大野病院医療事件~判決は無罪に

 この裁判は帝王切開後に容態が急変して、出産4時間半後に産婦が死亡したという出来事に対して、医師に過失があったかなかったかを争うものでした。

 私が大変にショックを受けたのは、当時、全力を尽くしたが、結果的には亡くなった、ということに対して、業務上過失致死と医師法違反が問われたことです。

 私は以前に手術をたくさんしていた経験から、とうとう来るところまで来てしまった、という実感を持ちました。

 15年以上前には「手術が無事終わり、症状も良くなり、良かったね」という世界でした。しかしそれ以降は「手術はおわったし、症状も多少良いけれど、思ったほどではなかった」という評価を受けることが出てきました。

 私は癌と難しい耳の手術以外の全ての手術の指導医でしたが、同じ事をやっても感謝されるどころか、批判めいたことを言われるようになったのは大変にショックでした。このことは総合病院勤務を辞めたいと思った理由のひとつです。

 当時、横でよく産婦人科の先生たちが手術をやっていました。本当に大変な手術で、いつもたくさんの出血がありました。ひとつの命を維持するための血液が子宮に集中するのですから、出血は当たり前なのでしょう。

 リスクの高い出産になると100%母子健康、というわけにはいかない、というのが医師の感覚です。そういう手術を過酷な勤務(だろうと思います)の中でやるのですから大変です。医師と一般の方との感覚のズレもトラブルの原因になりそうです。あってはいけないことですが、あり得ることですので・・。

 自分の身内を同じように亡くしたら、こんなに冷静に語れないかもしれません。しかし今回の事件は刑事事件ではなかったでしょう。真実の追求は成されるべきですが、方法にはルールが必要でしょう。

 事件の詳細はまだ情報が完全に正確ではないようですが、概要が分かるサイトはこれでしょうか。⇒ウィキペディア「福島県立大野病院産科医逮捕事件」

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2008年08月24日

夏の鼻出血の要因について~乾燥とのぼせ

 真夏の診察の毎日となりました。

 最近、鼻出血の患者さんがにわかに増えてきました。この原因について考えてみましょう。

 私は季節性のある鼻出血は、鼻内の乾燥が最も大きな要因だと思います。この夏は暑さが厳しいですから、エアコンをつけたまま寝ている方も少なくないでしょう。これが乾燥の一因であろうと思います。

 では逆に、汗をだらだらかきながら寝ているとどうなるのか?

 これもやはり問題で、よく寝られないことからのぼせが生じやすくなります。寝ることは体の水分を養うことにつながるのです。よく経験するのは十分に寝られた次の日は肌がスベスベになる現象です。体の水分はのぼせを抑える効果がありますので、寝られないことは鼻出血につながります。

 この汗によって脱水ということも考えられますが、鼻内が乾くほど汗を失う人は、暑いところで寝ている人よりも、炎天下で運動を定期的にする人のように感じます。運動している人は慢性的な軽い脱水になっている場合もあるように思います。

 もともと夏は陽気、つまりエネルギーが強く降り注ぎ、体の中のエネルギーが首から上に集中しやすくなります。これものぼせを生じる一因であり鼻出血の原因となるでしょう。

 乾燥とそれに伴うのぼせが原因という結論です。実は耳の痒みが強くなる人も夏に増えるのですが、これも同じような理由であると思われます。これにどう対処すべきか、みなさん考えてみてくださいね。

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2008年07月26日

コレステロールを悪玉にしない赤ワインの話

 硬い話になりますが、動脈硬化に関する講演を聴いて参りました。赤ワインが動脈硬化に有効であるという「赤ワイン健康法」(ごま書房1995年)をお書きになっている近藤和雄教授のお話でした。

 まさに私が学んだ内容がズバリこのサイトに出ておりましたのでご参考まで。

 コレステロールの値はどのくらいが適正なのかということは、私は大きな問題と以前から注目しています。コレステロールが下がると血管が詰まり難くなるけれど、癌の発症率が上がるというデータもあるということをご紹介したことがあります。

