【栄養療法】微量でも、とても大切な鉄分について3
さて、今日は鉄欠乏の臨床についてです。
鉄が不足するともちろんのことですが、体に酸素が行き渡らなくなります。手足の冷えや頭痛、耳鳴りなどはこれが原因かもしれません。全身倦怠感、眠気やうつ症状との関連も考えておきましょう。
さらに鉄は骨、皮膚、粘膜の代謝、コラーゲンの生合成に働くので、鉄の不足により、爪の変形、肌の張りの低下を招いたり、ニキビができやすくなりシミが増えます。風邪をひきやすいときも鉄の不足を考えるべきです。
知能や情動とも関連するため、イライラ、疲れ、集中力の低下が特に原因がないのにいつもみられる時にも鉄の低下について考えておきましょう。
これだけ多彩な症状が出てしまう鉄不足ですので、診断と治療が重要になってきます。検査データの読み方と、食事あるいはサプリメント摂取の上での注意を次回に考えてみたいと思います。
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2010年07月18日
【栄養療法】微量でも、とても大切な鉄分について2
先週から鉄について解説を始めています。頭痛や肩こり、風邪をひき易い、めまい耳鳴り、疲れやすい、などのありふれた症状が、鉄欠乏性貧血の診断にならなくても、鉄欠乏により生じている可能性がある、ということでした。
さて、今日は鉄の代謝についてです。
鉄は吸収率が必要量や摂取した鉄の形態、同時に摂取した食物などに影響を受けます。
食物中の鉄分は一時小腸粘膜細胞の中に貯蔵されます。そして必要時には吸収されるわけですが、不要な場合には小腸粘膜ごとはがれおち、便となり排泄されます。小腸がこういう機構を持っているので、鉄が過剰に吸収されるということは考えにくいわけです。
動物性食品の中にはヘム鉄が豊富に含まれます。吸収率が10~30%と高くなります。一方、植物性食品の鉄は非ヘム鉄で吸収率は5%以下です。同時に摂取した食物により吸収率が左右されやすい性質があります。
鉄の吸収を妨害する物質とは、鉄と不溶性の塩を形成するものと考えられます。フィチン酸(穀物の外皮に含まれる)、リン酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、お茶やコーヒーに含まれるタンニン、食物繊維、カルシウム、防腐剤に含まれるEDTAが挙げられます。
逆に鉄が可溶性で吸収されやすくなるためには、2価鉄が酸化されないこと、または3価鉄が可溶性キレートを形成することが条件になります。ビタミンCは最も有効な物質と考えられ、他には食肉中の含硫アミノ酸、有機酸が挙げられます。
読者のHさんからは、カフェインの影響について質問がありました。ここで調べた限りですが、コーヒーの場合にはタンニンの方が影響あるようです。たくさんの人が緑茶をペットボトルで飲んでいますけれど、鉄の代謝の観点からはあまりおススメできないことのようです。
Hさん、ありがとうございました。
来週は鉄欠乏の臨床についてお話します。
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2010年07月10日
【栄養療法】微量でも、とても大切な鉄分について1
分子整合栄養医学を勉強するまでは、鉄分の不足に関する理解は全くありませんでした。しかし勉強した上で患者さんに接すると、鉄分の不足を思わせる症状を持っている人がとても多いことに驚かされます。
医師は必ず、鉄の欠乏は鉄欠乏性貧血、鉄の過剰はヘモクロマトーシスと勉強します。私もそうだったのですが、医師は鉄をたくさん摂取することにとても恐れを抱きます。貧血とヘモクロマトーシスでは重みが異なるからです。鉄の過剰はとてもやっかいな印象を医師は持っています。
しかしよく考えてみると、私が耳鼻科だからかもしれませんが、ヘモクロマトーシスの患者さんは学生時代から通じて診たことがありません。それにひきかえ、鉄欠乏性貧血の患者さんはありふれています。鉄欠乏性貧血はとてもよく見かけるので、どうも医師には深刻さ、切迫感がないのです。
でも、ひどい頭痛であったり、肩こりが慢性的に生じていたり、風邪をひき易かったり、めまい耳鳴りがあったり、疲れやすかったり・・・。いろんなありふれた症状が、鉄欠乏性貧血の診断にならなくても、鉄欠乏によって生じていることを、みなさんは知る必要があります。
なぜこういう症状は女性に多いのでしょうか?それは月経があるからです。私も同じことを習いましたが、よくまとまっているこのサイトを参照して下さい。
大切な部分だけ抜粋します。『食物中に含まれる鉄は1日10~20mgで、そのうち約10%にあたる1mgが腸管から吸収されます。また、消化管や汗、尿中に排泄される鉄も1日約1mgで、収支のバランスがとれています。ところが生理によって失われる鉄は約30mgで、女性に鉄欠乏が起こりやすいのはこのためです。』
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2010年07月04日
【栄養療法】アミノ酸について2 ~ 癌、肝硬変とアミノ酸
先週からアミノ酸について勉強しています。
アミノ酸摂取はバランスが重要です。それぞれのアミノ酸を必要量摂取することが重要です。植物性のたんぱく質ではメチオニンというアミノ酸が不足する傾向があるので、動物性たんぱく質の摂取が重要とされます。
思いつきで書いていますので(笑)話が飛びますが、癌への対応もアミノ酸が重要な役割を果たしています。
抗癌剤を使用するときには、その無毒化、発生した活性酸素の除去が重要になりますが、その働きを担うのはグルタチオンです。グルタチオンはシステイン、グルタミン酸、グリシンから成るトリペプチドです。
またグリシンは癌に栄養を供給する血管が新しく作られるのを阻止する働きを持っています。癌の浸潤を抑える働きもあることが肝癌で確認されています。
また、肝硬変の場合ですが、アルブミンの値が3.8mg/dl以上あると生存率が大きく上がることが報告されています。
たんぱく質の摂取不足や癌などアルブミンがどんどん消費されてしまう場合、積極的に補っていく必要があります。
