花粉症と紛らわしい副鼻腔炎

東京では花粉症がようやくピークを過ぎ、これからはヒノキとかカモがヤの花粉症のある患者さんだけが薬を必要とする状況になってきました。

 先週も書きましたが、今年の花粉症は花粉の飛散量を考えるととても症状がきついですね。これを花粉のせいにしてはいけません。自分の生活を整えることから始めましょう。

 花粉症の鼻水、といえば、どういう鼻水が思い浮かぶでしょうか?

 さらさらの透明な鼻水ですよね?

 しかしこれからは勝手が違ってきます。濃い膿のような鼻水がでる場合でも花粉症を疑わなければなりません。

 今までは逆だったのです。さらさらの鼻水でも、風邪をひいて症状がでている人がとても多く、風邪を花粉症と見間違えないようにと考えてきました。これからの季節は花粉症を副鼻腔炎(蓄膿)と見間違えないようにしなくてはなりません。

 膿がでるというのは熱のたまっている体に生じる象徴的な出来事です。膿を体外に出すことで熱(と水)の平衡を保とうと体が反応しているわけです。

 温性である花粉の波状攻撃が続いていましたから、体に少しずつ熱が溜まってきているはずです。しかも春の陽気になり、体が熱を生じやすい状況までできてしまっています。

 厳格に花粉症と副鼻腔炎を分けるのは難しいのですが、どちらにしても熱を捨てる必要があるという観点から、あまり厳しい治療をしないで自力にある程度任せるということも必要なのかなと思ってみています。

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2012年04月01日

耳鳴りの治療には東洋医学的視点も入れて

 若い男性の患者さんが耳鳴りで来院されました。

 耳鳴りは難聴が原因のことが少なくないので、治りやすい難聴の場合には、難聴を治療することで耳鳴りが解決します。

 でも、治療が難しい難聴も存在するので、その場合には耳鳴りを治療することはかなり難しくなります。耳鼻科でも治療に難渋していることが少なくありません。

 今回の患者さんは難聴がありません。ところが面白い症状がありました。耳の前、少し下を押すとその耳鳴りがボワンと鳴るというのです。

 これは西洋医学では全くお手上げの症状です。しかし東洋医学的には考える余地がありそうです。

 このボワンと鳴る場所はどうも聴会(ちょうえ)というツボのようです
 
 聴会は胆経のツボで、ストレスと関連していると考えられます。ストレスがどのくらいあるのかを問診したり、ストレスがあるときに生じる脈の緊張を確認しなかったのが残念ですが、若い男性だし、仕事のストレスなどあるのだろうと推測します。

 耳の前には3つのツボがあり(耳門、聴宮、聴会)、難聴を改善させることで耳鳴りを治していこうとするもののようです
 
 耳鳴りの治療にはこういう東洋医学的観点も必要でしょうね。

 治療の難しい分野であり、まだまだ研究が必要だと思いました。

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2012年03月11日

野菜ばかり食べていて皮下出血する人

 どうして皮下出血するのでしょうか?と外来中に尋ねられたことがあります。

 耳鼻科の外来ですし、なかなか頭が中医学に切り替わらないと「うーん?」と考え込んでしまうわけです。

 よく分からないので、食事の内容について尋ねました。すると、やや高齢の方ということもあり、しつこいものはどうも食べられないので、野菜ばかり食べているとのことでした。

 何となく皮下出血の原因が見えてきました。

 血管も細胞が多数集まってできています。細胞には膜があり、その膜は脂質からできています。油分を摂取しない生活を続けていることで、脆弱な膜になっていることが予想されます。

 脂肪には抗酸化作用もありますし、ホルモンの材料にもなります。重要な栄養素であるという認識も必要です。脂肪分を食べないと脳出血になりやすい傾向もあるようです(新聞記事から。未確認)。

 それとたんぱく質摂取量も少ないのだと思います。きんさんぎんさんが以前にテレビを賑わせていましたが、彼女たちは肉をよく食べるということでした。過剰な肉の摂取が良いとも思いませんが、ある程度の摂取は必要でしょう。

 高齢者はあっさりしたものを好む傾向がありますが、たんぱく質や脂質にも配慮して、バランス良く摂取するのが良いかも知れません。

 細胞膜は油分からできているということを話しましたが、つまり酸化されやすいという側面を持っています。古い油の食事なども避けた方が良いと思います。そういう意味でビタミンCとビタミンEの摂取は有効だと思います。

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2012年03月04日

余計な処方はしない方が良い?

