傷寒論について
中国に傷寒論(しょうかんろん)という古典があります。風邪の漢方治療の総元締めのような本だという理解でおりましたが、解説書を読んでいると、治し損なった場合の対処方法も書いてあったり、いろんな可能性への配慮が滲み、とても面白いのです。古典は現代に合わないから読まない、という姿勢を今まで貫いてきたのですが(単なる不勉強ですが)、やはり謙虚に学ばないといけませんね。
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2009年05月24日
健康を考えるにあたり必要な総論について
【宣伝です】私の友人、吉村和敏さんの写真集「PASTRAL」素晴らしい!日本カメラに注文して入手しました。サイトの紹介写真より数段美しい写真が掲載されています。彼の見る光の色は探しても見つからないです。是非一度見て下さい。欲しくなる写真集です。
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健康を真剣に考える、この読者のみなさんでしたら、そんなことは当たり前!と思われてしまうかもしれませんが、どうぞお付き合い下さいませ。
私はまず大掴みで健康への方向性を考えるべきだと最近思うのです。
つまり、あなたの健康に必要なのは、プラスを増やすことなのか、マイナスを減らすことなのか、考えて下さい、ということです。
体が弱そうな人が、マクロビオティックの食事をしていたり、運動大好きで強そうな人がパワーヨーガをやったりしているのを見ると、本当にこれで良いのかなと感じてしまうわけです。
それでもある程度のところまでは健康になれるとは思いますよ。でも、その先には行かれません。
例えば、良いものを食べて健康になろうとするのは良いですが、それが自分の足りない部分を補ってくれるものなのか、自分に不要な老廃物を排出するのに役立つ、あるいは余計なものを入らないようにするのか、考えるべきでょう。ただ体に良いからと飛びつくのはNGです。
東洋医学の「補瀉(ほしゃ)」の考え方に似ていますね。体が弱い虚証の人は「補」、つまりプラスを補強していく必要があるでしょうし、体の強い実証の人は「瀉」、つまりマイナスを減らしていくことを考えていくことが必要です。
ヨーガや気功は概ね「補」だと思いますし、マクロビオティックはどちらかと言うと「瀉」になるのではないでしょうか?
ただし、健康以外の、たとえば能力開発とかでいろいろ実践されている方などはちょっと話が変わってくる可能性がありますが。
私が歯科で金属除去を始めたのは、自分へのマイナスを除くことが必要だと感じたからです。もっとプラスのエネルギーも欲しいのですが(笑)、自分にはマイナスを除く方がより健康になれると思うので。
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2009年04月04日
更年期障害への対応(案)について
患者さんが、「更年期障害だから仕方ないですよね?」ということをおっしゃる度に「それで本当に納得しているのかなあ」と私は感じています。最近では男性にも更年期障害があると広く認められるようになってきましたね。
でも私は「アレルギーだから仕方ないですよね?」と言って来られる患者さんと同質の違和感を持っています。
「じゃあ原因は何・・?」
「なる人とならない人の違いは何??」と問いたくなります。
説明されているようでされていないこの「更年期」という言葉に私は嫌悪感すら感じます。ホルモンの値で説明されますが、症状とホルモンの間に何かギャップを感じるのです。
東洋医学では「お血」、つまり血の滞りと解釈されます。観念的ですが、この方が症状とマッチした考え方で、私にはしっくりきます。
さて、そのお血への対応を食材で考えてみましょう。これは先日の中医学の講座で菅沼栄先生に教えていただいたものです。
お血への対応の原則は3つです。色の濃いもので血を活性化すること、辛味で循環を活性化すること、そして海の塩味で組織を柔軟にすることです。こういう説明はとても納得がいきやすいのですが、みなさん如何でしょうか?
