ヘルスプロモーションと学校保健

ヘルスプロモーションと学校保健
「しぶやの学校保健」第70号より                      

健康を考える時に患者さんも医師もついつい個々の事例に終始しがちで、社会の包括的な枠組みには思いが至らないことが多いものです。私は社会全体の状況をコントロールして個々の健康を守るというヘルスプロモーションの考え方に大いに賛成です。この取り組みを達成するためには健康教育が重要であると考えますが、現在の日本では健康教育が行える可能性のある施設は学校だけであると思います。そのことから私はヘルスプロモーションが学校保健の主要な役割として位置づけられるべきであると考えています。
学校保健のヘルスプロモーションにおける役割は、主に健康教育とデータ収集であると思います。子どもは大人よりもむしろ身体に対する興味が大きいので、それぞれの年齢に応じた教材と教育の場が与えられることにより健康教育は達成され得るはずです。しかし実際の学校現場には健康をテーマにした良質な教材は著しく不足しているように感じます。
健康教育教材作りは医師の重要な仕事であると思いますが、そういう教材を医療者が提供することには慣れていません。普通に疾病予防に関する知識を伝えることでさえ難しいのに、その上、子どもが理解できる内容にすることも必要ですし、子どもが興味を引く仕掛けも作らなければならないでしょう。現実には医療と教育産業が共同で作業する必要があるのではないでしょうか。
また健康教育の効果を見るために、データを収集するための事業デザインが必要になると考えられます。そこで得られた結果をフィードバックして教育の内容を再検討することになりますから事業を整備するのには長時間を要すると思われます。以上の理由で私は早期に計画的に教材が作成され、提供されることを期待しています。

2005年08月07日

補聴器外来あれこれ

私は補聴器専門外来を月に2回、予約のみでやらせていただいている。

先日面白いことがあった。

補聴器をつけたら自分の声が小さくなってしまい、同じく耳の遠いだんな様が困ってしまう、というものだった。

補聴器は聞こえ方だけ意識していれば良いと思っていたが、声の大きさの変化にも気を使わないといけないのか!

改めてこの器械の難しさを痛感した。

2005年08月07日

配置転換

4月、7月。配置転換のシーズンなのだろうか。出入りのメーカーの人たちも何人が配置転換になったかな。

新しい土地で新たな地盤を作るのに苦労も多いし時間もかかるだろう。有能な人がいなくなったところでは売上が下がり、その移動した人も新しい土地では苦戦する、ということも結構あるのではなかろうか?

成績の悪い人同士を交換するのなら分かるけれど、そういうことでもないらしい。むしろ「てこ入れ」なんて話をよく聞く。でもどんな環境でも力を発揮できるような人ってそうはいないと思う。

配置転換のストレスも相当なものらしく、それで耳鳴りがしたりめまいがしたりということも結構あるように感じる。体調が悪くなる人がこんなに多いのをみると、配置転換は必要なんだろうけれど、行われすぎなのではないか?と考えたくなる。

適切な場所を与えられ、苦労して良い地盤を築いて、これから頑張ろう!という人、あるいは頑張っている人を動かすなんて、時間を無駄にし、健康を害するだけという感じがするが、余計なお世話か?

2005年08月03日

漢方診療をしていてよかったこと

比較的高齢の人で口が渇いて、熱っぽい。そんな訴えで耳鼻科に来られる人も多い。

ところが異常がない、ということで解熱剤とうがい薬を渡されるということもある。でも西洋医学的にはそれでおしまいだ。

あまりしつこく食い下がるとしまいには、気のせいだ、年齢のせいだ、と言われ追い返される。・・いや、年齢のせいだ、というのは少し当たっているのだが(苦笑)。

こういう患者さんは漢方診療の独壇場である。

実はもっと聞いてみると、下半身は冷えて、最近食べる量が減っていたそうだ。

こういう風に水が体を巡らないために、上半身に熱を生み、口が渇いたり、熱っぽくなったりする現象を「虚熱」という。

熱はないのであるが、体熱を定期的に冷ます仕組みにトラブルが出てしまうのである。逆に巡らない水は下半身にたまり、下半身を冷やしてしまうわけだ。

体の水の巡りに必要なエネルギーは食事によってもたらされるものもあるが、生命力そのものも影響する。

食事が少し減っていて、年齢的にだんだん高齢になっていることを考えると、年齢的なものがある上に、食事を十分に摂っていなかったために、虚熱が生じたと判断せざるを得ない。

食欲はあり、食事も意識してきちんと摂れるということだったので、生命力そのものを補い水が巡るように処方を考えてみたのだが、どうだろうか?

