自分ではどうにもできない部分がある

 努力することで完璧な健康が得られるでしょうか?

 先週そんなお話をしました。東洋医学は中庸が最も良い状態ですが、全ての面で中庸という状態は存在しないので、常に今よりも健康な状態が存在することになる、というストーリーでした。

 今日の話は見えないものの話から考えてみたいと思います。

 そもそも、体の全ての状態を把握することには無理があると私は思うのです。

 例えば、自分が電磁波にどれだけ影響を受けているか、ということについてどのくらいのことがお分かりになるでしょうか?

 気分が悪いとか、やたら眠いなどの症状がでることはあっても、大抵の人はそれが電磁波の影響とは全く分からないでしょう。電磁波が見えるものでないので仕方のないことかもしれません。

 でもそういう見えないものが健康に影響を与えるということを考えると、健康に向かって突き進むだけでは、場合によっては健康が逃げてしまうということがあるでしょうね。

 見えない部分を感じられるようになるという訓練も存在しますが、適切な指導者がいないとなかなか難しいように感じます。

 というわけで・・・言いたいことをまとめましょう。

 健康のためには自分の努力だけではどうにもならない部分もあります。ただし、健康に向かって努力することは無駄ではありません。そういう自分の力の及ばない部分もあるということは承知の上で、できることを淡々としていく、これが健康への近道だと私は感じています。

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2012年07月08日

完璧な体調を求めるあなたへ

 よく診察にいらっしゃる方には、体調を完璧にしたいので通院している、という方も多くいらっしゃいます。 

 この体調を完璧にしようという発想は西洋医学的ですね。

 なんで・・?と思われますか?

 西洋医学には目標とする値が存在します。その数値を達成するために生活の内容を変えたり、お薬を飲んだりするわけです。

 そして、その値に自分の検査値が入ってくるとゴールに到達!というわけで、そこから先は安心して、ある意味、気を抜いても健康で居られるという発想なのです。

 つまりある一定以上の状態であれば全て健康なのです。

 ところが、東洋医学ではどうでしょう?

 東洋医学は中庸が最も良い状態とされています。全ての面で中庸という状態はあるのでしょうか?

 残念ながらそれはありません。体の状態は時間によってダイナミックに変わっていきます。ですので全ての面で中庸というバランスのよい状態は、頭の中では想定できるものの、実際にはあり得ないわけです。

 つまり常に今よりも健康な状態が存在するということですね。

 いつも食事などの生活の内容を改善することにより、さらに健康になれるということですね。

 体調を完璧にしたいのであれば、常に自分の身体がどのようになっているかをモニターし、生活をそれに合わせていくことになりますね。東洋医学の考えでは病院に来ても完璧な体調は恐らく達成されないのだろうと思いますよ。

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2012年07月01日

高齢者の不眠について~食事内容でも改善できるかも?

 高齢者が不眠を訴えることがとても多いですね。

 今までは、高齢者なのだから、と以下のように考えていました。

 腎陽の力(つまり生命力ですね)がなくなって、水分を体の上の方に汲みあることができなくなり、下に水が停滞して浮腫み、上は水が下からやって来ないので熱する(虚熱といいます)、という状態が生じると不眠になります。

 そこで補腎剤という腎を補う作用のある処方をして対応することがほとんどでした。

 しかし、それだけなのかな?と、ふと思ったのです。

 心の血が足りなくなって煩躁(焦躁感があり眠れない感じでしょうか?)の状態になるのも高齢者が多いのではないでしょうか?いわゆる血虚の状態は高齢者でも少なくないように感じます。

 最近は高齢者の人をコンビニとか、お惣菜コーナーでよく見かけるようになりました。食事を作るのを負担に感じている高齢者は少なくないのではないかと思います。

 でもそういう食事の内容では糖分中心の食事になってしまい、良質のたんぱく質のような栄養価の高い内容があまり含まれていないのではないかと推測します。

 血虚による煩躁に似たような感じで不眠になっている場合には、腎の力が衰えて不眠になっているときと異なり、食事内容を変えることで不眠を解消できる可能性があるのではないかと思います。

 こういう不眠のときに「歳をとったから」と思いこまないようにしたいものです。

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2012年06月22日

診察の方法が少しだけ変わっています

 実はみなさんから見えないところで診察の方法を変えました。

 何を変えたのか・・?

