新型インフルエンザ対策で考えさせられたこと

 新型インフルエンザ対策といっても、まだ大したことはしておりません。職員に映画「感染列島」を見ておくように言ったのと、マスクの見積もりをしているくらいです。

 しかし、興味を持って情報を集めているうちに面白いことが分かってきました。一番見落としていたことは、今のH5N1型鳥インフルエンザは人への感染力がとても弱いということです。

 感染力が強いという報道もされているようですが、人に対して2003年から約400人の発症ですので、とても感染力が弱いといえます。全ての国がきちんと家禽処理をしていれば、もうH5N1型鳥インフルエンザは収束しいていたという人もいます。新型インフルエンザとしてN5H1型が流行する可能性は低いという専門家も少なくないようです。

 とはいっても、何型かの新型インフルエンザが出てくることには異論のないところのようです。最大の死亡原因が細菌性肺炎であることから、対策として一番必要なもの(ところ)は、重症の患者さんの入院先、レスピレーター、病院マンパワーを削がないように、開業医が踏みとどまることのようです。

 まだまだ新しい情報が出てくるでしょうから、その都度情報を出していこうと思っています。

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2009年02月15日

花粉症初期療法について

 花粉症の患者さんがクリニックを賑わせ始めました。

 先日、ある研究会で面白い話が聞けました。

 花粉症治療の満足度は、初期療法の患者さんでも、症状がでてから投薬した患者さんでも変わらなかったのです。

 びっくりしましたが、症状がでてから行う投薬は強いものになるので、症状を抑えることに関してはあまり初期療法のときとは大差ないのだ、という考察でした。

 まあ弱い薬で満足度が高い、初期療法の意義は確かにありますけれど、ね。

(続く)

 花粉症の初期療法の危うさ、というと厳しすぎますでしょうか(笑)。

 別に現代医学に挑戦を挑むつもりはありません。しかし冷静に考えてみて、

 「どうするつもりなのかなあ」・・・と思うこともあるのです。

 患者さんによると、どこの医院でも初期療法を勧められるらしく、中には「何でもっと早く来ないのか!」と怒られたり、丁寧なクリニックはDMで「初期療法の季節ですよ~」と教えてくれたりするそうです。ふーん。。。

 うちのクリニックでは・・・何もしません(笑)。

 患者さんにも考えや都合があると思いますから、特に強く初期療法を勧めるようなことはしません。かといって否定もしません。選択した薬の内容から「もう飲んだ方が良いですよ」と言ってあげることはあります。

 確かに、早くから薬を飲んだ方が症状を十分に抑えられます。だからそれはそれで良いのです。

 ただ2つの問題点を私は感じています。何だと思います?

 一つ目は、薬により鼻内が乾燥して、鼻内の過敏性が増すのではないか?つまり花粉に対しても敏感さがかえって増してしまうのではないか?という恐れを感じていることです。

 本当に花粉症自体が悪くなることはないのかなあ・・・?今のところ初期療法で、花粉症が悪化したというデータはありませんけれどね。やや心配。

 二つ目。これは最近気がついたことです。自転車通勤をするようになったとか、ヨーガをするようになって体質が変わったとおっしゃる患者さんも少なからずいます。その方たちはいつ初期療法を止めるのでしょう?

 花粉に反応しない体質が変わったかどうかは、薬を飲まないことでしか判断できないのではないでしょうか?花粉症の症状が軽くても、初期療法をきちっとやっている方の場合、初期療法が良かったのか、自転車やヨーガが良かったのか、初期療法を止めてみない限り分からないはずです。

 そういう理由で私は初期療法については、希望者のみやっていただいています。誰にも勧めていませんが、初期療法の希望者は少なくないですね。

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2009年02月08日

インフルエンザ~新型インフルエンザを考える

 耳鼻科の講習会でもインフルエンザのことが大きく取り上げられています。その中で、新型インフルエンザをどのように考えるか?ということがありました。

 その中で私が最も大切だと感じたのは、social distancingという考え方です。つまり社会が、人と人との距離を作るということです。

 このサイトが分かりやすいです

 スペイン風邪の当時、フィラデルフィアは人口10万人あたり13000人の死者が出ました。ところが感染者が確認されてから、劇場、サロン、教会、学校、図書館を閉鎖して、スポーツ大会を延期したピッツバーグでは7000人の死者に、さらに全ての社会的な集まりを制限したセントルイスでは3000人の死者に留まったのです。

