五行の解説5(保存版)~脾について1

 10月25日に受講した「次のステップを目指す中医学講座」のノートから内容をご紹介しています。講義は下谷武志先生。文責は陣内です。

 五行説の基本は木火土金水(もっかどこんすい)の順番で物事が生じるという、世の中の原理を表しています。木から火が生まれ、火で燃えて灰→土になり、土の中に金属が生まれ、金が鉱脈となり水が生じ、水は木を育てる、という輪廻の思想です。

 一日の朝昼晩も、人間の一生も、考えてみれば、みんな五行で例えることができます。私が今までで最も「脾」的だなあ、と感じたのは、学校の用務員さんたちです。

 学校の役者さんたちは、生徒や先生、保護者です。用務員さんのことは、みんながその存在を知っていますし、居なくなってしまうと困ることもみんなが理解しています。

 しかし卒業した生徒とその保護者、退職した先生たちが用務員さんと、いつまでも親交が続いているという姿を見たことがありません。学校のことは誰よりも知っていて、役者のために舞台作りに専念するのです。これが「脾」の姿です。

 母性と言えるかもしれません。しかし子を溺愛しているのでもないですし、子の助けを仰ぐわけでもないのです。言わば「無償の愛」と言えるかもしれません。

 「脾」は消化器による消化吸収が主な役割ですので、体のエネルギーを縁の下の力持ちのように支えていることになります。みなさんが、暴飲暴食をしたときでも、脾はだまってそれに耐え、黙々と仕事をしているのです。

 下谷先生は楽曲として、サザンオールスターズの「愛の言霊」を挙げていらっしゃったのですが、敢えて私は「心から花束を」を選択しました。

 この詩の背後にある両親の姿は縁の下の力持ち、そしてみんなに訴える桑田圭祐の姿も、聴衆を優しく包む、そういう歌声と態度に見えました。

 次週は「脾」の病態に関連する事項についてお話します。

 体も社会も宇宙も、五行の(?)相互のバランスで成り立っている(だろう)ということです。アーユルベーダですと、空、風、火、水、土の五大要素ということになりますが、要は複数要素の相互バランスが重要という認識が大切でしょう。

メルマガ「実践ロハス生活!これであなたも医者いらず」より
メルマガ英語版はこちらです。

2008年11月29日

五行の解説4(保存版)~心について2

 10月25日に受講した「次のステップを目指す中医学講座」のノートから内容をご紹介しています。講義は下谷武志先生。文責は陣内です。

 五行説の基本は木火土金水(もっかどこんすい)の順番で物事が生じるという、世の中の原理を表しています。木から火が生まれ、火で燃えて灰→土になり、土の中に金属が生まれ、金が鉱脈となり水が生じ、水は木を育てる、という輪廻の思想です。

 一日の朝昼晩も、人間の一生も、考えてみれば、みんな五行で例えることができます。「心」が例えられる夏の充実しきった状態を、シドニーオリンピックのときの高橋尚子選手に例えました。講義ではマティスの絵が「心」と考察されていました。

 さて、心(心火と表現します)の関係する病態とはどんな状態でしょうか?

 まず、消耗してしまう状態が挙げられます。

 心の状態は喜びの強い状態なのです。自分を出し切っていると楽しくて仕方がないのです。しかし最終的には限界を定めてあげないといけません。絶頂だけれど、引退は意識しないといけないということでしょう。

 限界を見ずにさらに続けていると、いずれ消耗してきます。この状態を救う生薬は人参です。消耗した人を救うためには人参が含まれている漢方薬を意識しましょう。人参は気を補う代表的な生薬なのです。

 次にあげられる病態は、自分の喜びが十分に表現できず、願望が頓挫して、熱が内にこもる状態が挙げられます。これにぴったりの楽曲を見つけました。

 夢想花(円広志)
 「素直な気持ちをあなたに、伝えるすべを知っていたなら・・」必死に自分の中の熱を「とんでとんで・・」と昇華しようとしています。

 この熱が自分で昇華(消化でも消火でも合っているような?)できる人はよいのですが、それができない人のために用意された生薬は黄連です。清瀉心熱、すなわち、心の熱を冷まし捨てるための生薬と言えるでしょう。このサイトが参考になるかも知れません。

 続きは来週。

 大切なことは、体も社会も宇宙も、五行の相互のバランスで成り立っている(だろう)ということです。アーユルベーダですと、空、風、火、水、土の五大要素ということになりますが、これは切り口の相違だけだろうと私は考えます。要は複数要素の相互バランスであるという認識が大切でしょう。

 だいたい「心」のイメージを持っていただけましたでしょうか?

