強い過労のある人の風邪について

 風邪をひいているのに、忙しいのか、休めずに動いていて、とうとう熱を出すエネルギーまで失ってしまう人がいます。これは時々あることなのです。

 その後さらに弱ってしまい、エネルギーが枯渇して寝汗が数週間止まらずに当院を訪れる方が6月に入り4人いました。エネルギーがなくなっているのに微熱がでるからと、解熱剤を連続して使っている人が殆どです。

 ちなみにこの寝汗は、皮膚がもう水分を維持するだけのエネルギーを持っていないということを意味しています。かなり危機的状態だと思います。

 そしてどうして微熱が出るのか、これもとても重要なところです。

 この微熱は寝汗が出続けて体を冷ますことができず、ほてりが生じて出ている熱であり、体が邪気を退散させるために積極的に出している熱とは異なります。体の水分がなくなってきて出る熱で、虚熱(きょねつ)と言います。

 この虚熱の概念は西洋医学にはありません。恐らく西洋人は基本的に頑丈で体が大きいので、虚熱の状態になるほど消耗することは、日常ではないからだろうと想像しています。しかし日本人の場合には事情が異なります。

 解熱剤はエネルギーを削いで熱を下げる薬です。しかしこの場合の虚熱のように、エネルギーを使い果たし寝汗がで始めて既に1-2週間虚熱が続いている、というところで解熱剤を使ったらどうなるか、考えてみて下さい。エネルギーの枯渇を促進していることになるのです。危ないですよ。ホント。

 高熱ではないのですから、熱の行方を見守りながら安静にするだけの余裕が必要な気がします。熱の意味を正確に判断するためにも、この場合には解熱剤は避けていただきたいのです。

 市販の感冒薬なら大丈夫と思わないでください。解熱効果のある成分が少量含まれていることが殆どです。弱っているときにはそんな薬でも致命傷になることがあります。

 うちのクリニックでは温裏補陽(体の芯を温め、陽気を補う)剤で、止汗作用の強い黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)を使用して切り抜けていただいています。こういうときに頼りになる処方です。

 症状の出方にもよりますが、黄耆建中湯だけ1-2週間使えば、だいたいは回復してきます。過労の方が多いようなので要注意です。

メルマガ「実践!新ロハス生活~これであなたも医者いらず」より

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2009年06月21日