 人と人が触れることで広がる病気です。しかも1か月、長くて2か月の流行です。薬などの医療だけでは感染抑制には限界があります。その間の混乱を避けるためにも、不便を我慢して最小限の流通を残して生きるよう、各自が、各地域が、各団体がシミュレーションすることが必要でしょう。

 そして、現実には急にそういうことが起こるわけですから、自治体が各団体にそういう呼びかけをして、協力を求めていくことが必要なのではないでしょうか?

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2009年02月01日

インフルエンザ~全国で流行しているようです

 今年のインフルエンザは軽症が多いと思っていたら、隣の仲良しの内科の先生も同じご意見でした。こういうときクリニックビルは情報には事欠きませんので助かります。

 先週の前半は、うちの耳鼻科でも1日3~4件のインフルエンザが確認され、忙しいのもそうですが、感染の拡大を防ぐのに苦労しました。主には漏れなくインフルエンザの患者さんを見つけること、そして、患者さんの指導、そしてアルコール消毒です。

 抗インフルエンザ薬のタミフルなども今年はぐっと使用量が減っています。症状がやや軽いため、処方しなくても対症療法のみで良いかな?と考えることが多くなっています。

 少ないとはいえリスクを冒して処方する必要はないということ、そしてあまりに抗ウイルス薬を使うといざというときに薬が効かなくなる(ウイルスの薬剤耐性と言います)のを恐れていること、感染したご本人に確実な免疫を持っていただいて再感染しないようにしていただきたいこと、以上の点から軽症者には抗インフルエンザ薬の使用を控えています。

 感染拡大を最大限防ぐという意味では薬剤投与も意味があるかもしれませんが、現状ではもう既に感染はかなり広がっており、局所の感染拡大阻止だけにはもうあまり意味がないと思っています。

 私は以下の情報サイトを利用しています。

 東京都のインフルエンザ情報

 全国のインフルエンザ情報

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2009年01月24日

インフルエンザ~ちょっと興味深い話題

 先週は軽症のインフルエンザを脈で見つけ出す作業についてお話ししました。やはりこの方法は有効で、あまり熱のないインフルエンザも見つけることができています。ただ、違うことも少なくないのと、本当に全て見つけているのか?それが心配ではあります。

 さて今日は、インフルエンザのちょっと興味深いな、と思ったことをお話します。インフルエンザワクチンの話です。

 インフルエンザワクチンを接種されている方も多いと思います。私もかなりの方に接種をしてきました。そしてこの1週間は1日に2人くらいずつのインフルエンザ患者さんを診察してきました。

 でも正直なところ、インフルエンザワクチンがどのくらいの効果を挙げているのかよく分かりません。そして今日はとうとう2回接種しているお子さんにも発症を確認しました。やはり少し軽症でしたけれど。

 常識的には感染を防御するのは粘膜の免疫が主体だと思います。その粘膜のインフルエンザに対する免疫抗体価が、ワクチンによってどーんと上がるということはないということを本日の講演会で聞きました。

 もともと血液中の抗体価が低い、もしかしたら重症になる可能性のある人たちの抗体価は通常の値くらいにはなるようですので、ワクチン接種によって死亡原因になるような重症肺炎などの危険はかなり少なくなると言えるでしょう。

 そういうことですので、ワクチン接種をしたからインフルエンザにかからない、ということにはなりません。もしかすると軽症過ぎて、普通の風邪のように扱われているだけかもしれません。このことが逆に感染を広げる原因にならないと良いのですが。

