コレステロールは下げた方が良いの?11

 これまでさまざまな観点から動脈硬化因子を抑えることについてお話してきました。先週は中性脂肪が高い人は糖質の制限から、カイロミクロンが高い人は脂質の制限から行うこと、LDLが高い人は、EPAやDHAを摂取すること、EPAを摂取しながら生活改善を進めていくことをお話しました。

 今週は薬物による高脂血症治療についてお話します。

 コレステロール降下剤として最も広く用いられているのは、HMG-CoA還元酵素阻害剤、いわゆるスタチン系薬剤と言われるものです。

 この薬を飲むと、体内でメバロン酸という物質が作りにくくなります。メバロン酸からはコレステロールが作られますので、当然コレステロール値は下がります。ところが、CoQ10もメバロン酸から作られますので、これも作られなくなります。これは副作用と考えてよいでしょうね。

 CoQ10はとくに心筋細胞の活性化に必要な物質ですので、スタチン系の薬剤を使用するときにはCoQ10を補う必要があるとも言われています。

 ここからは私の想像ですが、CoQ10は様々な抗酸化物質とともに抗酸化作用を発揮する物質なので、CoQ10が減少することで例えばビタミンC、ビタミンE、αリポ酸などの抗酸化物質が正常に機能しなくなる可能性があると思います。

 このサイトには副作用として末梢神経炎のみが記載されていますが、仮に体内の抗酸化物質が正常に機能しないならば、副作用は全身に及ぶと思われます。耳鼻科では動物実験レベルですが、CoQ10により高齢者の難聴が防げるのではないか、という報告もありますし、加齢性の変化も心配です。
 
 もちろん急に副作用が生じるわけではないと思いますので、対応をしっかり考えれば問題はないと思います。スタチン系の薬剤を服用しているならば、CoQ10のサプリメントの服用を考えてみても良いでしょう。

 他の副作用としては骨格筋変性による筋肉痛、筋力低下がありますが、これも決して軽い副作用ではありませんので、定期的に検査を受けるべきだと思いますし、患者さんは薬が原因と考えにくい症状ですので注意が必要です。

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2011年11月20日

コレステロールは下げた方が良いの?10

 これまで腸肝循環、動脈硬化因子をEPA摂取で減らすお話、糖尿病の人では心筋梗塞のリスク要因であるIDLが増加しやすいこと、糖質制限をしてビタミンB、Cを摂取することでβ酸化の観点からも動脈硬化因子を抑えることができることをお話しました。

 先週は善玉と言われるHDLのことをお話ししました。ビタミンC、ビタミンEの摂取、ウォーキング、減量(肥満者)でHDLを増やせるそうです。

 さて、今週は高脂血症の治療に関する話題です。

 最も重要なことは、動脈硬化とそれに伴う疾患の予防が治療の目的であり、そのためにまずは生活習慣から考える必要があります。

 食事はまずカロリーと栄養配分が適正化されることが求められます。栄養配分とは、六大栄養素の割合を意識することだと思います。

 それでも上手くいかない人に限り、食事を制限していく必要性が出てきます。中性脂肪が高い人は糖質の制限から、カイロミクロン(あまり測定されませんが)が高い人は脂質の制限から行います。

 LDLが高い人は、EPAやDHAを摂取することで改善が望まれます。EPAが細胞膜に取り込まれていくことで、心筋梗塞など虚血性心疾患の予防効果が期待できます。

 EPAは魚油に多く含まれており、細胞膜にどんどん取り込まれていきます。4~6週間で取り込みが最大になりますが、止めてしまうと2~3ヶ月で元に戻っていくそうです。ですので、EPAを摂取しながら食事内容や肥満、喫煙などの危険因子を排除しながら生活改善を進めていく必要があります。

 また、DHAも魚を多食する日本人は多く摂取していると言われていますが、神経細胞の細胞膜にはとても多く含まれているので、神経の機能に大きな働きをしていると考えられます。魚油のようにEPAとDHAは同時に摂取すると有効性が高まるとされています。