 次週は「脾」に関連する事項についてお話します。

メルマガ「実践ロハス生活!これであなたも医者いらず」より
メルマガ英語版はこちらです。

2008年11月23日

五行の解説3(保存版(笑))~心について1

 10月25日に受講した「次のステップを目指す中医学講座」のノートから内容をご紹介しています。講義は下谷武志先生。文責は陣内です。あまりに一度の内容が多すぎるので、今回から一臓器あたり2回の解説としますね。

 五行説は木火土金水(もっかどこんすい)の順番で生じるという、世の中の原理を表しています。木から火が生まれ、火で燃えて灰→土になり、土の中に金属が生まれ、金が鉱脈となり水が生じ、水は木を育てる、という輪廻の思想です。

 一日の朝昼晩も、人間の一生も、考えてみれば、みんな五行で例えることができます。「心」が例えられる夏の充実しきった状態は、シドニーオリンピックのときの高橋尚子選手に例えられます。完全な充実ぶりなので、気負いが必要ない。優勝すべくして優勝。しかし、あとには下り坂が待っていて、引退を意識せざるを得ない状況に囲まれます。盛者必衰とでも言えましょうか。

 この絶頂期の飾らない状態を描く画家として、下谷先生はマティスを挙げておられました。確かに気負いのない華やかさが、いかにも「心」を感じさせます。
2004年のマティス展(国立西洋美術館)行きたかったな)

 楽曲としては「venus」が取り上げられました。

 映像でも火が出てきますし、燃えるようなエネルギーを感じます。少し力が入りすぎかなとも思います。

 どちらかというと、私は少し力の抜けたマティスの絵のようなイメージの方が「心」としてしっくりきます。

 続きはまた来週!

2008年11月15日

五行の解説2(保存版(笑))~肝について

 10月25日に受講した「次のステップを目指す中医学講座」のノートから内容をご紹介しています。

 五行説は木火土金水(もっかどこんすい)の順番で生じるという、世の中の原理を表しています。木から火が生まれ、火で燃えて灰→土になり、土の中に金属が生まれ、金が鉱脈となり水が生じ、水は木を育てる、という輪廻の思想です。

 一日の朝昼晩も、人間の一生も、考えてみれば、みんな五行で例えることができます。「肝」が例えられる春の伸び行く木々の様子は、青年期の少年少女が成長する様であり、二軍から初めて一軍登録されたプロ野球選手の様であり、健全に急成長する新興企業のようです。

 このドラクロワの「民衆を率いる自由の女神」を見て下さい。

 民衆の死してなお自由を勝ち取ろうという力強さ、勢いは「肝」そのものです。そしてこの「肝」は実は、その勢いを止められると、そのエネルギーを自分で処理することができません。

 浜田省吾「MONEY」 歌詞 楽曲

 その止められたエネルギーは熱に変化します。自分の行為を咎められた若者が怒るのは、その熱に相当します。その熱をこの楽曲で感じることができます。金のない現実に昇華させられない自分の欲求ということでしょう。

 自分の勢いをせき止める、つまりこれはストレスの存在を意味します。ストレスを「肝」は何とか処理しようとします(疎泄機能と言います)。しかし、過度のストレスは最終的には「肝」を傷めてしまいます。最近、ストレスの影響が体に感じられる人がとても多いです。

 健康を守るためには、どのくらいストレスが体に影響を与えているか。これを病気が発症する前に知ることが大切です。私は脈が弦のようにピーンと張っていると、将来ストレスによる影響が体に出そうだと判断しています。

 さて、「肝」の本質の話に戻ります。がむしゃらに伸びていく「肝」ですが、伸びていく中で自我の目覚めが生じ、他者との関係が意識されるようになります。その中で最も嫌なものは権威、既成概念です。

 次週以後に出てきますが、既成概念は完成品としての「肺」を意味しています。「肺(金)」の力が強くなり過ぎると「肝(木)」の力は弱くなります。これを金克木と言います。木は金属に切られてしまう、と考えると分かりやすいですね。

 大切なことは、体も社会も宇宙も、五行の相互のバランスで成り立っているということです。アーユルベーダですと、空、風、火、水、土の五大要素ということになりますが、これは切り口の相違だけだろうと私は考えます。要は複数要素の相互バランスであるという認識が大切でしょう。

 だいたい「肝」のイメージを持っていただけましたでしょうか?