ちょっと耳鼻科っぽくないと言われるけれど、これくらいのことをしないと対処できない症状にはいつもお目にかかっている。体は全部一体なのである。

2005年08月01日

子供の夏休み

夏休みになるとお子さん達が家にいる時間が増えて、お母さん達が疲れてきますね。

夏ばての人が少し増えてきたように思います。

子ども達はいつもみんな元気です。

2005年07月29日

何歳から耳掻きをするのか?

子供たちが何歳から耳掻きを始めるのか?
いつからやらせるのが良いのか?

自分でもいつからやったのか記憶にないし、いつから始めたら良いのですか?という患者さんからの問いに明確な回答を持っていない。

そういうことをあまり厳しく言わないと、どうも9から10歳くらいから自分で始めるようだ。

それが遅すぎるということはないと思うが、ではこれは早すぎるのか?

やはり最初は親の管理下にやってもらいたい。小さい子供は程度を知らない。だからすぐに傷つけてしまう可能性が高いように感じる。

昨今はストレスのためか、早い時期から耳掻きをしたがる傾向があるように感じるが、小学校高学年から親の管理下に始めるのが穏当ではないだろうか?

2005年07月26日

耳鳴

耳鼻科医の誰もが耳鳴治療は得意ではないと思う。たぶん。

イマイチ病気の実態がわかっていないからだ。つい数年前まで「ジー」よりも「ピー」の方が多いとか、そういうレベルの研究がなされていた(ちょっと言い過ぎたかな?)。

さて、先日来られた耳鳴の患者さん。慢性中耳炎もあるし、難聴も軽度ではない。ちょっとどうしよう、薬では通常では治らないかなー、と思った。

診察が暇だと捨て身の作戦を出すこともある。

今回は特別に綺麗に耳の中を掃除してみた。ちょっと通常では考えられないような徹底的な清掃である。針を使って全部の耳垢を鼓膜の上からもはずしていく。そして全部終わったらナント耳鳴が取れてしまった!

実は前回も耳鳴で来院したとき、同じようにしたらやっぱり症状が取れていた。えええーっ、今回も取れたよー、ホントかよー、と驚き+++。耳鼻科医の常識では説明できないことが起こるのだなー、と実感。捨て身の作戦も今では自分の大切な手段の一つになった。

こんな感じで患者さんに医師は鍛えられていくのです。患者さんには本当に感謝していますです。はい。

2005年07月23日

風邪の診察プロセス~その1

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その1といっても今回限りかもしれません。

さて、アレルギー性鼻炎の人が風邪をひいて来院されたとしましょう。

「鼻水がだらだら出てしまうんですよ」と患者さんが来られる。
『アレルギーでしょうかね。大変ですね』と私。鼻を見る。
「やっぱりアレルギーですか?」と患者さん。
『そうでしょうね』と私。
「今日からちょっとのどがひりひりするんです」と患者さん。
『えええっ?ちょっと待って下さいよ、のどを見せて下さい』と私。
のどを見ると少し赤い。
『もしかして鼻水は今日はかなり収まっていますか?』と私。
「そう言えば今日はあまりでないねえ」と患者さん。
『のどは渇きますか?』と私。
「渇く渇く」と患者さん。
『脈を診せてください』と私。
「耳鼻科で脈ですか?」と患者さん。
『やっぱり風邪で、5日前くらいからかなあ』と私。
「そう言えばそのころ少しだるかった」と患者さん。
『痰と咳は出ていますか?』と私。
「いいえ、のどが少し痛いくらいです」と患者さん。
『じゃあ普通の風邪のみってことですね』と私。

これくらい話をしないと、アレルギーなのか風邪なのか、区別がつきません。
手間もかかるし難しいけれど面白いですよ。

2005年07月20日

子どもの診察3

子どもが怒っても泣いても、笑って受容し続ける。

するとあるとき、子どもは自分が受け入れられていることに気づく。
ピタッと泣き止むその瞬間である。

これがたまらなく面白い。

何でこの人は怒り返さないの?という顔をしてきょとんとしている。

それを続けていくうちに鼻水を吸ったくらいでは泣かなくなるのである。

2005年07月16日