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2009年01月11日

高病原性鳥インフルエンザの臨床~インドネシアから

 高病原性鳥インフルエンザを数多く診察したというインドネシアの病院の医師が東京に講演で来ていました。

 致死率がとても高いのに驚きます。早期発見と早期治療が重要であるのに、インドネシアでは、インフルエンザなどの感染症専門の病院でないとインフルエンザ治療薬を使えないという実情があるようです。

 日本では良くも悪しくも、インフルエンザ治療薬をたくさん使用してきた経験から、早期発見にもかなり神経をとがらせていますので、もしも人から人に伝染するようになったとしても、その経験が生きるのではないかと感じました。

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2009年01月11日

医者の健康法~新春エッセイから

 とある医学雑誌の新春エッセイを読みました。そこには各分野の医学会長の自分の健康法が紹介されていました。

 小児科の学会長は数々の読書と小旅行をするなど、好きなことをすることくらいしか健康法と言えるものはないとのことです。好きなことをして健康を守るとはいかにも小児科医らしいかなと思いました。

 糖尿病学会長は自分の学会講演までにメタボ基準をクリアしようと、食事を抑えて運動して基準までもう少しのところにきたところで体調を崩してしまい、結局減量がうまくいかなかったようです(笑)。

 外科の学会長は人の生き死にが、なかなか予想通りにならない経験から、人の寿命は定められているというご意見のようです。ストレスを溜めないようには気を遣っておられたようですが、外科医では如何ともし難いとのことでした。

 泌尿器科学会長は、バランスのとれた食生活と睡眠、定期健診、読書と水泳ということです。ご本人の達成度は高いようですが、何だか健康法に関する教科書を読んでいるような感じですね。良いけれど、つまらないです(笑)。

 産婦人科学会長は、料理(といっても、パスタとお好み焼きとカレーだそうだが)と散歩とのこと。代々木公園から明治神宮、渋谷までの散歩は良さそうです。

 わが耳鼻科の学会長は減量、禁煙、ウォーキングとありきたりでした。まあこれで良いのかもしれませんけれど。

 精神科の学会長は気分転換だったり、東洋医学会長は漢方と鍼灸だったりとその道の中でいろいろ考えられているようです。

 意外性がないところが目をひいたので、ここで紹介してみました。自分ならどう書くかなあ。脈でバランスを常にモニターして、呼吸法で気を増幅して、今年から気功にもう少し真面目に取り組むとか、瞑想を始めたとか、いろいろ書くことがあるけどなあ(笑)。

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2009年01月04日

インフルエンザの診察~ワクチンによる影響

 みなさんはインフルエンザワクチンを接種されましたか?

 ワクチンを接種することに否定的な一部のご意見もありますが、現状ではワクチンを接種するのが、最もインフルエンザの流行を抑える有効な手段と言えます。

 しかし毎年のことですが、インフルエンザワクチンを接種してもインフルエンザにかかってしまう人はいるんですよね。困ったことにそういう人たちは症状が軽くて、とても見分けるのに苦労します。

 見逃してしまう機会が多くなり、かえって流行が広がったりして・・(苦笑)。

 そういう「軽症インフルエンザ」をどのように見つけるか、それがインフルエンザの診察のポイントでもあります。

 毎年言っている気がしますが、そういう時には脈の診察がとても有用です。「寸口(すんこう)の脈」という脈をみなさん覚えておきましょう。風邪の寒気がしてから1週間、大きく変化する脈ですから、面白いです。このサイトの『図7 六部定位の脈診』の右寸と書いてある位置の脈です。

 ただの風邪のときには無くて、インフルエンザのときにあるものと言えば、
 1.弱くない寒気が3日以上続く
 2.寒気と喉の痛みが同時に出る
 3.調子が悪くなって2日以上経つのに、浮脈から沈脈に向かう気配がない

 風邪の患者さん全員にインフルエンザ検査をするのは医療費の無駄遣いですので、1と2で疑いをつけ、3でより確信を得たら、インフルエンザ検査で確定するというのが良いのではないかと考えます。