 漢方薬の選び方を変えたのです。

 今までは、感染症がどのように生じているか?ということにかなり重点を置き、それに対処できる抗生物質や漢方薬を選択して参りました。

 さらに今後、同じような悪い状況になりにくくなるように、体質を強化するような漢方薬も選んでいました。望診と脈診を主として、最終的にはエネルギーで確認することで漢方薬を決めていました。

 ただ現実には、手足の問題を言われると水の問題として、産前産後の女性の問題は血の問題として考えた方がより早く解答にたどりつけます。

 つまり東洋医学でいうところの「気血水」で問題を捉えることができれば、処方の精度がさらに増していくのではないかと思っています。

 言ってみれば、今までは攻撃と守りに徹していたのですが、これからは、機能にも目を向けて診察をしていくというでしょうか。

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2012年06月17日

風邪の終わりこそ入浴は控えめに

 風邪のときによく、入浴はどうしたら良いですか?という質問を受けます。

 従来の医学では、統一見解はなく、医師の判断、それも大した根拠のない判断で(だと思いますけど)、入って良い、入ってはいけないということを患者さんに伝えているのだと思います。

 医学教育の中で、入浴をどの段階で許可するか、何を根拠に禁止するか、などということを私は教えていただいた記憶がありません。もっとも最近の医学教育でどうなっているのかは分かりませんけれど。

 強いて言えば、入浴に耐えうる体力かどうかを判断していると言えます。

 ところが単純な風邪の場合、入浴に耐えられない体力などということはあまり考える必要がなく、気分的に入りたい、入りたくないで決めればよいようにも感じます。

 でももう少し深く考えてみましょう。より良く風邪を治すための入浴方法があるはずです。

 入浴することにより何が起きるか考えてみましょう。

  > 汗をかく
  > のぼせる
  > 表面から温まる
  > 疲れる

 こんなところでしょう。風邪の初期には表面が冷える、汗をかいていないと辛い、ということがあるかもしれません。疲れの問題がなければ、さっと温まり終わりにしておきたいところです。

 そして風邪の後半。もう身体は辛くないので、ゆったりと入浴したいところかもしれません。問題は身体の中に残った熱が身体を上っていくことでしょう。それが咳になったり、口の渇きになったりするのです。

 この時期ののぼせは咳を増悪させるので、長い入浴はやはり避けた方が無難です。汗をかくほどに入浴すると口の渇きもひどくなり、治りが悪くなると思います。

 風邪の間は体力に合わせて入浴するかどうかを決め、症状がある間は短時間で切り上げるようにしたいものです。

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2012年06月10日

うがいはやはり風邪予防になるのか

 うがいは日本と韓国だけの習慣なのだそうです。

 実は私、うがいはしないのです。 習慣ですかねー。

 何でしないのかというと、本当に風邪の予防になるのかな?という疑問があったのです。

 もちろん、うがいが効果のある場合もあるので、それはそれで診察の中で使っているのですけれどね。でもそれは、ウイルス性感冒と明確に断定したときですので、予防というよりも治療で使っていることになります。

 さて新聞の記事ですが、大学の研究チームが保育園児19000人の調査を行った結果から、うがいは風邪予防に効果があるという結論をだしています
 
 これによると、水道水でも3割程度の風邪抑制効果があり、緑茶うがいに至っては7割の抑制効果があるとのこと。園児の風邪は他の要因も作用するとは思いますが、19000人のデータですから馬鹿にはできません。

 私は自分の風邪予防は衛気を高める(つまり気のバリアを強化する)のが一番だろうと思っていますが、そのバリアが破られたときにはうがいも有効なのかもしれませんね。

 衛気の考え方は重要だと思います。検索をかけると多数のサイトがヒットしますのでご確認ください。

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2012年06月10日

自分の体調を知る

 都会の高齢者の傾向を見てみると、私の私見ですが(あくまで一般論です)、
  ・結構元気である
  ・着るものもやることも割と若い
  ・お金にゆとりがある人がかなりいる
 という印象です。

 何が言いたいのかというと、高齢者向けのレジャー施設、特に健康維持のためか、スポーツ施設がかなり流行っているらしいのです。確かにこういう高齢者であれば、商業上はターゲットになってしまいます。

 先日、高齢者の方を診察したときに、とても若いなあという印象を持ちました。聞いてみるとスポーツをかなりされているとのこと。

 『ダイビングプールで訓練をしてきました。』

 本当に驚いてしまいます。ところが診察してみると脈に力が全くありません。体の気が足りず、熱を生むことができない状態になってしまっているのです。

 「あれあれ・・・?」

 これでは健康とは言えないですから、休息を言い渡しました。すると、

 『明日は運動しても良いですか?』

 「うーん、自分の状態を分かっていないのだな」と少し悲しくなりました。結局漢方薬を飲んでいただくことで回復を図ることにしたのですが、安易な回復でさらにスポーツ熱が高まることを私は恐れています。