 次週は「心」についてお話します。

2008年11月08日

五行の解説1(保存版(笑))~腎について

 五行説は木火土金水(もっかどこんすい)の順番で生じるという、世の中の原理を表しています。木から火が生まれ、火で燃えて灰→土になり、土の中に金属が生まれ、金が鉱脈となり水が生じ、水は木を育てる、という輪廻の思想です。

 一日の朝昼晩も、人間の一生も、考えてみれば、みんな五行で例えることができます。「水」で表現される夜明けは、初めて光を見る人間の誕生のようです。そして引きこもりつつ少し表の光を見て歌う中島みゆきの楽曲も、闇を描く画家であるレンブラントも、みんな闇の中の光を表現していて、水の性質を持っていると言えます。この「水」の性質は体の器官では「腎」を示しています。

 私はこの説明を聞いた講義の最初の30分で、芸術にまで入り込んでいる五行は、間違いなく諸事万物の根本であると確信しました。

 たぶん中島みゆきの歌は、引きこもりの人には心地よく感じられるのではないでしょうか?(どうですか?)

 「腎」は腎臓と言ってしまうと、ただの一臓器ということになってしまいますが、東洋医学では「腎」=生命力であり、砕けて言うと、「腎」は体の強さを表していると言えましょう。

 私が時々メルマガで「腎虚」という言葉を使いますが、これは生命力の不足を意味しています。元々腎虚は、生まれつき虚弱な方の場合と老化で力がない場合がほとんどで、中年の方たちには縁のないものでしたが、最近は慢性疲労により「腎」が枯渇して、体力を失い、風邪をひき易いなどの症状を訴える人が多くなっています。

 「腎」のもつエネルギーは「腎精」と言いますが、これを誰もがたくさん持って生まれ、段々に消耗し、高齢者になると枯渇してくる。これが人の一生と「腎」の関係です。だから高齢者は皆、「腎虚」の傾向を持っています。

 あと余談ですが、生まれるときに、難産などのトラブルがあると、新生児が生まれるときに腎精を大量に消費してしまい、虚弱になりやすいのです。

 ちなみに腎の生命力を補う生薬は「附子(ぶし)」です。附子はトリカブトを無毒化したものを使います。手足を中心に体を温める作用が強いです。「腎」の熱が補われて温まるわけです。

 足の裏には「腎経」という経絡(ツボを結んだ線です)が走っています。足裏マッサージなるものが流行していますが、もしかすると腎経に効果があって生命力アップ!ということになっているのかもしれません。

 次週は「肝」についてお話します。

メルマガ「実践ロハス生活!これであなたも医者いらず」より
メルマガ英語版はこちらです。

2008年11月02日

自己鍛錬気功法について

 先日、日本気功科学研究所の仲里誠毅先生に香功(しゃんごん)を教えていただき、内養功(医療気功)のデモンストレーションを拝見する機会を得ました。

 日本気功科学研究所

 香功は脳活性化のための手順の決まった簡単な体の動きで、入門レベルに向いているということです。実際に私たちも行ってみましたが、音楽もありましたし、気分良く体が動かせました。

 この香功を仲里先生は「自己鍛錬による国民の健康づくり運動」と位置づけておられ、2005年までに約2万人に指導してきたとの事です。

 内養功は動きがもっと複雑で、バランスなども要求される、少し高度な動きが主体になっていました。これは国民運動と位置づけるのはムリなようです。

 仲里先生が特に強調されていたのは、深刻な医療財政から脱却するためには有効な国民運動が必要で、香功にはその可能性がある、ということでした。

 私は正論としてはかなり良い印象を持ちました。確かに10分強の適度な運動で高齢者向きとはいえ、軽い疲労感を覚えるような動きです。これが国民全体に広がれば、医療費抑制の効果も確かに出るように思います。音楽も良かったです。

 しかし現実には、その場限りの香功になっている人がほとんどなのではないかと思うのです。これは効果の即効性が実感できないというところにあるのだと思います。国民運動になるか、というと程遠い印象を受けました。