ちなみに色の濃いものとしては、サンザシ、木クラゲ、黒豆、赤小豆。
そして循環を良くする辛味としては、ニンニク、ラッキョウ、サフラン。
最後に組織を柔軟にする海の塩味としては、海藻類、セロリ、蓮根を挙げることができます。
なかなか食材のことは普段考えないので、私も勉強になります。
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2009年03月08日
「めざましテレビ」にでました~鼻閉の話の続き
先週の木曜日朝にフジテレビ系「めざましテレビ」に出演しました。花粉症の鼻閉をどうするか?というテーマで9分の特集でした。ご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんね。
その2日前に自分の診察室でインタビューを受けたのですが、質問の内容が難しかったので(苦笑)かなり勉強しました。
テレビの中ではあまり強調されなかったところですが、ちょっと面白いなと思ったことがありました。
それは、ネギと薄荷(ハッカ)の性質の違いです。
テレビでは、それぞれを使って、鼻閉が改善するかどうか実験していました。ネギによる改善は4人中2人、薄荷による改善は4人中1人でした。
両方で鼻閉が改善した人がいなかったということが、私にはとても興味深く感じられました。
それもそのはず、ネギは辛温解表(辛い味で温める性質がある、体の表面の邪を散らすもの、という意味)の食材、薄荷は辛涼解表(冷まして体表の邪を散らす)の生薬なのです。性質としては全く反対です。
浮腫になり循環が悪い粘膜には温めて邪を散らすネギ、熱を帯びた炎症が主体のときには冷ます薄荷が有効なのだと思いました。
最近の花粉症の人は、以前と異なり粘膜が赤い人が多いです。ですので、熱を帯びているときに用いる薄荷が有効な人が多いのではないかと思います。鼻の周囲を冷やすだけでも鼻通りは良くなるのではないでしょうか?
あくまでも推測です。やった方がいらっしゃいましたら感想をお聞かせ下さいね。lohas@jjclinic.jpまで!
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2009年03月01日
漢方薬の考察~通導散について
「つうどうさん」と読みます。あまり普通の医院では処方される機会は少なかも知れません。
私が漢方薬を使い始めて間もないころ、ストレスでイライラしていて、めまいと耳鳴と肩こりのひどい方がいらっしゃいました。女性ですが体はがっちりした方でした。
通常の診療ですと、まず耳鳴とめまいに対応する軽い薬を処方してみるのが定石なのですが、イライラと肩こりをみて、何とか漢方薬が使えないか、と考えに考えて選んだ処方でした。案の定、すべての症状が軽快し、私も大変満足したことを思い出します。
先日、Sさんが診察のときに面白いことを言われました。Sさんには他の漢方薬を用いていて、強烈にのぼせと肩こりを治療していました。しかし今ひとつの印象のようでしたので通導散を使い、感想を聞きました。
「肩こりは残るけれど、何だか気分がよくなるし、周りの人も集まってくるように感じます。」とのことでした。
共鳴ということがあるのかどうか分かりませんが、実は前に処方した内容と比べて、通導散には気めぐりが良くなる生薬が多く配されています。もしかして、気めぐりの良くなったSさんが周りの人を引き付けたのか?と考えてしまいます。当初、顔が真っ赤だったSさんですが、今では普通の顔色に戻られています。
ストレスによるのぼせの方は本当に多いです。めまい、耳鳴、難聴、不眠、高血圧、肩こり、頭痛・・いろんな症状が一気に出てきます。当てはまる症状が多い方には漢方薬をお勧めします。
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2009年02月22日
医者の健康法~新春エッセイから
とある医学雑誌の新春エッセイを読みました。そこには各分野の医学会長の自分の健康法が紹介されていました。
小児科の学会長は数々の読書と小旅行をするなど、好きなことをすることくらいしか健康法と言えるものはないとのことです。好きなことをして健康を守るとはいかにも小児科医らしいかなと思いました。
糖尿病学会長は自分の学会講演までにメタボ基準をクリアしようと、食事を抑えて運動して基準までもう少しのところにきたところで体調を崩してしまい、結局減量がうまくいかなかったようです(笑)。
外科の学会長は人の生き死にが、なかなか予想通りにならない経験から、人の寿命は定められているというご意見のようです。ストレスを溜めないようには気を遣っておられたようですが、外科医では如何ともし難いとのことでした。