補っても補ってもアルブミン値が上がらない場合、胃腸からの吸収が悪くなっていないか、慢性疾患がないか、尿たんぱくがでていないか、胃癌などにより出血していないか、などを検証する必要があります。
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2010年06月27日
【栄養療法】アミノ酸について
今週はアミノ酸について勉強します。
読者のHさんから、トレーニング生活を始めてあった不調が、プロテイン摂取で改善したとのことです。まず、長距離を走っても飛蚊症にならなくなり、そして風邪を引かないようになり、肉の食べ放題に行きたい欲求が抑えられるようになったとのことです。なるほど!
方法としては運動前にアミノ酸サプリメントを摂取して、運動後にプロテインを摂取し、間食で空腹を避けるようにしたとのことです。これは実は深い内容を含んでいますよ。
アミノ酸は吸収されて30分でほとんどが肝臓に到達します。ところが、プロテインではアミノ酸に分解されるのに時間がかかるので、少しずつしか肝臓には到達しないのです。
ですから、トレーニング前にアミノ酸を摂取するというのはとても理にかなっています。もしトレーニングで傷んだ体を修復することを考えるならば、トレーニング後もアミノ酸摂取して、トレーニングとは関係のない食事のときにプロテインを摂取するというのは如何でしょうか?
本題と外れますが、間食で空腹を避けるとありました。これはとても有効な場合があります。それは食後数時間後に低血糖になり、食欲が異常に増す人の場合です。もしかするとHさんは「肉を食べたくなる衝動がある」と話しておられましたので、食後高血糖、食後4~5時間後に低血糖になっているのではないでしょうか?
この場合には、食事の最初に繊維質のものとプロテイン(あるいは肉類)を摂取して、糖質の吸収を抑えて食後高血糖を抑えていくという方法があります。実は私も食後に血糖がとても上がるので、プロテインの食前摂取をしています。間食する場合にも糖質過多にならないような配慮が必要です。
Hさん、メールありがとうございました。
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2010年06月19日
【栄養療法】溝口先生のご講演をみて感じたこと
今週はアミノ酸について勉強するはずでしたが、現在、新幹線の中ということもあり、十分な資料をもっておりませんので、また脱線します。
溝口先生の学会でのご講演は、「脳の栄養療法」というタイトルでした。まさに栄養療法が重要であろうという分野です。
いつものごとく、うつ病患者さんの症例紹介があり、検査データが数項目スクリーンに映りました。8項目程度ですが、たんぱく質とビタミンBの不足が見てとれます。サプリメントを飲んだら治った、というお決まりのコースの説明が続きました。
抗うつ剤しか手段のない先生方にはとてもショッキングな内容のはずです。討論でも「本当に検査データの読み方が深くて感心する」というコメントがありました。
でも会場はどこか冷ややかです。検査データ正常だから問題あるの??という空気も流れます。結局、会場の先生方は、頭では理解してもホンモノであるとは映らなかったのでしょうね。
保守的な社会の中で、栄養療法がどこまで広がっていくのか、ここからが難しいところです。
「一体、何グラム投与したのですか?」という質問もありました。
それぞれを機械的に正常値にもっていくのではなく、その人にとって一番良い値に持っていくという考え方が全く理解されていないので、少しがっかりしましたよ。
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さて、来週こそはアミノ酸のことをお送りする予定です。
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2010年06月13日
【栄養療法】たんぱく質の重要性3~トランスポーター
たんぱく質の重要性について考えてきました。酵素、ホルモン、免疫物質の材料になっているたんぱく質の機能面の重要性、筋肉や皮膚など構造面の重要性について説いてきました。
また、たんぱく質が足りているかどうかを見分ける血液検査の指標についても言及しました。
さて今週は、たんぱく質の機能面に関係しますが、トランスポーターについて少し詳しく見ていきましょう。
トランスポーターとは、物質運搬物質のことです。運び屋ですね。血液の中の様々な物質はそれぞれにたんぱく質に結合して移動し、必要なところでたんぱく質と分かれるという仕組みになっています。
例えばビタミンAが血液中で運ばれていくには、レチノール結合タンパクとトランスサイレチンというたんぱく質が必要です。鉄が運ばれて細胞内に取り込まれるにはトランスフェリンという糖たんぱく質が必要です。
ほとんどの物質にトランスポーターがそれぞれあるような状況ですので、たんぱく質の不足により、体の種々の機能が低下してしまうということは想像に難くありません。
いろんな薬剤もアルブミンに結合して体内を循環して効能を発揮します。ですので、アルブミンが不足している人が薬を投与されると効果が十分にでないことが考えられ、薬剤量が増えていくことになります。薬で思うような効果がでないときに、医師はあまりたんぱく質不足であるかどうか気に留めません。このことは覚えておきましょう。
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さて、来週はアミノ酸のことをお送りする予定です。
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2010年06月06日
【栄養療法】たんぱく質の重要性2
先週、たんぱく質は酵素やホルモン、免疫物質など機能的側面でも、筋肉や皮膚など構造的側面でも重要であることをお話しました。
たんぱく質の不足は必ず補われなければなりませんので、不足したときには自分の体を崩して機能を守ることになります。こうなる前に手を打ちたいですよね?