 どうしたら若い人が巻き込めるのかと考えますが、恐らく何かカッコイイ要素を加えるか、芸能人の間で香功が流行するなどの動きが必要なのではないかと思いました。

 即効性と見た目の良さ。どちらも私はあまり好きではありませんが、こういうものを意識して運動を広げていっていただきたいな、と思いました。

メルマガ「実践ロハス生活!これであなたも医者いらず」より
メルマガ英語版はこちらです。

2008年10月18日

難治性中耳炎の攻略について~十全大補湯で見えること

 鼻水について過去2回考察してきましたが、また耳鼻科ネタになりますが、中耳炎について考えてみたいと思います。

 中耳炎は鼻の奥にある菌が、耳と鼻を繋ぐ管(耳管といいます)を通じて、感染を耳に起こすために生じるとされています。

 私は西洋医学者でもありますので、この常識を否定するつもりはありません。確かに鼻の治療をしっかりすることで、中耳炎は確実に良くなります。

 ところがー。

 最近とても気になる現象があるのです。

 中耳炎が全然治らないという子どもたちに、十全大補湯という処方を選択すると、不思議なくらい治っていくのです(黒部市民病院の丸山裕美子先生に教わった方法です)。そしてよくよく見ると、今まで気づかなかったそういう子どもたちの共通項が浮かんできました。

 治りにくい中耳炎の子は、体の細い子、そして体格は良くてもやや水太り傾向の子であることが分かります。なるほど、十全大補湯を使いたくなるわけです。

 もしかしてこういう子どもたちに必要なのは抗生物質ではなく、体質を補正する薬ではないのだろうか?そんな考えが頭の中をよぎります。

 一方で西洋医学にも、少量長期使用することで良くなるという抗生物質の使い方が存在し、これも確かに効果があります。

 体を補う漢方処方、そして少量の抗生物質処方。どちらも同じような効果を感じるのですが、気のせいでしょうか?

 私は軽症であり、お子さんが飲んでくれるなら(結構飲んでくれます)漢方処方を、軽症とは言えない場合には漢方処方と少量の抗生物質を併用しています。

 たかが中耳炎と思われるかもしれませんが、いろんな考え方で攻めないと、攻略はできないのです。今日も知り合いの先生と再会し、「十全大補湯は効果あるよねー」と話をしましたよ。

 ご意見ご感想がございましたらlohas@jjclinic.jpまで!

メルマガ「実践ロハス生活!これであなたも医者いらず」より
メルマガ英語版はこちらです。

2008年10月05日

耳鼻科医らしく副鼻腔炎の話~運動し過ぎの問題

 私は耳鼻科医ですので、鼻水が止まらないという患者さんが来るわけです。

 だいたい、風邪であり、アレルギーであり、あとは副鼻腔炎なわけです。気になるのは、患者さんがすぐに「アレルギーですか??」と聞いてくることです。私からみると医師もすぐに「アレルギーですね」と断定するのも少し気にかかります。

 高齢者の話にしぼりますよ。いや、高齢者でないのにそういう人が多いのも少し気にはなっていますけれど・・・。

 体内の水は重力で下へ下へと集まりますが、生命の熱エネルギーでこの水を体の上にくみ上げていき、体内の水を均等に分散させているわけです。高齢者はこのエネルギーが不足してきますので、どうしても水が下半身に集まりやすく、足が冷え、トイレが近くなり、顔がほてるのです。

 プールでがんがん泳いでいるという初老(失礼!)がいらっしゃいました。最近は、高齢者も相当数の方がプールでかなり泳がれているようですね。毎日のように泳がれている方も少なくないのです。

 しかし水泳は運動としては激しいですから、体液の損失は少なくありません。その分、十分な休息を取るのであれば理想的なのですが、現実には泳いでいる方たちは筋骨隆々で健康に自信があり、休息も少なくなりがちです。

 すると、筋力アップで熱が生じているのに、体液が失われてその熱を冷ますことができないことになります。そうすると特に首からに熱がこもることになって、熱の逃げ道として鼻水が濃く出てくることになるのです。

 鼻水で熱を体外に逃がしている、という考え方は一般的ではありませんが、私が観察する限り、高齢者の鼻水のかなりの部分がこの鼻水だと思います。

 普通にしていても、のぼせたり、ほてったりする高齢者がいらっしゃるわけですが、過度な運動はそれを助長してしまう結果になります。休息とのバランスを取りながら運動をするようにしましょう。

 ご意見ご感想がございましたらlohas@jjclinic.jpまで!

