妊婦さんたちの診察について

 最近、妊婦さんの診察をする機会が多くなりました。

 実はBe bornという助産院の先生から、妊娠中、出産後の管理を依頼されることが増えてきたからです。
 
 この助産院では各種教室もあるようですので、妊娠している方たちには心強いですね。

 私も中医学と西洋医学と気功を合わせたような診療をしていますので、このBe born助産院の考え方とはかなり近いと感じています。

 ここから依頼される内容は多彩で、妊娠中の様々な愁訴や、産後の体調維持などが中心です。私もかなり脳を鍛えられます。漢方薬をいくら使えると言っても妊婦への処方に慣れているわけではありませんでしたので、相当に頭を使い、処方しています。

 面白いのは、この助産院から紹介されて来られた患者さんは皆、気の感覚が敏感なことです。ご本人たちは気の感覚を持っているとは感じていないので、やはり自分の身体をウォッチする意識が高いのだろうと思います。

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2012年03月18日

耳鳴りの治療には東洋医学的視点も入れて

 若い男性の患者さんが耳鳴りで来院されました。

 耳鳴りは難聴が原因のことが少なくないので、治りやすい難聴の場合には、難聴を治療することで耳鳴りが解決します。

 でも、治療が難しい難聴も存在するので、その場合には耳鳴りを治療することはかなり難しくなります。耳鼻科でも治療に難渋していることが少なくありません。

 今回の患者さんは難聴がありません。ところが面白い症状がありました。耳の前、少し下を押すとその耳鳴りがボワンと鳴るというのです。

 これは西洋医学では全くお手上げの症状です。しかし東洋医学的には考える余地がありそうです。

 このボワンと鳴る場所はどうも聴会(ちょうえ)というツボのようです
 
 聴会は胆経のツボで、ストレスと関連していると考えられます。ストレスがどのくらいあるのかを問診したり、ストレスがあるときに生じる脈の緊張を確認しなかったのが残念ですが、若い男性だし、仕事のストレスなどあるのだろうと推測します。

 耳の前には3つのツボがあり(耳門、聴宮、聴会)、難聴を改善させることで耳鳴りを治していこうとするもののようです
 
 耳鳴りの治療にはこういう東洋医学的観点も必要でしょうね。

 治療の難しい分野であり、まだまだ研究が必要だと思いました。

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2012年03月11日

野菜ばかり食べていて皮下出血する人

 どうして皮下出血するのでしょうか?と外来中に尋ねられたことがあります。

 耳鼻科の外来ですし、なかなか頭が中医学に切り替わらないと「うーん?」と考え込んでしまうわけです。

 よく分からないので、食事の内容について尋ねました。すると、やや高齢の方ということもあり、しつこいものはどうも食べられないので、野菜ばかり食べているとのことでした。

 何となく皮下出血の原因が見えてきました。

 血管も細胞が多数集まってできています。細胞には膜があり、その膜は脂質からできています。油分を摂取しない生活を続けていることで、脆弱な膜になっていることが予想されます。

 脂肪には抗酸化作用もありますし、ホルモンの材料にもなります。重要な栄養素であるという認識も必要です。脂肪分を食べないと脳出血になりやすい傾向もあるようです(新聞記事から。未確認)。

 それとたんぱく質摂取量も少ないのだと思います。きんさんぎんさんが以前にテレビを賑わせていましたが、彼女たちは肉をよく食べるということでした。過剰な肉の摂取が良いとも思いませんが、ある程度の摂取は必要でしょう。

 高齢者はあっさりしたものを好む傾向がありますが、たんぱく質や脂質にも配慮して、バランス良く摂取するのが良いかも知れません。

 細胞膜は油分からできているということを話しましたが、つまり酸化されやすいという側面を持っています。古い油の食事なども避けた方が良いと思います。そういう意味でビタミンCとビタミンEの摂取は有効だと思います。

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2012年03月04日

余計な処方はしない方が良い?

 もう20年近く前のことになりますが、私が研修医のときに、ある先輩医師が言いました。

 何を処方したら良いのか、どうしてもよく分からない場合には、その病気の治療の邪魔にならないように、しかも副作用のないものを処方しておいて、経過をみるように、と教えられました。

 炎症があるときには去痰剤などを、耳鳴りやめまいが残っているときには、ビタミン剤を、といった具合です。

 どこでもそういう医学(医学ではありませんね、医療というべきか)教育が行われているのかどうかは分かりませんので、念のため。

 一見良い感じではあるのですが、最近、化学物質汚染による症状を多数見ていると、薬にも添加物が入っていることは意識しなければならないと思うのです。

 薬能はマイルドな薬で副作用がなさそうでも、添加物の害まで考えると、余計に処方するのはどんなものかと考えてしまうわけです。

 「氣」を使って、そういう一見害のなさそうな薬が体になじむかを確認すると、やはり添加物を多数使っている薬は、必要な時以外には避けた方が良さそうです。

2012年02月26日

びんろう子が何故、女神散に含まれているのか?