ではそもそも、どのくらいたんぱく質が足りているか、その指標はどこにあるのでしょうか?
もちろん総タンパク値は分かりやすいですね。でも簡単な健康診断では測定しないことも少なくないのです。
アルブミンは、たんぱく質の種類の一つで、総タンパク量とだいたい相関があると考えてよいと思います。これは比較的測定されることが多いです。値としては4.5g/dlが目標になるでしょう。
あとは酵素やホルモンなど、たんぱく質由来のアミノ酸が原料になって作られる物質がきちんと作られているかをチェックしましょう。
たんぱく量を反映しやすい値はLDH(乳酸脱水素酵素)やCHE(コリンエステラーゼ)という値です。基準値とされている値の範囲内でも、かなり下限が近いようでしたらタンパク不足である可能性があり要注意です。しかしこれらの値も測定されないことがあります。
そこで、大抵測定されるGOT(AST)、GPT(ALT)の値が15IU/Lを割るようでしたらタンパク不足を疑ってかかる必要があるでしょう。基準値として堂々と10~30IU/lなどと書いてありますが、適正な値は20と考えて下さい。
来週もたんぱく質のことをお送りしますね。
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2010年05月22日
【栄養療法】たんぱく質の重要性1
今日はたんぱく質の重要性に触れたいと思います。
特に高齢者で多いと思いますが、コレステロールが高いと言われ、あっさりとした食べ物ばかりを食べていると言う人がかなりいらっしゃる印象です。
コレステロールは通常、年齢を経るごとに高くなる傾向がありますが、どういう意味があって高くなっていくのか、聞いたことがありません。どこに行っても、高値だと危険だから下げましょう、ということを皆が言います。
しかしこれは本当に良いことなのかな?と思う事があります。
食べ物は麺類だったり、お茶漬けだったりですが、これで健康は守れるのでしょうか?
人間の体はたんぱく質からできています。
機能面でもたんぱく質は大きな働きをしています。酵素もたんぱく質ですし、ホルモンもたんぱく質からできているものもあります。筋肉も免疫物質も血液中の物質運搬物質も細胞膜受容体も、全てたんぱく質なのです。
このようにたんぱく質の働きは実に多彩です。不足することが様々な病気の原因になる可能性があることがご理解いただけるでしょう。
もし必要なたんぱく質摂取が不足した場合にはどうなるのでしょうか?
体は自分の体を壊しながら、多種多様な機能を守っていくことになります。私たちの体には一定量のたんぱく質摂取が不可なのです。
タンパク質の重要性2に続きます。
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2010年05月16日
【栄養療法】(Break)栄養療法のこんなところが良いかな?
今日はちょっと一休み。
栄養療法をやってこんなところが良かったな、と感じられることがあったのでお話してみます。
娘の指に赤い丘疹ができました。波動検査で診断するとカビの感染と化学物質汚染による発疹のようです。
えええーっ?!!栄養療法で免疫万全のはずなのに~・・
と思ったのですが、よく考えると、皮膚病とは体内の不要物質を体外に出す働きとも考えられます。従来、排泄されなかったものが、不十分とはいえ、皮膚から出そうとしているのかな?と考えなおしました。
赤ちゃんはすぐに発疹ができますが、最初は全ての異物に対して反応してしまいますので発疹ができやすいのです。
私たち大人は多少の異物であれば「まぁいっか」ということで、体が反応しないようになってきます。生活しやすくなりますが、汚染の処理がしにくくなります。これは病気の原因にもなることでしょう。
どうも栄養療法をすると、異物に対する排泄機転が高まる感じがします。娘のように皮膚から排泄するということもあるでしょうし、私自身は排便の回数が明らかに増えた感じがしています。
2010年05月09日