 しかし、逆に癌がカロリーを消費してコレステロールが下がっているだけではないか?と説明を受けたときに、真実が何かがさっぱり分からなくなりました。これについてはまだいろいろな角度から検証する必要がありそうです。

 近藤先生によると、極端でなければコレステロール値がかなり下がっても、余ったコレステロールは血管外に染み出して行くとの事ですので、少々値が下がっても問題ないはず、とのことです。ナルホド。

 血管外に出たコレステロールは酸化されて所謂「悪玉」コレステロールになるとのことですので、通常のコレステロール値の私の血管の外では、すでに悪玉コレステロールが作られているということですね。・・ん?まてよ?

 血管外コレステロールを酸化させない抗酸化力、つまり悪玉にしないという体質を作ることで何とかなるかもしれません。抗酸化力はアンチエイジングにご興味のある方は聞いたことのある言葉かもしれませんが、もっと重要なものかもしれません。このひとつの方法として赤ワインのポリフェノールがあるわけですが、お茶のカテキンなども同様の効果があるとされています。

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2008年07月20日

いきなり風邪がこじれてしまう人の話

 風邪を毎日診察して、自分の見方はできているつもりなのですが、まだまだ不完全なのか、どこか現実とそぐわない部分があるものです。

 風邪が体の中まで侵入したときに、体にそれに対抗する熱を生む力がなく、寒気がしたまま、状態が停止してしまうことがあります。私はこの状態を「こじれた風邪」と表現しています。

 この状態は風邪の侵入を許してから、免疫がはたらきながらもズルズルと体の中まで風邪が侵入して、とうとう5日前後でそういう状態になってしまうのだと思っていました。

 ところが、風邪をひいていきなりこういう状態になる人が少なくないことに気づきました。サッカーで例えると分かりやすいでしょうか。相手が攻めてくるときに本来は中盤以前にパスカットしないといけないのに、味方は全員がゴールライン付近だけにいて中盤は無抵抗にやられてしまう、という防戦一方の状態ですね。

 すると風邪をひいたばかりなのに、すぐにこじれた状態になります。実は、傷寒論(中国の風邪の古典です)にもそのように記載があるので、ナルホドと思ったわけです。

 『病発熱有りて悪寒する者は、陽に発すなり。熱無くして悪寒する者は陰に発すなり。』

 陽とはここでは体表のことですね。熱と悪寒がある人は病気が体表から始まっている。一方で熱無く悪寒がある人は、病が体の中に直接入って始まっている。つまり私の言う「こじれた風邪」にすぐになってしまうわけです。

 これは、正気、つまり体表の免疫が邪気に圧倒されてしまっている状態ですから、具体的には、極度の疲れ、ひどいストレス、邪気の強い場所での滞在などが原因になるのではないでしょうか?

 ずっとコンピュータの前で仕事をしている人は本当に要注意だと思います。疲れるし、ストレスあるでしょうし、コンピュータには邪気もあるでしょう。私も診察が途切れたときには、机から意識して離れるようにしていますよ。

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2008年07月12日

風邪の対処経験から~紫蘇の有用性

 私はマスクをつけないで診察をしているためでしょうか、月に1~2回は、「あれ?調子悪いな?風邪かな?」と思うときがあります。

 具合が悪くなると、病邪(寒気がしてきますので、寒邪ということでしょう)が体の表面に留まっている間にできるだけ早く対処することが最も重要です。

 体内に病邪が入ってしまうと、それを散らすために大きなエネルギーを必要とします。体表で追い払えれば、それでおしまいになりますから後を引きません。

 まず葛根湯、と考えましたが、最近の私は胃腸の調子は悪くないのですが、薬の類には過敏に反応してしまうので、葛根湯は止めておきました。葛根湯はありふれていますけれど、あまり弱くない処方であることは認識しておく必要があるでしょう。

 桂枝湯は手元にありませんでしたので、香蘇散(こうそさん)という処方を使ってみました。字からも分かるように、香りが良く、気の巡りが良くなります。紫蘇の発散する性質で、うっすら汗をかいたこともあり、そのまま感じよく治りました。

