大野病院医療事件~判決は無罪に
この裁判は帝王切開後に容態が急変して、出産4時間半後に産婦が死亡したという出来事に対して、医師に過失があったかなかったかを争うものでした。
私が大変にショックを受けたのは、当時、全力を尽くしたが、結果的には亡くなった、ということに対して、業務上過失致死と医師法違反が問われたことです。
私は以前に手術をたくさんしていた経験から、とうとう来るところまで来てしまった、という実感を持ちました。
15年以上前には「手術が無事終わり、症状も良くなり、良かったね」という世界でした。しかしそれ以降は「手術はおわったし、症状も多少良いけれど、思ったほどではなかった」という評価を受けることが出てきました。
私は癌と難しい耳の手術以外の全ての手術の指導医でしたが、同じ事をやっても感謝されるどころか、批判めいたことを言われるようになったのは大変にショックでした。このことは総合病院勤務を辞めたいと思った理由のひとつです。
当時、横でよく産婦人科の先生たちが手術をやっていました。本当に大変な手術で、いつもたくさんの出血がありました。ひとつの命を維持するための血液が子宮に集中するのですから、出血は当たり前なのでしょう。
リスクの高い出産になると100%母子健康、というわけにはいかない、というのが医師の感覚です。そういう手術を過酷な勤務(だろうと思います)の中でやるのですから大変です。医師と一般の方との感覚のズレもトラブルの原因になりそうです。あってはいけないことですが、あり得ることですので・・。
自分の身内を同じように亡くしたら、こんなに冷静に語れないかもしれません。しかし今回の事件は刑事事件ではなかったでしょう。真実の追求は成されるべきですが、方法にはルールが必要でしょう。
事件の詳細はまだ情報が完全に正確ではないようですが、概要が分かるサイトはこれでしょうか。⇒ウィキペディア「福島県立大野病院産科医逮捕事件」
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2008年08月24日