ストレスに関する考え方6~うつ3
我が家では理気(気を巡らせる)効果を狙ってグレープフルーツのアロマオイルを寝室で使用するようになりました。確かに少し良い感じで寝られるようになったかな?と思います。
さて前回に予告しましたが、肝気鬱結により胃腸にまで症状が及んだ状態である、肝気犯脾の治療はどのようなものが考えられるでしょうか?
脾土(脾は五行の土に当たります)の病気は、湿(水分)が胃腸に溜まる状態と、その湿が熱と結びついて痰(粘りを帯びた水)になる状態を考えなければなりません。
脾土の湿を解消する代表的生薬は茯苓(ぶくりょう)、マツの根に寄生する真菌類である。そして痰を解消するための代表は半夏(はんげ)、サトイモ科のカラスビシャクの地下茎(球茎)です。
余談ですが、この球茎からひげ根と花茎を除いた部分はへそをくりぬいたような形であり「へそくり」の語源だそうです。地位の低かった嫁が、つわり薬のへそくりを自分用と称して集め、こっそり薬屋で換金した、というのがへそくりの元々の意味とのことです。
さて治療に戻りますが、肝の状態を元にもどす疎肝解鬱の代表的生薬である柴胡、そして脾に作用する茯苓と半夏をどう組み合わせるか、ということになります。
茯苓と半夏を含む代表的処方は半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)です。柴胡は含みませんが、厚朴の気を巡らせる作用が含まれているので、肝木よりも脾土の症状が強い時にはこの処方を使用します。
肝気鬱結を主体に治療して脾土の痰湿も除きたいということであれば、柴胡、茯苓、半夏全てを含む方剤を考えます。代表的処方は柴朴湯(さいぼくとう)と竹じょ温胆湯(ちくじょうんたんとう)です。前者は乾燥性が強く、後者は熱痰にも対応できるという特徴があります。
肝気犯脾とは関係ありませんが、風邪の最後は熱痰となることが多いので、私は竹じょ温胆湯を多用しています。
次週は肝気鬱結が長期化したときに生じる臓腑の障害について解説します。
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2008年10月26日
ストレスに関する考え方5~うつ2
ストレスにより、肝の疎泄機能が障害されたときに肝気鬱結はよく起こります。そのときにどうしたらよいのか、具体的に知りたいという質問をいただきました。ありがとうございます。
うつ証というのは何かが詰っていることを意味しています。漢字だと「滞」「積」「不通」を使います。数日のうつ様状態であれば、睡眠により改善する可能性があります。
この気詰まり状態を通じさせるということが治療の基本になります。敢えて言うならば、漢方薬なら柴胡剤が基本になるでしょう。加味逍遥散などが基本の処方になりましょう。軽症であれば理気作用のある香蘇散でもよいかもしれませんね。
香蘇散は紫蘇の発散性を用いた処方です。あまり詳しくないので、もしも誤りがあったらどなたかに修正していただきたいのですが、発散性のあるアロマオイルも効果があるのではないかと考えます。レモン、グレープフルーツ、ジャスミンといったところでしょうか。これらは予防、もしくは軽症向きでしょう。
肝の障害が長期間になると、肝と胆の経絡が障害されます。頭痛は確かに側頭部に多く生じる傾向があります。ストレスが長期間生じているために、脈にも影響が出てきます。弦脈と言って、ギターの弦のようにピーンと張った脈が生じます。この脈の患者さんがこのところ大変に多い印象があります。
明らかに脈が弦になっているのにストレスなど感じないという方も少なくありません。何かがストレスの感情を抑圧している可能性もあるため、私は患者さんの話よりも脈が弦脈になっていることの方を重要視しています。ストレスを受けていることに体は反応していると考える方が自然な感じがします。
弦脈は睡眠不足で簡単に作ることができます(みんな作れるかな?)。私は自分で脈を取りながら、弦脈の傾向がでてきたら、休むように心掛けていますよ。
次回は、肝気鬱結により胃腸にまで症状が及んだ状態である、肝気犯脾より治療を調べてみます。
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2008年10月18日
ストレスに関する考え方4~うつ1
先週まで3回にわたり、不眠症について考察してきました。今日からはうつについて考えて見たいと思います。ネタ本は引き続き『いかに弁証論治するか~疾患別漢方エキス剤の運用』(東洋学術出版社)です。
「うつ」とはそもそも何でしょうか?
