ストレスに対応する生薬~「釣藤鈎」「天麻」「柴胡」

 私の大好きな漢方薬の講演に行ってきました。そこではいろいろな漢方薬の処方解説をして下さいます。今回は私には思い出深い処方である、七物降下湯の話をします。

 この処方ですが「しちもつこうかとう」と読みます。「虚弱な高血圧の人に使用する」とあります。そんな人がいるのかな?と正直思います。・・・と思って別の本を見たら、最低血圧の高い人、とありました。少し普通の高血圧治療とは異なるようです。

 生薬の組み合わせ上、血が不足している人に使われないとおかしい処方ですし、ストレスによる障害に効果的である釣藤鈎(ちょうとうこう)という生薬が含まれているのが特徴です。

 つまり、ストレスがあるのに、血が不足していて、そのストレスのエネルギーが抑えられず、いろんな症状が一気に出てしまう、つまり「肝陽化風」の状態の人に使うのが良いと私は考えたのでした。

 私が初めてこの処方を使用した患者さんは、実は低血圧の患者さんでしたが、思い切って処方してみたところ(結構勇気が要りました)劇的に効果が出ました。やはり生薬をひとつひとつ考察して漢方薬を使うことが重要なのだと改めて感じたものです。

 「肝陽化風」ストレスによる症状の抑えが効かず、急な症状が出るということですが、最近こういう患者さんが増加していると思います。

 ストレスに対応する生薬としては「釣藤鈎」「天麻」「柴胡」が挙げられます。私の処方する漢方薬にもこの3つの生薬はよく出てきます。ストレス社会の影響なのかしら・・。

 あと、この処方は日本で使われている処方の中で最も新しく、日本で60年前に作られた処方とのことです。ところが、中国では既にその情報と使用経験を元に、ひとつ生薬を加えて「八物降下湯」という処方が既に一般的になっていると聞きました。中国はそういうところが柔軟ですごいです。

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2008年09月07日

気候と病気の関係について~難聴、めまいなど

 東京は週末に大変な豪雨でした。でも何より驚いたのは、今まで経験したことのないひどい雷です。夜中ずっとゴロゴロと鳴っていましたよ。空にエネルギーが相当溜まっているのだな、と感じました。

 小宇宙である人間がストレスで頭にエネルギーを溜めている状態と同じだと感じているのは私だけでしょうか?まあ、それはともかく・・

 そして梅雨のように湿気の多い日が続いていますが、そのためか難聴やめまいの患者さんが増えています。

 毎回毎回思うのですが、どうして湿気はこんなに人間の体に影響を与えるのでしょうか?

 よく気圧が低くなると調子が悪くなるということを聞きますが、確かに因果関係はあるかもしれませんけれど、月の引力の大きさを肌で感じることが少ないのに、気圧だけでそんなに症状がでるのかな?といつも疑問を感じます。

 月が体や心に与える影響が面白く読めますよ。

 私は気圧より強く体に働きかけている要因は湿度だと思います。元々ストレスなどで頭の気の循環が悪くなっているところに、強い湿度の変化があると、頭の水の循環が悪くなり、難聴やめまいが生じるのでしょう。

 少し見落としがちですが、風邪をひいてピークになると(だいたい喉が痛く、口が乾き始める時期です)、頭部の水の循環が悪くなりますので、同じように難聴やめまいが生じることがあります。

 注)この風邪と頭部の水の循環の話は私個人の経験則ですので、どこにも書いてありません。ネット上でも恐らく私のサイトしか出てきません(笑)。

 食事で水を排泄するならはと麦、小豆、黒豆、大豆、ソラマメ、冬瓜といったところでしょうか?

 辰巳洋著「薬膳の基本」(緑書房)より
 

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2008年08月31日

大野病院医療事件~判決は無罪に

 この裁判は帝王切開後に容態が急変して、出産4時間半後に産婦が死亡したという出来事に対して、医師に過失があったかなかったかを争うものでした。

 私が大変にショックを受けたのは、当時、全力を尽くしたが、結果的には亡くなった、ということに対して、業務上過失致死と医師法違反が問われたことです。

 私は以前に手術をたくさんしていた経験から、とうとう来るところまで来てしまった、という実感を持ちました。

 15年以上前には「手術が無事終わり、症状も良くなり、良かったね」という世界でした。しかしそれ以降は「手術はおわったし、症状も多少良いけれど、思ったほどではなかった」という評価を受けることが出てきました。

 私は癌と難しい耳の手術以外の全ての手術の指導医でしたが、同じ事をやっても感謝されるどころか、批判めいたことを言われるようになったのは大変にショックでした。このことは総合病院勤務を辞めたいと思った理由のひとつです。