 さて、来週は高脂血症治療の続き(運動、薬物)です。

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2011年11月11日

コレステロールは下げた方が良いの?9

 これまで腸肝循環、動脈硬化因子をEPA摂取で減らすお話、糖尿病の人では心筋梗塞のリスク要因であるIDLが増加しやすいこと、糖質制限をしてビタミンB、Cを摂取することでβ酸化の観点からも動脈硬化因子を抑えることができることも先週お話しました。

 今週は善玉と言われるHDLに関することをお話します。

 HDLは肝臓以外の組織からコレステロールを回収して肝臓に戻す働きを持っています。従ってHDLが少ないことが動脈硬化のリスクになるようです。この働きがあるために善玉コレステロールと呼ばれているようです。

 酸化LDLの話をしましたが、酸化LDLはマクロファージに貪食されて血管内膜内に溜まり、プラークを形成してアテローム性動脈硬化の原因になります。HDLはLDLの酸化を抑制したり、酸化LDLを貪食するマクロファージの増殖を抑える作用がありますので、ぜひともHDLは増やしておきたいところです。

 栄養のアプローチから考えると、ビタミンC、ビタミンEを摂取すること、ウォーキング、肥満の人は減量することでHDLを増やすことができます。また、ビタミンB群にもHDLを増やす働きがあります。

 このときに注意しなくてはいけないのは、低HDLを肥満があるからと言ってムリな減量を行うと、タンパク質摂取不足から低HDLが改善しません。これは要注意だと思います。
 
 さて、次週からようやく高脂血症の治療に関する話題をご提供していきます。

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2011年11月05日

コレステロールは下げた方が良いの?8

 これまで腸肝循環、動脈硬化因子であるカイロミクロンレムナントをEPA(エイコサペンタエン酸)摂取で減らすお話、そして先週はLDLの代謝産物であるIDLが心筋梗塞のリスク要因であること、糖尿病の人ではIDLが増加しやすいことなどをお話しました。

 さて、VLDLとLDLの観点から、動脈硬化を抑えるためにどのような栄養素を摂取するのが望ましいでしょうか?

 まずVLDL高値を抑えることが重要ですが、そのためにはβ酸化の経路を正常な形で維持することが必要になります。

 β酸化とは、脂肪酸を酸化してクエン酸回路に送り、エネルギーを取り出す経路のことです。この経路を維持するには、糖質摂取を制限する必要がでてきます。糖質を摂取していると、クエン酸回路が回り、それ以上に酸化脂肪酸でクエン酸回路を回す必要性がなくなるからです。

 また、ビタミンCが不足すると、β酸化に障害がでるため、十分量のビタミンCを摂る必要があります。さらにβ酸化の過程でビタミンBが必要になるため、これも補給が必要でしょう。

 カイロミクロンレムナントのところでも出てきましたが、β酸化とは無関係ですが、EPAを摂取することでVLDLの合成も抑制されるため、EPA摂取も重要になってきます。

 LDLが酸化されることも動脈硬化の原因になります。それを防ぐために、ビタミンEやβカロチンといった油性ビタミンがLDLに十分含まれていることが重要で、またビタミンCやフラボノイドの十分な摂取によりLDLの酸化が抑えられます。

 さて、次週は善玉と言われるHDLに関することを中心にお話する予定です。

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2011年10月29日

コレステロールは下げた方が良いの?6

 先々週まで食餌性脂肪の一連の流れをお話し、先週は腸肝循環についてお話しました。

 食餌から吸収された中性脂肪はカイロミクロンという形態になりますが、これが分解されると、その残りかすとして、カイロミクロンレムナントという物質が出来上がります。

 このカイロミクロンレムナントが血液中に長時間滞在することは動脈硬化の危険因子とされています。糖尿病の人はカイロミクロンレムナントの肝臓への結合が弱いことが指摘されています。つまり糖尿病だと動脈硬化が進みやすいのです。

 しかも肥満などで、インスリン(血糖を下げるホルモン)の働きが弱くなっている人の場合、カイロミクロンが増加するため、カイロミクロンレムナントの代謝も遅れる可能性があり、この場合も動脈硬化を注意しなくてはなりません。

 以上の如く、食後に中性脂肪が急激に増加する人、糖尿病の人が動脈硬化になりやすいことが注目されています。

 では、カイロミクロンとそのレムナントを減らすための手段がないのでしょうか?