古典には「鬱とは滞りて不通の意なり」とあるそうです。つまり何かが滞り、通じなくて鬱結した状態ということができます。滞るものの種類としては、気・血・痰・湿・熱・食が挙げられ、それぞれに対応の原則があるようですので順次ご紹介していきます。
「およそ病はうつによりておこること多し」
こんな言葉があるようです。七情といって喜・怒・憂・思・悲・怖・驚)の七つの感情は中医学では重要な発病の要因とされています。どれもちょっと体に悪そうですね(笑)。喜びは健康に良さそうですが、中医学では過ぎた感情は健康には悪いと考えます。
気鬱の話をします。気の巡りが悪くなる状態ですが、発散する場がなくて、気が行き場を失って溜まってしまう状態とでも申しましょうか。
この発散働きは肝が持っています。肝の持つ疎泄機能とは、気の滞りを修復してのびのび生長できる状況を整える働きのことです。
この疎泄機能は憂鬱な気分や怒り、ストレスの影響を受けやすく(のびのびできないので当たり前ですね)、肝気鬱結(かんきうっけつ)と呼ばれる状態になります。ストレスでカーッとなってできたエネルギーがこもる状態です。よくありますでしょ?(笑)
肝気鬱結は憂鬱になったり、情緒不安定になるだけ(だけってことはないですが)です。しかし長時間持続すると熱になり熱が体を上り、口が苦くなったり、舌が赤くなり黄色の苔が見られたり、頭痛も生じることがあります。頭痛は肝と関連の深い胆の経絡(ツボの列のこと)にも生じやすく、側頭部に痛みが強くなることがあります。
肝の熱は脾(消化器)にも及びやすく、「肝気犯胃」という状態が生まれると食欲がなくなります。また、肝は血を蔵しますので、月経不順になり、血が滞ると生理痛が生じることになります。
気持ちの問題からいろんなことが起こるものですね。発散が大切ということがよく分かります。
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2008年10月12日
ストレスに関する考え方3~不眠症3
先週まで2回にわたり、不眠症について考察してきました。今日は不眠の最終回です。
大まかに分類すると、精神活動過剰による「心血不足」による不眠とストレ
スによる「肝血不足」による不眠、そして消化器不調による「血虚」による
不眠と説明して参りました。
あとは腎の働きを説明しなければなりません。腎は生命力を意味していますが、心火(活発な精神活動)の行き過ぎを弱めることができるのは、水をつかさどっている腎の働きです。
心の火と腎の水は本来、上半身と下半身に分かれていますが、それが腎の生命力を得て「心腎交通」の状態となり、体の平衡を保っているという側面があるのです。
従って、生命エネルギーが弱まり(すなわち老化のことですね)、腎の水を心までくみ上げることが出来なくなった場合、あとは先週お話した、脾(消化器)の機能異常により腎の水が減少したときに、心火が消せずに不眠になってしまうのです。「心腎不交」と言います。
今まで述べてきた不眠の中で重要と思われる処方を挙げておきます。
第一に挙げられるのは帰脾湯(きひとう)です。元々消化を助ける作用が中心の処方ですが、安神作用に補血作用を合わせ持つ生薬が多数配されています。当帰(とうき)、龍眼肉(りゅうがんにく)。酸棗仁(さんそうにん)は肝の補血にも効果がありますし、遠志(おんじ)は心腎交通の生薬ですので、どの型の不眠に対しても一定の効果を上げることができるでしょう。
ストレスがとても強くて寝られない場合には、肝の傷害が中心になりますので、酸棗仁湯(さんそうにんとう)が中心になりますが、これで肝鬱の解消が難しい場合には、さらに柴胡を配した処方を考えていきます。
薬膳ではあまり身の回りの食材はないですね。強いて挙げるなら小麦、あとは酸棗仁、牡蠣(ぼれい;牡蛎殻のこと)ですね。重みのあるもので、精神状態を鎮めるという意味で、鉱物なども使われるようです。
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2008年10月05日
ストレスに関する考え方2~不眠症2
昨今はみな忙しく精神活動をしているので、「心」が疲弊しやすく、心血の不足となり、心の安定を血が維持できずイライラして(=心火)眠れなくなるという話を先週書きました。どうりで不眠症の人が増えているはずだ、と。
心火亢進が心血不足以外の要因からも生じることがあります。
血と魂を蔵すると言われる肝はストレスにより傷つきます。肝血が減少すると魂による精神活動が不安定になり、熟睡できなくなります。
肝と不眠の関連で言えば、ストレスを溜め込んだとき、そのエネルギーは体内で火(熱)に変わります(気鬱化火)。火は体を急上昇して心を傷めることになり、不眠の原因となることがあります。
さて今までのお話では、気鬱化火の他はみな、血の不足により不眠が生じると考えられます。血が不足する病態として、もうひとつ重要なものがあります。それは脾(消化器)の働きの低下です。
脾で消化吸収されて体内に栄養が入ることで、体の気と血は充填されます。ですから、脾の働きが低下したときには気も血も不足がちになります。血の不足は心の安定を損なうため、脾の不調で不眠が生じることがあります。
「脾は思を主る(つかさどる)」と言います。考えすぎると食欲が落ち、血虚の状態になるため不眠が生じやすくなります。また元々血虚の体質の方、色白で、髪の毛が細く、皮膚や爪が脆い痩せ型の人ですが、そういう人には当然不眠が生じやすいと言えるでしょう。