 まったくの雑談です。

 最近、九味びんろう湯(くみびんろうとう)という漢方薬を用いるようになりました。

 ある先生がこういうお話をされていました。

 この処方は一度飲みだすと、飲むととても体調が良くなるので、また処方して欲しいと言って戻ってくるとのことでした。

 特に重要と思われる、びんろう子(びんろうじ)という生薬はどういうものなのかとても興味が湧きました。

 消化液分泌促進、胃蠕動運動促進、腸内異常発酵軽減など、健胃整腸作用がまずは挙げられます。

 次に逐水作用といって、水腫など水が溜まっているところに働いて、その水を処理するという作用があります。

 そして最後に、殺三蟲といって条虫や回虫などを駆虫する効能があるのだそうです。

 実は漢方エキス剤の中で、女神散(にょしんさん)という処方にこのびんろう子が含まれています。どうして含まれているのか、とても興味深いのですが、理由は分かりません。

 気をめぐらし、気を降し、鬱を散じ、血熱をさまし、更年期の精神安定に寄与するのが女神散ですので、どうしてこの生薬が含まれているのか分かりません。とても興味深いですー。

 結論は出ませんが、分かりましたらまた書きますね。

2012年02月19日

滋陰降火湯と滋陰至宝湯の比較~長引く咳への対応

 しつこい咳の対応として新しい漢方薬を導入しました。滋陰至宝湯(じいんしほうとう)と言います。滋陰降火湯(じいんこうかとう)を従来は代用していたのですが、この考え方が誤りであることに、気づいたので導入を決めました。

 これらの処方の名前は似ていますが、内容がかなり異なるのです(がーん)。

 上級者の方はこちらのサイトが大変参考になります。ご覧下さい。
 
 「滋陰」の意味は、「陰」は陰陽の陰ですので「水分」を表します。つまり水分を滋養するという意味です。その意味では両方ともに同じなのです。

 しかし、滋陰至宝湯には疎肝作用といって、ストレスへ対応する内容の生薬が盛り込まれています。滋陰降火湯にはそういう作用はありません。

 一方で水分を補う作用のある生薬は滋陰降火湯の方がたくさん入っていますし、血分についても同様です。

 滋陰降火湯は水を補う作用が強いということもありますし、熱を奪う生薬も滋陰至宝湯よりも少し強力です。

 そこで見えてきた両者の使い分けですが、滋陰至宝湯は長期間ストレスが続いて水分が失われて慢性的な咳になった人、ただし生命力の減退がない人が対象になるでしょう。つまりストレス自体は強くないのかもしれません。

 滋陰降火湯を使うべき人は、恐らくは急激な負荷の増大により生命力にも影響が出るような人で、風邪を強くひくなどして体の急な変化に対応できず、渇きが強く、熱の残存もあるような人が対象になるのでしょう。

 ポイントは滋陰降火湯だけに含まれる天門冬という生薬にあると思うのですが、この生薬が腎(生命力)にも効果が出ることと、熱を冷ます効果があることで、風邪の回復期に使用する意義があるのだと確認できました。天門冬はアスパラガスと近縁なのだそうです。これは初めて知りましたー。

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2012年02月12日

漢方薬は西洋薬と同じ対症療法なのか?

 漢方薬は西洋薬と同じで対症療法ではないか?ということを言う人もいます。私はこれに敢えて反論してみようと思います。

 漢方薬は実は、今の不足している点を補ったり、過剰な部分を捨てたり、冷えを温めたりしながら、バランスを取るということに主眼が置かれています。ということは、これぞ対症療法と言える部分もあるわけです。漢方は究極の対症療法であるといわれているわけですから。

 確かに処方を続けていくだけであれば、西洋薬を使うのと同じことになってしまいます。これは気をつけなければならない点です。

 いや、急性の病気の場合には、バランスだけ取って、あとは体にお任せするということで問題ありません。

 でも慢性病のときに対症療法では困りますね?