 EPAという魚油に含まれる成分があります。サプリメントでもだんだん有名になってきた成分です。このEPAは肝臓での中性脂肪合成を抑制するのと同時に、中性脂肪を分解する酵素の働きを高めるため、中性脂肪が減少するのです。

 EPA摂取により中性脂肪が減少すれば、カイロミクロンやカイロミクロンレムナントは減少し、動脈硬化は抑えられると考えられます。

 ちょっと難しいなあ。。。

 来週に続きます。

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2011年10月16日

コレステロールは下げた方が良いの?5

 食餌性脂肪の一連の流れをお話することにしました。先週はちょっと難しかったかもしれませんが、小腸から吸収されたトリグリセリドとコレステロールの行方についてお話しました。

ちょっとまた話が飛びますが(笑)、腸肝循環というものの存在をみなさん、知っておく必要があります。

 胆汁は腸に分泌されて脂質の吸収に役立つわけですが、この胆汁は最終的には腸から再吸収されて肝臓に戻されます。胆汁中の成分を失わないように、生体はそういう仕組みを作っているのです。

 ところで、胆汁酸は何から作られるのでしょうか。実はコレステロールです。コレステロールの約半分が胆汁酸に代謝され、腸管に分泌されます。分泌されたコレステロールの大半が腸から再吸収されて肝臓に戻ります。

 胆汁の一部が再吸収されないで便中に排泄されることがコレステロールの主な排泄経路になっているのです。

 この胆汁の再吸収を抑えるのは食物線維です。この再吸収が抑えられると、胆汁の排泄量が増加し、コレステロールが胆汁酸を生成するのに使われるため、コレステロール値が下がります。

 それだけでなく、胆汁酸が新しいものになるため、胆石もできにくいのだそうです。

 また、ビタミンCが胆汁酸合成を促進するので、これもコレステロール値を下げるのに一役買うようです。

 食事からコレステロールを下げるには、油ものを気にする以前に、食物線維とビタミンCを確認しておく方が良いでしょう。

 この流れであれば、必要以上にコレステロール値が下がることはないように感じられます。

 来週に続きます。

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2011年10月09日

コレステロールは下げた方が良いの?4

 このコラムを書いていて感じたのですが、脂質代謝全般がどのようになっているかを理解しないと、その先の説明が困難なのです。

 そこで、少し回り道になるかもしれませんが、脂質代謝の概要をお話しておくことにします。

 食餌性脂肪は腸からトリグリセリドとコレステロールとして吸収されます。そこから血液循環中から主に筋肉内と脂肪細胞中にトリグリセリドが放出されます。

 残りのコレステロールなどは一度肝臓に取り込まれ、そこでトリグリセリドと共に再度血液中に放出されます。

 トリグリセリドは筋肉と脂肪細胞に供給されて、残ったコレステロールを含むリポタンパク質はLDL(いわゆる悪玉コレステロール)と呼ばれます。このコレステロールが各組織に運ばれます。余ったコレステロールはHDL(善玉コレステロール)というリポタンパク質により肝臓に戻されます。

 主な物質の流れは以上の通りです。

 さて、小腸から吸収されたトリグリセリドとコレステロールはひとまとまりになり、リンパ管を流れていき、その後血液中に入っていきます。

 小腸でのコレステロールの吸収は30%程度とあまり高くありませんが、トリグリセリドがあるとコレステロールの吸収が良くなりますので、コレステロール値を下げるひとつの方法としては、低脂肪のものを摂取することが挙げられます。