泌尿器科学会長は、バランスのとれた食生活と睡眠、定期健診、読書と水泳ということです。ご本人の達成度は高いようですが、何だか健康法に関する教科書を読んでいるような感じですね。良いけれど、つまらないです(笑)。
産婦人科学会長は、料理(といっても、パスタとお好み焼きとカレーだそうだが)と散歩とのこと。代々木公園から明治神宮、渋谷までの散歩は良さそうです。
わが耳鼻科の学会長は減量、禁煙、ウォーキングとありきたりでした。まあこれで良いのかもしれませんけれど。
精神科の学会長は気分転換だったり、東洋医学会長は漢方と鍼灸だったりとその道の中でいろいろ考えられているようです。
意外性がないところが目をひいたので、ここで紹介してみました。自分ならどう書くかなあ。脈でバランスを常にモニターして、呼吸法で気を増幅して、今年から気功にもう少し真面目に取り組むとか、瞑想を始めたとか、いろいろ書くことがあるけどなあ(笑)。
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2009年01月04日
五行の解説9(保存版)~肺の病態について
10月25日に受講した「次のステップを目指す中医学講座」のノートから内容をご紹介しています。講義は下谷武志先生。文責は陣内です。
五行説の基本は木火土金水(もっかどこんすい)の順番で物事が生じるという、世の中の原理を表しています。木から火が生まれ、火で燃えて灰→土になり、土の中に金属が生まれ、金が鉱脈となり水が生じ、水は木を育てる、という輪廻の思想です。
今日のテーマは「肺」の病態です。「肺」というと、呼吸をする肺を思い浮かべる方が大半だと思いますが、中医学では肺、粘膜、皮膚と外界との境目すべてを指します。
従って、体と外界との境界が破たんすると、「肺」が病んでいることになりますが、一方で、肺には壊れて再生に向かうという役割もあるため、正常に壊れていくというプロセスが必要になってきます(難!)。
悲しみの気持ちがあると、「肺」に穴が開くとされます。耳鼻科では滲出性中耳炎、あとはネフローゼなど、表面に穴が開いて、体液やたんぱく質など、体外に漏らすべきでないものを漏らしてしまうことになるのです。この穴を塞いでくれるのは黄耆(おうぎ)という生薬です。
また破壊を堰き止めることによる弊害を回避するために、大黄(だいおう)という生薬があります。通便のための生薬ですが、堰き止めず、流れをよくして肺全体を潤す作用があります。それでいて形として、もの(大便)を自分の境界を越えて外に出すという働きがあります。同じように形として痰を境界(粘膜)から出してくれる働きを杏仁(きょうにん)が持っています。
「肺」には自他の区別という大きな課題があります。ということは、自他の区別が最も苦手な「心」の働きが強くなると、障害が出やすくなります。これを「心剋肺」と言い、たとえば、ヒステリーなどの心の乱れにより、体の防御機能が落ちることを指します。
さあ、これで五行ひと通り解説が終りました。如何だったでしょうか?
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2008年12月28日
五行の解説8(保存版)~肺の総論について
10月25日に受講した「次のステップを目指す中医学講座」のノートから内容をご紹介しています。講義は下谷武志先生。文責は陣内です。
五行説の基本は木火土金水(もっかどこんすい)の順番で物事が生じるという、世の中の原理を表しています。木から火が生まれ、火で燃えて灰→土になり、土の中に金属が生まれ、金が鉱脈となり水が生じ、水は木を育てる、という輪廻の思想です。
今日のテーマは肺です。肺というと、呼吸をする肺を思い浮かべる方が大半でしょう。しかし、中医学の肺とは、外界との境目すべてを指します。
皮膚、鼻や口腔などの粘膜、気管と肺も含めます。普通にしていて空気の触れる部分ということになりましょう。
エネルギーは自分の形体を維持するために消費されるわけですが、同時に最終的な役割として、皮膚や粘膜表面に運ばれ、体の防御、つまり自他の区別のためのエネルギーとなるのです。
皮膚が人の外観を形成しているわけですが、人が肌肉から老いることからも分かるように、肺は壊れていく部分でもあります。また唯一光を感じる部分でもあります。
完成度が高く、これ以上何かを変えてしまうと、外観や機能が狂ってしまう、そんな感じが肺にはあります。
下谷先生は井上用水の「マイハウス」を挙げておられました。楽曲の完成度を歌詞が超越してしまい、壊れかけている印象があります。肺のイメージが重なる歌として分かりやすいかもしれません。
