の内容を再検討することになりますから事業を整備するのには長時間を要すると思われます。以上の理由で私は早期に計画的に教材が作成され、提供されることを期待しています。
2005年08月07日