 効果の上がった漢方薬の効能を詳しくみていくと、実はおのずから、生活のなかで改善すべき内容が浮き上がってきます。これが西洋薬と大きく異なる漢方薬のとても良いところです。

 生活の内容をしっかりと指導することで、その人の生活が改善され、理想的な流れとしては、漢方薬から離れてもらうのが最終目的地になります。

 もっとも、最近は薬に依存して生活を変えることができず、余計に無理がいってしまう人がいるのも事実です。

 病気を直すのは最終的には自分であるという自覚が持てるまで、処方が続いてしまうことになります。

 私は漢方薬は生活指導をするのに、現状では最も有用なツールだと思っています。

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2012年02月05日

諸薬の調和とは何なのか・・?~漢方臨床

 通常使われる漢方処方にはたくさんの生薬が用いられていますが、いろんな処方に使われている生薬がいくつかあります。

 生姜、大棗、甘草が代表的でしょう。

 基本的には食べ物で、しょうが、なつめ、そして甘味料の原料である草です。

 この3つあわせて『諸薬調和』などと説明されていて、分かったような分からないような感じで、気分が悪かったのです。説明になっていない!

 最近、偶然2人の先生方から基本的な考え方を教えていただき、ナルホドと思ったので、忘れないように書いてみようと思います。ちょっとマニアックな内容ですので、初学者にはちょっと難しいかもしれません。

 その1

 生姜は陽の動きをつける生薬で、温めて気を動かす作用があります。一方で
 大棗、甘草は体に水分を量的に補充する働きがあります。

一方は気、他方で水、つまり胃腸の周りで陰陽のバランスを取っているのだそうです。

 これはとても納得の行く説明でした。

 その2

 確かに諸薬を調和しているのですが、主な作用は以下の通りです。

 甘草はゆっくり効かせるために入れる
 大棗は体液を増やす働きがある
 生姜は気を巡らせて水をさばく作用がある

 従って、逆に捉えるとこのようになります。

 甘草は緊急性があるときには抜く
 大棗は湿病(水分が原因の病気)のときには抜く
 生姜は潤したいときには抜く

 このようにして出し入れしながら漢方処方が作られているという説明でした。これも大いに納得でしたね。

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2012年01月22日

冬の寒さは、血の足りない人には堪えるでしょうね

 今日は雨のためか妙に冷えます。だんだん真剣に寒さ対策を考えていかないといけません。先週は冬に弱くなる腎を補うお話でした。今週は冬には辛いのではないかと思う血虚(けっきょ;血が足りない)の人のお話をしてみます。

 中医学的には血(中医学らしく「けつ」と読みましょう)は、栄養と保湿の作用をもっています。筋肉を逞しくし、皮膚や毛髪を艶やかにし、知覚や運動を鋭敏にすると教科書にも書かれています。

 したがって血虚の症状と言えば、顔色が悪く、髪が細くなり、皮膚が乾燥し、四肢が痺れます。舌は唇、爪の色が白くなります。臓器も栄養が足りなくなるので、全体に代謝が弱くなり、場合によると動悸がすることもあります。

 もちろん血虚は、栄養を十分に摂取しなかったり、脾(消化器)が吸収しなかったりする場合に生じますが、血が各臓器に上手く循環しない場合にも生じてしまいます。

 血が正常に運行するには、心臓の他に、肺、肝、脾など、体全体の働きがバランスよく行われていることが重要です。血が滞るとき、血がよどんで流れなくなるとお血、血が巡ってこないところは血虚ということになります。体全体のバランスについては見落とされがちなので注意が必要です。

 血を直接補うための食材は、にんじん、ほうれん草、落花生、葡萄、いか、だそうです。そして潤いを補うものとしては、百合根、黒ゴマ、松の実、卵、牛乳、牡蛎、ほたて、だそうです。

 こういう食材を使ってみては如何でしょうか?

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2011年12月03日

(雑談)これから冬の診察に向けての対策

 診察中に生汗が出てくることが多いので気になっていました。診察以外のときにはほとんどそういうことはないのです。

 ― あれ?疲れかな?・・・まさか歳か??

 いろいろ考えてみましたが、どうも腑に落ちません。

 しばらくして、診察中に何か悪いものを受けて体が自然に反応しているこ が分かりました。患者さんが持って来られた邪気と言えるでしょう。

 感覚が敏感なのは良いことですが、結構な汗の量なので着替えの時間が必要になり困ります。ひどいときには半日に2回の着替えが必要なのです。

 ― 気功をするのだから邪気を自分で払えば良いではないですか?

 こういう指摘も受けるかもしれませんね。確かにそう思うのです。

 でも耳鼻科の診察スピードを考えてみて下さい。診察の椅子から患者さんが立たれて、その後の指示をしている間に次の患者さんが入ってきます。邪を祓う時間的余裕はありません。

 本格的な風邪の季節を迎えます。インフルエンザも局地的に流行していると伝え聞きます。東京では学級閉鎖があったということも聞きました。もう、そういう季節なのですね。

 私も診察室でどのように対応すべきなのか、ちょっと試案しています。

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2011年11月11日