フェルメール展が先日終わってしまいましたが、行かれましたでしょうか?私は40分待ちで入場してやれやれと思っていましたが、もっと待った方も多かったようですね。
どの絵画も計算しつくされた光の芸術という印象でしたが、どこも変えられないということもありますし、必ず光がテーマになるという意味合いからも肺なのかな?と思います。
次週は肺の病態について考えてみます。
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2008年12月21日
五行の解説7(保存版)~脾の病態について
10月25日に受講した「次のステップを目指す中医学講座」のノートから内容をご紹介しています。講義は下谷武志先生。文責は陣内です。
五行説の基本は木火土金水(もっかどこんすい)の順番で物事が生じるという、世の中の原理を表しています。木から火が生まれ、火で燃えて灰→土になり、土の中に金属が生まれ、金が鉱脈となり水が生じ、水は木を育てる、という輪廻の思想です。
前々回私が学校の用務員さんを「脾」的と感じたと書きました。居なくなると誰もが困るけれど、誰もが主役とは考えていない「脾」。母性からくる「無償の愛」を皆に与えているようなものかもしれません。
「脾」のイメージに最もふさわしい絵画はルノワールでしょうか。絵の持ち味が全体に土っぽいのが独特の味わいです。
「脾」は、体の中では食べ物を黙々と消化して栄養を淡々と各臓器に配ることが、大きな働きのひとつと言えましょう。
「脾」の病態のひとつとして、母性が強くなりすぎて「湿」を帯びてしまうことが挙げられます。消化器が湿り気を帯びると働きが弱くなるため、胃腸はある程度乾燥させる必要があります。それに関わる生薬は「茯苓(ぶくりょう)」と「半夏(はんげ)」です。
茯苓は全身に効果が出ます。一方、半夏は脾胃にしか働きませんが、気を降ろす作用を持っているのが特徴です。
「脾」のもう一つの病態として、黙って裏方の役割を果たすことができず、つい口を出してしまいたくなり、イライラが募るということが生じ得ます。そのイライラに効果のある生薬としては竜眼肉が挙げられます。竜眼肉は心と脾に効果があるようです。ナルホド。
「脾」の病態が何となく掴めましたでしょうか?
次週はいよいよ最後の「肺」に環する話題についてお話します。
体も社会も宇宙も、各要素相互のバランスで成り立っているという認識が大切でしょう。五行もそのうちの一つの考え方と言えます。
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2008年12月14日
五行の解説6(保存版)~少し脱線します
10月25日に受講した「次のステップを目指す中医学講座」のノートから内容をご紹介しています。講義は下谷武志先生。文責は陣内です。
ですが、今日は少し脱線してみましょう。
五行説の基本は木火土金水(もっかどこんすい)の順番で物事が生じるという、世の中の原理を表しています。木から火が生まれ、火で燃えて灰→土になり、土の中に金属が生まれ、金が鉱脈となり水が生じ、水は木を育てる、という輪廻の思想です。
さて。五行に関してSさんからメールをいただいています。
> たとえば火⇒土の方向だけを見ても、木から離れた葉を、微生物が水の助
> けを借りて分解して土が生まれる、という流れがあります。それに灰は土
> への一時的な栄養にはなるでしょうが、燃やす火の性質は、土を生み出す
> ものとは思えません。
なるほど。灰を土と解釈することに、私も少し抵抗が出てきました。
ただ、木は肝ですけれど、葉は違うと思います。葉は最終的な形ですし、呼吸もします。朽ちていく前の段階ととらえると「肺金」に相当するのではないかと思います。でもすると、金⇒土になりますね。
> 金⇒水はどう考えたらいいのかさえ解らないです。
確かに金⇒土だと、朽ちたものが土に変わるので、自然な感じがします。金⇒水の説明はいつも苦しいと感じます。何事も水から始まるという原理は、地球全体を支配している感じはしますが、宇宙全体を統括するシステムではないのかもしれません。だって宇宙の始まりが水とは(分からないけれど)。だからどこか不自然さが残るのかもしれません(この説明も苦しいかな?)
五行だけで、いろいろ考えられて面白いですね。
体も社会も宇宙も、複数要素の相互バランスで成り立っているのでしょう。その一つの考え方として五行説も勉強された方が良いですヨ。このシリーズではそのお手伝いをしております。来週は脾の解説に戻ります。
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2008年12月07日