 もう20年近く前のことになりますが、私が研修医のときに、ある先輩医師が言いました。

 何を処方したら良いのか、どうしてもよく分からない場合には、その病気の治療の邪魔にならないように、しかも副作用のないものを処方しておいて、経過をみるように、と教えられました。

 炎症があるときには去痰剤などを、耳鳴りやめまいが残っているときには、ビタミン剤を、といった具合です。

 どこでもそういう医学(医学ではありませんね、医療というべきか)教育が行われているのかどうかは分かりませんので、念のため。

 一見良い感じではあるのですが、最近、化学物質汚染による症状を多数見ていると、薬にも添加物が入っていることは意識しなければならないと思うのです。

 薬能はマイルドな薬で副作用がなさそうでも、添加物の害まで考えると、余計に処方するのはどんなものかと考えてしまうわけです。

 「氣」を使って、そういう一見害のなさそうな薬が体になじむかを確認すると、やはり添加物を多数使っている薬は、必要な時以外には避けた方が良さそうです。

2012年02月26日

滋陰降火湯と滋陰至宝湯の比較~長引く咳への対応

 しつこい咳の対応として新しい漢方薬を導入しました。滋陰至宝湯(じいんしほうとう)と言います。滋陰降火湯(じいんこうかとう)を従来は代用していたのですが、この考え方が誤りであることに、気づいたので導入を決めました。

 これらの処方の名前は似ていますが、内容がかなり異なるのです(がーん)。

 上級者の方はこちらのサイトが大変参考になります。ご覧下さい。
 
 「滋陰」の意味は、「陰」は陰陽の陰ですので「水分」を表します。つまり水分を滋養するという意味です。その意味では両方ともに同じなのです。

 しかし、滋陰至宝湯には疎肝作用といって、ストレスへ対応する内容の生薬が盛り込まれています。滋陰降火湯にはそういう作用はありません。

 一方で水分を補う作用のある生薬は滋陰降火湯の方がたくさん入っていますし、血分についても同様です。

 滋陰降火湯は水を補う作用が強いということもありますし、熱を奪う生薬も滋陰至宝湯よりも少し強力です。

 そこで見えてきた両者の使い分けですが、滋陰至宝湯は長期間ストレスが続いて水分が失われて慢性的な咳になった人、ただし生命力の減退がない人が対象になるでしょう。つまりストレス自体は強くないのかもしれません。

 滋陰降火湯を使うべき人は、恐らくは急激な負荷の増大により生命力にも影響が出るような人で、風邪を強くひくなどして体の急な変化に対応できず、渇きが強く、熱の残存もあるような人が対象になるのでしょう。

 ポイントは滋陰降火湯だけに含まれる天門冬という生薬にあると思うのですが、この生薬が腎(生命力)にも効果が出ることと、熱を冷ます効果があることで、風邪の回復期に使用する意義があるのだと確認できました。天門冬はアスパラガスと近縁なのだそうです。これは初めて知りましたー。

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2012年02月12日

漢方薬は西洋薬と同じ対症療法なのか?

 漢方薬は西洋薬と同じで対症療法ではないか?ということを言う人もいます。私はこれに敢えて反論してみようと思います。

 漢方薬は実は、今の不足している点を補ったり、過剰な部分を捨てたり、冷えを温めたりしながら、バランスを取るということに主眼が置かれています。ということは、これぞ対症療法と言える部分もあるわけです。漢方は究極の対症療法であるといわれているわけですから。

 確かに処方を続けていくだけであれば、西洋薬を使うのと同じことになってしまいます。これは気をつけなければならない点です。

 いや、急性の病気の場合には、バランスだけ取って、あとは体にお任せするということで問題ありません。

 でも慢性病のときに対症療法では困りますね?

 効果の上がった漢方薬の効能を詳しくみていくと、実はおのずから、生活のなかで改善すべき内容が浮き上がってきます。これが西洋薬と大きく異なる漢方薬のとても良いところです。

 生活の内容をしっかりと指導することで、その人の生活が改善され、理想的な流れとしては、漢方薬から離れてもらうのが最終目的地になります。

 もっとも、最近は薬に依存して生活を変えることができず、余計に無理がいってしまう人がいるのも事実です。

 病気を直すのは最終的には自分であるという自覚が持てるまで、処方が続いてしまうことになります。

 私は漢方薬は生活指導をするのに、現状では最も有用なツールだと思っています。

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2012年02月05日

のどカラカラとインフルエンザ

 11月30日の山陽新聞の記事から。

 仙台市の庄司内科小児科医院の庄司院長が絶対湿度とインフルエンザ流行の関連を調べて掲載しているのだそうです。都道府県ごとにも関連が考察されていて大変興味深いです。
 
 インフルエンザが乾燥している気候に広がりやすいことはご存知のことでしょう。重要なのは絶対湿度なのですね。同じ湿度でも冬に発症しやすいのはそのためだったのかと改めて考えさせられました。

 それにしても、このデータは大変きれいで驚きます。絶対湿度が7~11g/m3を下回るとインフルエンザが流行してくるのが明確に見て取れます。

 こういう風に、地道に自分の目でデータを収集される人を応援したいものですね。

 また、お菓子のメーカーが発表している、のどカラカラ予報もまあ面白いという程度のものですが、ご紹介しておきます。ただ、真冬になるといつも、乾燥状態が続くだけなので、予報としてはどうかな?とは思います。
 
 それと、お菓子メーカーですので、あくまでものどがカラカラなときには、のど飴をなめましょう、と伝えるのが目的のようです。

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2012年01月29日

こわ~い、薬品の話

 先日アレルギーで来られた患者さんですが、薬品の汚染がかなりある様子だったのです。お仕事を伺うと美容師さんでした。美容師の方たちは1日中薬品に触れていますからね。

 でもどうしてアレルギーになる美容師さんとならない美容師さんがいるのでしょうか?