メルマガ「実践ロハス生活!これであなたも医者いらず」より
メルマガ英語版はこちらです。

2008年09月20日

漢方薬の勉強を始めたい方へ

 漢方薬を勉強するのに何か良い本はないですか?ということをよく聞かれます。では漢方薬の勉強で何を知るのが早道なのでしょうか?それはそれぞれの生薬の働きを知ることだと思います。

 漢方薬は生薬の組み合わせからできています。例えばご存知「葛根湯」ですが、これは7つの生薬の組み合わせです。「桂枝(けいし)」「芍薬(しゃくやく)」「生姜(しょうきょう)」「大棗(たいそう)」「甘草(かんぞう)」「葛根(かっこん)」「麻黄(まおう)」の7つです。

 生姜はショウガ、大棗はナツメ、甘草は甘味料の原料ですが、いずれも胃腸障害の予防とか諸薬調和のための生薬です。葛根湯を特徴付けるのは麻黄、葛根、桂枝、芍薬ということになります。

 諸薬調和の三生薬と桂枝+芍薬で「桂枝湯」という風邪の初期に使う漢方薬になります。桂枝は発汗作用があり解熱を助けますし、芍薬は温性生薬ばかりにならないように、少し熱を冷ます傾向をもってバランスを取りつつ、首の凝りに有効なのです。

 風邪の初期に桂枝湯で十分!・・とは言えないので葛根湯があると言えます。桂枝湯に麻黄を加えた理由は発汗を増強するためであり、葛根(字の通り、クズの根です)で風邪の首肩の凝りを強く除きます。

 ですから風邪の初期に関して、もう既に発汗している状態であれば桂枝湯で十分と言えますし、首肩の凝りが強いときには桂枝湯では不十分なので葛根湯を選択します。胃腸に優しいのは麻黄の入っていない桂枝湯ですので、胃腸障害があれば、葛根湯はキビシイかもしれませんね。

 生薬それぞれが、温めるのか冷やすのか、体のどこに効きやすいか、潤す性質か乾かす性質か、「氣」の流れが上向き(昇性といいます)か下向き(降性)か、などが分かると良いでしょう。

 以上のレベルで理解するために、初学者向けの本として私がおススメしているのは、以下の2冊です。

 『薬膳素材事典
 それぞれの生薬の性質を知り、料理から勉強してみたい人向け。漢方薬(生
 薬の組み合わせ)についての記述はないので、それは別に勉強することになり
 ます。

 『漢方臨床ハンドブック
 基本的な漢方薬を生薬構成から性質を考察している本。もらった漢方薬の詳
 細を調べてみたい人向け。総論が素晴らしい。医師向けではありますが、一
 般の方でも何とか読み解けます。

メルマガ「実践ロハス生活!これであなたも医者いらず」より
メルマガ英語版はこちらです。

2008年09月14日

ストレスに対応する生薬~「釣藤鈎」「天麻」「柴胡」

 私の大好きな漢方薬の講演に行ってきました。そこではいろいろな漢方薬の処方解説をして下さいます。今回は私には思い出深い処方である、七物降下湯の話をします。

 この処方ですが「しちもつこうかとう」と読みます。「虚弱な高血圧の人に使用する」とあります。そんな人がいるのかな?と正直思います。・・・と思って別の本を見たら、最低血圧の高い人、とありました。少し普通の高血圧治療とは異なるようです。

 生薬の組み合わせ上、血が不足している人に使われないとおかしい処方ですし、ストレスによる障害に効果的である釣藤鈎(ちょうとうこう)という生薬が含まれているのが特徴です。

 つまり、ストレスがあるのに、血が不足していて、そのストレスのエネルギーが抑えられず、いろんな症状が一気に出てしまう、つまり「肝陽化風」の状態の人に使うのが良いと私は考えたのでした。

 私が初めてこの処方を使用した患者さんは、実は低血圧の患者さんでしたが、思い切って処方してみたところ(結構勇気が要りました)劇的に効果が出ました。やはり生薬をひとつひとつ考察して漢方薬を使うことが重要なのだと改めて感じたものです。

 「肝陽化風」ストレスによる症状の抑えが効かず、急な症状が出るということですが、最近こういう患者さんが増加していると思います。

 ストレスに対応する生薬としては「釣藤鈎」「天麻」「柴胡」が挙げられます。私の処方する漢方薬にもこの3つの生薬はよく出てきます。ストレス社会の影響なのかしら・・。

 あと、この処方は日本で使われている処方の中で最も新しく、日本で60年前に作られた処方とのことです。ところが、中国では既にその情報と使用経験を元に、ひとつ生薬を加えて「八物降下湯」という処方が既に一般的になっていると聞きました。中国はそういうところが柔軟ですごいです。

メルマガ「実践ロハス生活!これであなたも医者いらず」より
メルマガ英語版はこちらです。

2008年09月07日