 香蘇散の性質はほとんど紫蘇の作用だと思います。民間療法としては、紫蘇の実を焼酎に漬けて3ヶ月くらい寝かせておき、咳止めとしていたようです。中医学的には発散性が強調されているのに、民間では咳止めとして使われていることが多かったのですね。

 私は紫蘇と言えば、刺身のつまとして、魚介類の解毒の役割をもっているという程度の認識しかありませんでしたが、かなり有用性が高いもののようですね。

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2008年07月06日

風邪について私が書きたいこと

 「ベストセラーを書こう!プロジェクト」は第二次審査が行われ、見事(自分で言うか?(笑))決勝大会進出を果たしました(祝)。あとは公開プレゼンテーションです。私が何を話すべきか、書いてみようと思います。

 風邪の診察で重要なのは耳鼻咽喉科の所見収集力と中医学の脈診と舌診、そして風邪の流れに関する知識です。我々プロとしてはこの3つがどうしても必要ですが、ここでは一般の方にも是非理解いただきたい風邪の流れについ
 てお話します。

 みなさんは「気」というものをご存知でしょうか?気功師があやつる体に備わっているエネルギーのことです。元気の気とでも申しましょうか?もちろん目には見えません。最近はこういう怪しい話も受け容れられるようになっていますので、「気」の説明はこれくらいに致します。

 実は風邪をひくと大きな気の流れが体に起こります。簡単にお話しますが、まず皮膚と首・背中にもたらされた寒気と凝りを解消するために、体は深いところから浅いところに向かって気の流れを作ります。汗がじとっと出るのはその結果です。

 そして初期症状は消失するのですが、その作られた気は体内を上昇します。そして気が渋滞して熱になるに伴って当然上から頭痛、喉の痛み、気管の痛みと段々痛みが下がります。体はその熱に対して水を動員しますが、これが痰になって出て来る、というのが大まかな流れです。

 風邪の時の気の流れに気づいたのは、私が西洋医学に続いて、漢方薬だけでなく、はり灸、気功、ホメオパシーを勉強したことが大変に大きな役割を果たしています。風邪によって生じる気の流れについては、どの本にも全く書かれておりませんが、図解して説明するつもりでいます。

 どんな風邪でも基本は同じです。ただ現代人は栄養状態が良いために、寒気の症状は打ち消されやすく、逆に熱で生じた痛みに対しては敏感です。のどが痛くてすぐに病院に来たという患者さんはとても多いですが、実際には風邪が始まって4-5日経過していることがほとんどです。

 患者さんは診察室で「数日前から喉が痛い」などと言います。しかし、もし、もっと正確にどの症状がいつ生じたかを描写できれば、特に単発の風邪の場合には、自分が風邪のどの段階を進行中なのか、自己診断が可能です。

 今回、プロジェクトにたくさんのコメントをいただきました。素人でも即、実践に役立つものを作って欲しいという多くの意見をいただき、私は自分の体を自分で守りたいというみなさんの思いに何とか答えたいと思いました。

 そして風邪の基本診断方法をフローチャートにすることを思いつきました。私のプロとしての診断プロセス用のフローチャートと、家庭である程度の診断ができるような別のフローチャートを作成しようと考えています。

 こうすることで、風邪には興味がないけれど、とにかく何とかしたいという方たちから、風邪についてじっくり考えてみたいという方たちまで、幅広くご満足いただける作品を作りたいと考えています。

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2008年06月29日

風邪について古典を読み始めました!