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2008年09月27日
ストレスに関する考え方1~不眠症
不眠症の方が増えているように思います。
私は耳鼻科の医師ですが、不眠症はいろんな症状の原因になりますし、影響もかなり大きいので、対応を迫られることも少なくありません。
不眠症というと、安定剤や睡眠薬が処方されておしまい。あとは「頑張ってね」という医療機関の対応がとても気になります。これでは根本的解決にならないので、いつまでもたくさんの人が薬を飲む結果になっているようです。
不眠の本質を考えなければと思い、今日はこの本を紐解いてみました。
『いかに弁証論治するか~疾患別漢方エキス剤の運用』(東洋学術出版社)
(初級者の知識は持っている、という方向けの本です)
普段診察をしていて最も多いと感じるのは、五臓の「心」を傷めてしまい、不眠症に陥るパターンです。
「心は神を蔵す」と言われます。神、すなわち意識ですが、心は全ての血脈を集めており(すべての血液が心臓を流れるというイメージでも良いですよ)、心はその血液の養分を得て精神を安定させているのです。
さて、昨今はみな常に忙しく精神活動をしており、「心」は疲弊しやすくなっていると考えられます。心の疲弊は心血の不足となり、心の安定を血が維持できなくなって、「心火」となってイライラして眠れなくなるのです。
心血不足、あるいは別の原因でも心火亢進が生じる状態を探していくと、不眠症の根本的治療につながりそうです。詳細は次回に話します。
実は「心血不足」「心火亢進」のほかに、もうひとつ不眠症の有力な原因になりそうなものがあります。肝の働きを考えてみましょう。
「肝は血を蔵す」と言われています。血液には魂が宿るとされているため(科学的でない感じがしますか?)「肝は魂を蔵す」とも言えます。
当然、魂は精神活動に関与していますから、肝は傷つくと肝血が減少し、魂が肝の外へ流出してしまうため熟睡できなくなるとされています。肝を傷つける最も大きな要因はストレスです。肝の障害についても次回に考察します。
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2008年09月20日
みんなの健康管理法31~お年よりに学ぶ6
読者のみなさんが独自にやっている健康法について紹介するコーナーです。私はメディアで語られるような常識的な健康法では健康は守れないと思っています。実体験の集積が大切です。本日はIさんのところに治療に来られた方の健康法です。99歳女性だそうです。
> 暫く受領されないなあと思っていた99歳と半年になるおばあちゃん。
> 先日、ご家族からの知らせで、静かになくなったとのこと。
> もともと薬が嫌いで、消化器や循環器などに不具合が生じると、とり
> あえず専門医の診察を仰ぎ、その後の治療は総て鍼灸で済ませた方で
> した。
薬嫌いの人のひとつの生き方だと思います。とりあえず専門医の診察を受けている、というのがコツかもしれませんね。まだ西洋医学者の私はちょっと苦笑してしまいます。
> その叔母ちゃんが最後に「私が今日まで生かされたのは鍼灸のおかげ!」
> と。悲しくも嬉しい最後の言葉でした!。
Iさんのご苦労が報われた瞬間でしたね。
私のメルマガを読んで長生きできた人が現われると良いですが(笑)。
ご自分の健康法を是非メールでお寄せ下さい。できる限り掲載させていただきます。また、身の回りに長寿のご老人がいらっしゃったら、健康法を是非ぜひ聞きだしてメールして下さい。きっと訳があるはずです。lohas@jjclinic.jpまでメールをお願いいたします。
2008年08月10日
みんなの健康管理法30~酒はほろ酔い腹8部・・
読者のみなさんが独自にやっている健康法について紹介するコーナーです。私はメディアで語られるような常識的な健康法では健康は守れないと思っています。どうぞ健康法をお寄せ下さい!!もう第30回ですね。
さて本日は、いつもみなさんに健康法を聞いてくださっているIさんから、若々しい67歳男性の健康法を聞いていただきました。
> 見た目はやや太っていますが、今日まで健康診断で何ら問題ありません。
> 医師からの投薬もなく、その秘密を伺ったところ、
> 「酒はほろ酔い腹8部、心静かに色を慎め」と言う貝原益軒の養生訓を
> 守っているのだそうです。
養生訓ですか!私も興味があり解説書を購入しておりますが、まだ読むに至っておりません。。。こういう分かりやすい健康法を考えることはとても大切だと最近痛感していますよ。
> 私もまた同じように今日まで続けて、病気らしい病気もなく健康でいま
> す。養生訓のおかげかもしれません。世の中にはいろいろな健康法があ
> りますが、先人の言葉の偉大さを知る思いでした。
昔は医療も発達しておりませんでしたから、みんな健康を守ることにもっと必死だったのだと思います。自分の感覚を磨き、自分なりに対処できる。まさにこれが私の目指す道なのですよ。
・・・少し養生訓の解説書を読み始めました。やはり貝原益軒はこの知恵を世間に分かりやすい言葉で広めないといけない、と書いておられます。今どきの医師には耳の痛い話ではないですかね。
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2008年07月12日
みんなの健康管理法29~小食だと気がめぐる?