 今回の場合、この美容師さんには便秘があり、それで薬品の汚染が十分に体外に排出できなくなっていたことが要因のように感じられました。

 さらに上流にさかのぼりますが、何で便秘になったのでしょう?

 それは推測ですが、ストレスによりビタミンCが消費され、そのためにビタミンCが足りなくなってしまったことが要因のように思われました。

 この患者さんの場合には、ビタミンCの補給と薬品の解毒でアレルギーを治療していくことになりました。

 さて、私事ですが。

 先日、洗剤が体についてしまったときに「おや?」と思いました。どうも、
 呼吸が苦しくなるようなのです。他の洗剤で試してみたところ、それらは大丈夫なんですね。衣服とかについたままになっていると、大変なことになってしまう予感があります。どうぞすすぎにはご注意を!

 そういえば、私の友人も歯磨き粉で同じようなことを言っていました。特定の歯磨き粉を使うと体調が悪くなるそうです。

 こういう薬品類のことは他人事は考えず、できるだけ少量を使用する必要がありますし、環境への配慮も必要だと思いますね。

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2011年12月18日

こじれた風邪の様々な側面について

 この季節、朝夕あるいは日によって寒暖差があるため、風邪をひかれている方が多いです。疲れによって少しこじれたようになっていて、やや強い薬を処方する機会も増えています。

 そういう時に生じる症状を覚えておきましょう。

 少し肌寒い・水のような鼻水がでる、あるいはくしゃみがでる・ときに咳がでることもある・喉が痛くなることもある、そんな感じです。

 鼻水がダーっとでるので、秋の花粉症と間違えて来院される方が少なくありません。しかし花粉症は毎年少しずつ症状が出てきます。今まで秋の花粉症になったこともないのに、急に鼻水がたくさん出る場合にはむしろ花粉症は疑い難いです。

 あとよく患者さんがおっしゃるのは、「疲れているけど、いつも通り働いているだけなんだけど」というものです。

 確かにいつもと変わりないのかもしれませんが、疲労の蓄積によって体が外邪(外からの悪い刺激)に対して、体温を上げることができるほどに体力が残っていない、ということが起こり得るということを覚えておきましょう。

 鼻水がさらさらだったのに、粘ってきて、咳も強くなってしまった、と治療中におっしゃる方もいらっしゃいます。このように風邪がこじれたときには、こじれがほどけるほどに鼻水は粘り、痰のからむ咳がしつこく出てきます。寒くて水のような鼻水がたくさん出る時間が長いほど、反動で粘った鼻水も後からたくさん出て参ります。

 寒気と水のような鼻水は風邪がこじれていなくても、もらった瞬間に生じる症状でもあります。どちらにしても、寒くなくなるまで温かくして寝ている方があとあとスッキリ治ります。

 寒いから入浴して温まって寝たいという方もいらっしゃると思いますが、体力温存のため、できるだけ入浴はせず、早く就寝することをお勧めします。

 ご参考までに、このこじれた状態から回復させる特効薬があります。漢方薬の麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)と呼ばれる処方です。

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2011年11月05日

熱ショック蛋白について

 早朝のラジオで熱ショック蛋白(HSP;Heat Shock Protein)のことを話していたので、興味が湧きました。

 実は動物実験をしていた時代(15年くらい前ですが・・)に、耳にもHSPがあり、どういう作用をしているのか、という話になっていたので、蛋白質としてはよく知っているものなのです。でも健康法と関係があるのか・・!と驚いています。

 熱を加えて出てくるのだからあまり良くない蛋白質なのかと思っていましたが、実はそのダメージから細胞を守る蛋白質なのですね。見直しました!

 ラジオでは、HSP入浴法という形で紹介されていました。人間は深部体温が下がっていくときに眠気を感じるものなので、就寝前に入浴で体温をあげることは睡眠にとっても凄く重要なことなのだそうです
 
 HSPの性質を分かりやすく例えているサイトもあります。(以下、抜粋です)

 HSPは瀕死の細胞を助け、また救助が難しい場合は周りの細胞に迷惑をかけずに旅立たせるなど、新居に移るまでの間、体の中の被害を最小限にするために全力を尽くすのです。細胞内の災害対策本部と言っても過言ではないでしょう。
 
 癌にもHSPは関与するのですね。癌の温熱療法のときに自分の細胞はどのようになるのか、HSPが大変重要な役割を果たしていることが分かります
 
 治療によって障害を受けた自分の細胞を修復したり、障害の大きい細胞を排除したり、癌に対する免疫力を向上させたり。HSPの作用は大きいのですね。

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2011年10月29日