 傷寒論(しょうかんろん)という中国の医学書の古典があります。張仲景(ちょうちゅうけい)という人が2~3世紀に記したとされています。

 医師にとっても傷寒論は読むのが大変な書物です。このたびその解説書を出版された先生が医師向けに20回(?)の講演会をやるようです。その中から面白いところを抜書きしてみようと思います。

 ★『傷寒論を読もう!』★
 高山宏世(著)、東洋学術出版社 (2008/05) 明らかに中級以上向けです

 (条文9)「太陽病解せんと欲す時は巳従り未の上に至る」
 『風邪の寒気がしている太陽病の時期は、人の体の陽気が高まる9時(巳の刻)から15時(未の刻)に治りやすい。』

 「天人合一」という言葉がありますが、自然と人のエネルギーの状態は共通であるということですね。太陽が上がって行く時期は、人の体もエネルギーが満ちてくるので、太陽経脈にある邪を体外に追い出し易いということでしょう。

 非科学的という批判もあるかもしれませんが、時刻によって出やすい症状があることは明らかです。

 ホメオパシーの教科書を見たことのある人は少ないかもしれませんが、例えば、太陽病と近いタイミングで使用することがありそうな「ベラドンナ」の使用時刻について見てみましょう。

 『全ての急性の発熱に使用する。全体的に午後3時に悪化する。発熱のピークは午後9時や午前8時になる傾向がある。』と書かれていました。やはり9時から15時には悪くならないですね。少し一致している印象です。

 そういえば、子どもが高熱を出すのが何故か夜中であるのも、太陽経脈の陽気の減少によるものなのかもしれませんね。

2008年06月21日

百日咳感染拡大に関すること

 国立感染症研究所から百日咳が増加しているという公式なコメントが出てい
 ます。

 今まではあまり関係ないと思っていましたが地域性があって、千葉県、愛知県、広島県、福岡県などでは、東京の倍程度の累積患者数を示しています。

 うちのクリニックにも咳で困っている患者さんがたくさんいます。百日咳は検査が難しいので実施の予定はありませんが、原則どおり治療すれば問題なく治るだろうと予想しています。ただ、0歳児のいらっしゃるご家庭では、注意が必要だろうと思っています。

 日本小児科学会のホームページにも詳細が書かれています。

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2008年06月21日

6月13日公開のサンプル原稿を読んで下さい!

 「ベストセラーを書こう!プロジェクト」のサンプル原稿をやっと書き上げ、疲労困憊です。みなさん、是非読んで下さいね。公開は6月22日までです。

 まあ25名中8名の本選に出場できると良いですが、書いたことで手元の情報がさらに充実し、これだけでも出場した甲斐があった感じがします。結果は天に任せます。ブログでもどんな反応があるのか楽しみにしています。

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2008年06月15日

この梅雨の病気の傾向について~子どもの鼻水から

 今年は例年の梅雨とは何か違う様相なのです。それは子どもたちの体調がそろって悪いことです。鼻水が止まらない子どもの数がとても多くて、診察も大変です。近所の小児科の先生もいつもと違うと言っています。

 例年はこの季節になると暖かさが持続してくるので、気温差に影響されることが少なくなってくるものなのですが、どうしてでしょう?

 それは、恐らくですが、湿気が例年よりも多いことに原因があるのではないかと思うのです。

 湿気はあまり重要視されていない気候の要素ですが、リウマチの人が痛みを湿度計よりも敏感に訴えたりするように、体には大きな影響がでてきます。

 東洋医学では「湿邪」と言います。教科書では体表では体が重くなり、関節を侵すと痛みと運動制限が起こるとの事。そして「脾」つまり胃腸の傷害を生じ、水分が排出されない状況になるのです。

 鼻の周囲には水が蒸発するスポットがたくさん用意されています。そこに炎症が生じると副鼻腔炎という病気になるわけですが、子どもはエネルギーが強いので副鼻腔炎を生じやすいのです。ハナタレ小僧はこの状態のことです。

 ところが、昨今の子どもたちは体温が低いので、普段からハナタレにならない代わりに、湿度の高いこの季節に体調を崩しやすいのではないか、と推測しています。

 子どもが湿邪の影響を受けるなんて、本当なら大変です。毎年この傾向が拡大してしまいますから・・。もっと走り回ったり、いろんな手伝いをしたりして、筋力を上げないといけないのかもしれません。

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2008年06月15日