 みなさん、自分の体調の良し悪しが本当にはよくわかっていない、という場合があります。ときどき自分の体と対話して、知らぬうちに無理がかかることのないようにしたいものです。

 あと、若いうちにすごく我慢して努力して、高齢になってから勢い込んでスポーツなどを始める人もいらっしゃると思います。しかし何となくですけど、スポーツは若いうちからして、だんだん静かに生きるのが良いのかな?なんて思いました。

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2012年05月27日

耳鳴り治療の一側面について

 耳鳴りの治療は難渋することが多いです。

 現時点では大きな耳鳴りとか、気になる寝られないような耳鳴りを鎮めることは割とできるようになっていると思います。例外はありますが。

 しかし、完治にはなかなか至らないのです。

 最近、興味深いことがありました。

 耳鳴りの患者さんが不妊治療を続けているということをお聞きしました。相当な冷えがあるようで、なかなか難しいようにお見受けしたので、

 「漢方薬で冷えをとってみましょうか?」

 と何の気なしに薬を選び始めました。強い冷えを鎮める処方のサンプル瓶を患者さんが持った瞬間、

 「あれ?耳鳴りがなくなりました」とのこと。

 耳鳴りの治療に関して、寒熱の状態がそれほど大きく関係するとは考えたことがなかったので、驚きました。

 漢方薬を使っている患者さんの場合には、寒熱の状態に即した内容の漢方薬を選択していることと思いますが、西洋薬のみを用いている患者さんも少なくないため、漢方薬を併用してみようかどうしようか、迷うところです。

 日常の診察の中にヒントがたくさん隠されているのですね。

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2012年05月20日

診察には確かにロジックも大切ですけれど

 診療をしていて、間違いが思わぬ解決法を生み出してくれることがあります。

 私の手元には、身体の微妙な変化を観察するため、薬のサンプルが200種類以上あります。それを短時間で触れていただき、その後観察するということを行う事があります。

 「この人はストレスによる気逆(気が頭の方に上がってのぼせた状態)だから、気を降ろして、気が巡りやすい状態を作ってあげないとな」と思うことはよくあります。

 さて、どうやって気を巡らせるか・・・。

 その時は、まず気を巡らせてストレスを処理しよう。まずは香蘇散(こうそさん)と考えました。

 香蘇散は気を巡らせる働きのある蘇葉(そよう;紫蘇の葉のこと)と香附子(こうぶし)、陳皮(ちんぴ;ミカンの皮)を含んでいるので、これで良いかなと思い、サンプルに手が行きました。

 ところが、実はそこで手にしたのは女神散(にょしんさん)でした。女神散は、気を巡らせる生薬と共に、気を補ったり、血を巡らせたりする働きのある生薬も多く含まれています。

 気が足りないとか、血が回っていないという印象がなかったので頭の中では香蘇散を選択したわけですが、たまたま(誤って)手にした女神散がその患者さんにピタリと来たのには驚きました。

 診察には確かにロジックも大切ですけれど、こういう勘というか、運的なものも作用することは確かですね。

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2012年05月13日

切迫早産の漢方治療??

 先日、切迫早産の方に良い漢方薬を処方するよう、助産院から依頼がありました。

 「切迫早産かー。よく分からないよー」
 というのが本音ではありましたが、薬のエネルギーを身体に合わせていくと行き先が見えてきます。

 ご本人が言う事には、疲れたときに切迫早産になったのだそうです。

 そして、ご本人の身体が選んだ処方は血虚の処方でした。

 ということはどういうことなのか・・?

 そうか!分かりました。いや、これは常識的なことなのかもしれないし、逆に正しい内容かどうかも分かりませんけど。私なりの解釈ですので、悪しからず。

 切迫早産とは、胎児が十分な発育を待たずに母体から出ようとしてしまう状態です。どうしてそのようなことが生じるのか?それは、母体内の環境が胎児にとって、あまり良くなくなったからなのでしょう。

 今回は過労が切迫早産の原因になっています。疲れにより、交感神経が緊張した状態になり、母体の血流が悪くなったのでしょう。胎児は十分なガス交換ができなくなり、体外に出ようとしたのでしょう。

 休養を取ったところ、切迫早産は持ち直して安定したとのことでしたので、さらに血流を良くする、つまり血の消耗を抑える補血の内容を選択して処方を考えてみました。

 良くなるとよいですね。

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2012年05月06日