 ただ、脂質代謝は上述のように複雑なので、それだけでは上手くいかないこともあるように思います。そのあたりの話はまた来週以後にします。

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2011年10月01日

コレステロールは下げた方が良いの?3

 先週まで、コレステロールには実は重要な働きがあるということ、コレステロール値が上昇するのは、コレステロール不要のメッセージが肝臓に届かないためであることをお話してきました。

 肝臓でコレステロールが生合成される量は、食事由来のコレステロール量が多かったり、各組織から回収されたコレステロールが多くなると、少なくなるように調整されています。

 コレステロールにはLDLコレステロールというものと、HDLコレステロールというものがあります。

 LDLは悪玉、HDLは善玉コレステロールなどと言われていますが、本当はどういう働きがあるのでしょうか?

 LDLは各組織にコレステロールを運搬する役割をします。各組織で余ったコレステロールはHDLが回収して肝臓に運んでいます。

 これが血管で生じると、LDLが血管にコレステロールを持ってきて、HDLが回収するという意味合いになります。

 ですので、LDLが悪玉、HDLが善玉などと言われるわけです。

 今週は勉強不足のため、ここまで!

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2011年09月25日

コレステロールは下げた方が良いの?2

 先週はコレステロールには実は重要な働きがあるということを書きました。コレステロールのことはみなさんご興味があるようでう、数通のメールをいただきました。ありがとうございます。

 さて、ではコレステロールを下げることをどのように考えていったら良いのかについて見てみましょう。

 人によって影響の大きさは異なりますが、コレステロールを含んだ食べ物を摂取すると、コレステロール値はすぐに上がります。食事中のコレステロールが血液に入ってくるからです。これは当たり前ですよね?

 ところが長期的に観察すると、空腹時のコレステロール値は、摂取したコレステロールの量に相関しないことが分かっています。

 むしろ、コレステロール値が高くなったときに、

 「コレステロールはもう要りませんよ」

 という指令がコレステロールを作っている肝臓にくるわけですが(食事中のコレステロールとは別物です)、この指令が弱くなることでコレステロールが作られ続けてしまい、コレステロール値が高くなるようなのです。

 この指令を強くしてコレステロールを下げるお薬が今、全国的に処方されているわけです。

 以上のことから、なぜコレステロールの値を下げる指令が弱くなるのか?これが最も重要な点であることが分かりますね。

 ではどのような状況でその指令は弱くなるのでしょう?これはまだ十分に調べていないので(笑)来週にします。

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2011年09月17日

コレステロールは下げた方が良いの?1

 コレステロールを下げるための薬を飲んでいる人が、どうしたら薬を止められるのか?ということを聞いてきました。

 あまりコレステロールについて詳しくなかったので、自分でも考えながら方法を探ることにしました。

 そもそもコレステロールって何でしょう?まずは基本的なところから入ります。

 コレステロールは悪者のように扱われていますが、本当はとても重要な働きをもった物質です。

 まずすぐに思いつくのは、細胞膜の構成成分であることです。特に神経細胞にはたくさんのコレステロールが含まれています。コレステロール不足で、細胞の機能が十分に発揮されない可能性があります。

 次に重要(どちらも重要ですが・・)と思われるのは、ホルモンやその他の生理活性物質を作るための材料になることです。男性ホルモンや女性ホルモンの材料になるだけではなく、ビタミンDの材料などにもなっています。

 あとは、胆汁酸の主成分です。脂質を吸収しやすくします。胆汁酸を減らしてコレステロール上昇を抑えるという薬もあるくらいです。

 ここまで読まれて、あれ?と思われた方がいらっしゃるのではないでしょうか?コレステロールって案外大切なものなんだな、と思われた方も少なくないのではないでしょうか?

 では続きは来週に

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2011年09月09日