 当時、横でよく産婦人科の先生たちが手術をやっていました。本当に大変な手術で、いつもたくさんの出血がありました。ひとつの命を維持するための血液が子宮に集中するのですから、出血は当たり前なのでしょう。

 リスクの高い出産になると100%母子健康、というわけにはいかない、というのが医師の感覚です。そういう手術を過酷な勤務(だろうと思います)の中でやるのですから大変です。医師と一般の方との感覚のズレもトラブルの原因になりそうです。あってはいけないことですが、あり得ることですので・・。

 自分の身内を同じように亡くしたら、こんなに冷静に語れないかもしれません。しかし今回の事件は刑事事件ではなかったでしょう。真実の追求は成されるべきですが、方法にはルールが必要でしょう。

 事件の詳細はまだ情報が完全に正確ではないようですが、概要が分かるサイトはこれでしょうか。⇒ウィキペディア「福島県立大野病院産科医逮捕事件」

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2008年08月24日

秋の気配を感じます~太陰暦や24節気と易

 秋の気配が漂い始めているのか、暑いけれど少し風が涼しいことがあります。真夏は8月!と思っている人もいらっしゃるかもしれませんが、立秋は8月7日でしたよね。今の暑さは暦の上では残暑です。

 易の世界でも、8月は陽気の中に陰の気が段々差し込んでくる時期であるとされており、太陽暦よりも太陰暦や24節気の方が世の中の様子をよく表していると感じます。

 季節感を表す言葉にも注目して生きていこうと思っています。

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2008年08月17日

面白い気象データを集めたHPを発見!

 今年の夏の暑さは格別だと思っておりましたが、やはり8月になり平年気温を上回る日が全国的に続いているようです。この桜前線研究所のHPはなかなか面白い気象データを集めていますね。

 例えば東京都水道局の水系別貯水量推移というHPにもリンクが貼られていて、興味深いです。

 気が早いですが、紅葉の見ごろについて詳しく見てしまいました(笑)。

2008年08月10日

新健康管理法~あなたは虚?それとも実?

 今日も東洋医学の内容ですが、今まであまり重要視してこなかった内容について書いてみます。その内容とは「虚」と「実」です。

 私のイメージでは「虚」はしわしわの空気の抜けた風船、「実」はパンパンに膨らんだ風船です。体内にモノを取り込む必要がある人は「虚」、体内のモノを捨てる必要がある人は「実」、とも教えられてきました。

 「虚」の人には体に栄養が溜まるように、「実」の人には体から何かが排泄されるように薬を使うのが理想です。漢方薬ではそのあたりを細かく考えて処方します。

 こんなに重要な、しかも正反対の「虚」と「実」ですが、なかなか見分けるのが難しいのです。強そうに見えて弱い、弱そうに見えて強いということはよくあることなのです。

 私がとある講座を受講したときに、これはよい!と思った見分け方があります。それは以下の2点です。
 ・ごはんを抜いても大丈夫か?
 ・早食いか、食べるのが遅いか?

 ごはんを抜いても大丈夫なのが「実」、抜けないのは「虚」。そして、早食いは「実」、食べるのが遅いのが「虚」ということです。

 身の回りで考えてみてください。私は大きく納得しました。

 逆に考えて見ますと、「虚」と「実」とは、消化吸収能力と、気の充実度、そして排泄能力の総合力のようなものだと考えるようになりました。

 そして普段からこういう自分の体質は気にかけるべきだと思います。半分は「虚」、半分は「実」の人ですから、全員の体のために良いサプリメントがあるとは思えないと私は考えるのです。

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2008年08月03日

夏の鼻出血の要因について~乾燥とのぼせ

 真夏の診察の毎日となりました。

 最近、鼻出血の患者さんがにわかに増えてきました。この原因について考えてみましょう。

 私は季節性のある鼻出血は、鼻内の乾燥が最も大きな要因だと思います。この夏は暑さが厳しいですから、エアコンをつけたまま寝ている方も少なくないでしょう。これが乾燥の一因であろうと思います。

 では逆に、汗をだらだらかきながら寝ているとどうなるのか?