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2009年01月04日

五行の解説7(保存版)~脾の病態について

 10月25日に受講した「次のステップを目指す中医学講座」のノートから内容をご紹介しています。講義は下谷武志先生。文責は陣内です。

 五行説の基本は木火土金水(もっかどこんすい)の順番で物事が生じるという、世の中の原理を表しています。木から火が生まれ、火で燃えて灰→土になり、土の中に金属が生まれ、金が鉱脈となり水が生じ、水は木を育てる、という輪廻の思想です。

 前々回私が学校の用務員さんを「脾」的と感じたと書きました。居なくなると誰もが困るけれど、誰もが主役とは考えていない「脾」。母性からくる「無償の愛」を皆に与えているようなものかもしれません。

 「脾」のイメージに最もふさわしい絵画はルノワールでしょうか。絵の持ち味が全体に土っぽいのが独特の味わいです。

 「脾」は、体の中では食べ物を黙々と消化して栄養を淡々と各臓器に配ることが、大きな働きのひとつと言えましょう。

 「脾」の病態のひとつとして、母性が強くなりすぎて「湿」を帯びてしまうことが挙げられます。消化器が湿り気を帯びると働きが弱くなるため、胃腸はある程度乾燥させる必要があります。それに関わる生薬は「茯苓(ぶくりょう)」と「半夏(はんげ)」です。

 茯苓は全身に効果が出ます。一方、半夏は脾胃にしか働きませんが、気を降ろす作用を持っているのが特徴です。

 「脾」のもう一つの病態として、黙って裏方の役割を果たすことができず、つい口を出してしまいたくなり、イライラが募るということが生じ得ます。そのイライラに効果のある生薬としては竜眼肉が挙げられます。竜眼肉は心と脾に効果があるようです。ナルホド。

 「脾」の病態が何となく掴めましたでしょうか?

 次週はいよいよ最後の「肺」に環する話題についてお話します。

 体も社会も宇宙も、各要素相互のバランスで成り立っているという認識が大切でしょう。五行もそのうちの一つの考え方と言えます。

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2008年12月14日

五行の解説5(保存版)~脾について1

 10月25日に受講した「次のステップを目指す中医学講座」のノートから内容をご紹介しています。講義は下谷武志先生。文責は陣内です。

 五行説の基本は木火土金水(もっかどこんすい)の順番で物事が生じるという、世の中の原理を表しています。木から火が生まれ、火で燃えて灰→土になり、土の中に金属が生まれ、金が鉱脈となり水が生じ、水は木を育てる、という輪廻の思想です。

 一日の朝昼晩も、人間の一生も、考えてみれば、みんな五行で例えることができます。私が今までで最も「脾」的だなあ、と感じたのは、学校の用務員さんたちです。

 学校の役者さんたちは、生徒や先生、保護者です。用務員さんのことは、みんながその存在を知っていますし、居なくなってしまうと困ることもみんなが理解しています。

 しかし卒業した生徒とその保護者、退職した先生たちが用務員さんと、いつまでも親交が続いているという姿を見たことがありません。学校のことは誰よりも知っていて、役者のために舞台作りに専念するのです。これが「脾」の姿です。

 母性と言えるかもしれません。しかし子を溺愛しているのでもないですし、子の助けを仰ぐわけでもないのです。言わば「無償の愛」と言えるかもしれません。

 「脾」は消化器による消化吸収が主な役割ですので、体のエネルギーを縁の下の力持ちのように支えていることになります。みなさんが、暴飲暴食をしたときでも、脾はだまってそれに耐え、黙々と仕事をしているのです。

 下谷先生は楽曲として、サザンオールスターズの「愛の言霊」を挙げていらっしゃったのですが、敢えて私は「心から花束を」を選択しました。

 この詩の背後にある両親の姿は縁の下の力持ち、そしてみんなに訴える桑田圭祐の姿も、聴衆を優しく包む、そういう歌声と態度に見えました。

 次週は「脾」の病態に関連する事項についてお話します。

 体も社会も宇宙も、五行の(?)相互のバランスで成り立っている(だろう)ということです。アーユルベーダですと、空、風、火、水、土の五大要素ということになりますが、要は複数要素の相互バランスが重要という認識が大切でしょう。

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2008年11月29日