読者のみなさんが独自にやっている健康法について紹介するコーナーです。私はメディアで語られるような常識的な健康法では健康は守れないと思っています。どうぞ健康法をお寄せ下さい!!
(とうとうネタ切れです!是非情報をlohas@jjclinic.jpまで!)
今日は朝方夢子さんのお話ですよ。
> 私はB型肝炎を代替療法で完治させました。闘病中に習った東洋医学の
> バランス食は今も続け、私が出会ったサブリメントは今も少しだけ飲ん
> でいます。この25年間、軽い風邪は数回程度、インフルエンザの予防
> 注射をしなくても大丈夫です。
そうですか。東洋医学の特徴は普段からバランスを意識するところにありますよね。そうすることで、朝方夢子さんも指摘されていましたが、自分の弱点を克服して防御能を高めることができるのです。
> 私の其の他の風邪の予防策は、腹7分目、睡眠不足の時、とても疲れた
> とき、強いストレスを被ったときは、さらに小食にします。このときい
> つもの量を食べると風邪をひきますね。風邪を引いたと思ったときも小
> 食にすると治りも早いです。
これはとても重要なメッセージのように感じます。私は気功の訓練をしていますが、満腹だとうまく行かないのです。空腹のときの方が体の気の流れに敏感になれます。よく断食をした人が、感覚が敏感になったと話されていますが、これと同じことでしょう。
もしかして・・満腹だと鈍感になるのではなく、気の巡り自体が悪くなるのではないか?と考えました。すると風邪の治りが早くなるのも理解できます。
> 昔は、病気のときや疲れたときにはたっぷり栄養を、でしたが、体力が
> 落ちているときは、それらが返って、体に負担をかけるようです。
本当にそうなのですね。胃腸が免疫の一端を担っているということが、何となく見えてくるお話でした。
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2008年07月05日
みんなの健康管理法28~呼吸法の重要性
読者のみなさんが独自にやっている健康法について紹介するコーナーです。私はメディアで語られるような常識的な健康法では健康は守れないと思っています。どうぞ健康法をお寄せ下さい!!
本日はMOさんのおばあさんのお話です。
> 100歳まで生きた祖母は呼吸法が良かったのではないかと思います。
> 祖母が78歳の時、私が習い始めたヨガで教えていただいた呼吸法を、
> 長生きの秘訣といって祖母に教えました。それは、腹式呼吸です。鼻で
> 下腹が膨らむようにゆっくり吸って、口からゆっくり吐ききる。
ヨガの呼吸法は片鼻から吸って反対の鼻から出す呼吸法もありますね。どのように違うのでしょう?きっと詳しい方がいらっしゃるでしょう。是非教えて下さいね。口呼吸ではダメなのは、恐らくアジナチャクラが活性化されないからだろうと考えています。
> それからは毎日廊下を歩く時は腹式呼吸の吐く息が聞こえていました。
> ゆっくりと深い呼吸は、心も安定させますし、脳を活性化する効果があ
> るとも聞いています。
最今はみんな呼吸が浅いと言われています。私も呼吸が浅い自覚があります。確かに緊張が高まったときに腹式呼吸をすることはとても有効で、普段からそういう呼吸をすべきなのだなあ、とそのときには感じます。
胸式呼吸だと交感神経が緊張するそうです。常識ですか?一応念のため。
MOさん、ありがとうございました。
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2008年06月29日