 これもやはり問題で、よく寝られないことからのぼせが生じやすくなります。寝ることは体の水分を養うことにつながるのです。よく経験するのは十分に寝られた次の日は肌がスベスベになる現象です。体の水分はのぼせを抑える効果がありますので、寝られないことは鼻出血につながります。

 この汗によって脱水ということも考えられますが、鼻内が乾くほど汗を失う人は、暑いところで寝ている人よりも、炎天下で運動を定期的にする人のように感じます。運動している人は慢性的な軽い脱水になっている場合もあるように思います。

 もともと夏は陽気、つまりエネルギーが強く降り注ぎ、体の中のエネルギーが首から上に集中しやすくなります。これものぼせを生じる一因であり鼻出血の原因となるでしょう。

 乾燥とそれに伴うのぼせが原因という結論です。実は耳の痒みが強くなる人も夏に増えるのですが、これも同じような理由であると思われます。これにどう対処すべきか、みなさん考えてみてくださいね。

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2008年07月26日

コレステロールを悪玉にしない赤ワインの話

 硬い話になりますが、動脈硬化に関する講演を聴いて参りました。赤ワインが動脈硬化に有効であるという「赤ワイン健康法」(ごま書房1995年)をお書きになっている近藤和雄教授のお話でした。

 まさに私が学んだ内容がズバリこのサイトに出ておりましたのでご参考まで。

 コレステロールの値はどのくらいが適正なのかということは、私は大きな問題と以前から注目しています。コレステロールが下がると血管が詰まり難くなるけれど、癌の発症率が上がるというデータもあるということをご紹介したことがあります。

 しかし、逆に癌がカロリーを消費してコレステロールが下がっているだけではないか?と説明を受けたときに、真実が何かがさっぱり分からなくなりました。これについてはまだいろいろな角度から検証する必要がありそうです。

 近藤先生によると、極端でなければコレステロール値がかなり下がっても、余ったコレステロールは血管外に染み出して行くとの事ですので、少々値が下がっても問題ないはず、とのことです。ナルホド。

 血管外に出たコレステロールは酸化されて所謂「悪玉」コレステロールになるとのことですので、通常のコレステロール値の私の血管の外では、すでに悪玉コレステロールが作られているということですね。・・ん?まてよ?

 血管外コレステロールを酸化させない抗酸化力、つまり悪玉にしないという体質を作ることで何とかなるかもしれません。抗酸化力はアンチエイジングにご興味のある方は聞いたことのある言葉かもしれませんが、もっと重要なものかもしれません。このひとつの方法として赤ワインのポリフェノールがあるわけですが、お茶のカテキンなども同様の効果があるとされています。

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2008年07月20日

いきなり風邪がこじれてしまう人の話

 風邪を毎日診察して、自分の見方はできているつもりなのですが、まだまだ不完全なのか、どこか現実とそぐわない部分があるものです。

 風邪が体の中まで侵入したときに、体にそれに対抗する熱を生む力がなく、寒気がしたまま、状態が停止してしまうことがあります。私はこの状態を「こじれた風邪」と表現しています。

 この状態は風邪の侵入を許してから、免疫がはたらきながらもズルズルと体の中まで風邪が侵入して、とうとう5日前後でそういう状態になってしまうのだと思っていました。

 ところが、風邪をひいていきなりこういう状態になる人が少なくないことに気づきました。サッカーで例えると分かりやすいでしょうか。相手が攻めてくるときに本来は中盤以前にパスカットしないといけないのに、味方は全員がゴールライン付近だけにいて中盤は無抵抗にやられてしまう、という防戦一方の状態ですね。

 すると風邪をひいたばかりなのに、すぐにこじれた状態になります。実は、傷寒論(中国の風邪の古典です)にもそのように記載があるので、ナルホドと思ったわけです。

 『病発熱有りて悪寒する者は、陽に発すなり。熱無くして悪寒する者は陰に発すなり。』

 陽とはここでは体表のことですね。熱と悪寒がある人は病気が体表から始まっている。一方で熱無く悪寒がある人は、病が体の中に直接入って始まっている。つまり私の言う「こじれた風邪」にすぐになってしまうわけです。

 これは、正気、つまり体表の免疫が邪気に圧倒されてしまっている状態ですから、具体的には、極度の疲れ、ひどいストレス、邪気の強い場所での滞在などが原因になるのではないでしょうか?

 ずっとコンピュータの前で仕事をしている人は本当に要注意だと思います。疲れるし、ストレスあるでしょうし、コンピュータには邪気もあるでしょう。私も診察が途切れたときには、机から意識して離れるようにしていますよ。

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2008年07月12日

ストレスマネジメントという健康診断法

 ストレスは健康に大きな影響を及ぼすのに、健康診断では肉体的な問題しか取り上げられません。そこでわがクリニックでは職員を対象にこのテストを行ってみました。

 ストレスマネジメント

 一人3000円(だったかな?)ですけれど、ストレス耐性に対する実際のストレス量の割合を知ることができました。ストレスが多すぎるのはもちろん問題ですが、職場での仕事の成功を考えると、適度なストレスも必要であることが分かりましたよ。

 みなさんの健康診断の中に取り入れてみては如何でしょうか?(注:個人が参加できるかどうかは分かりません。悪しからず。)

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2008年07月12日