子どもにまつわる話

こどもの診察は面白い。けれど大人にはない難しさがあるように思う。難しいからこそ挑戦しがいがあるのもまた事実である。

今日は幼稚園か、というくらいに子どもばかりの診察であった。自分に子どもが生まれる前は、子どもの診察が得意です、と言える事はなかったように思う。ただ子育てに自分なりに真剣に取り組み、いろいろ悩んだりしているうちに、少しやり方が分かってきた面があるように感じている。

子どもは症状を言わないし、所見も取りにくい。圧倒的な情報不足の中であれこれ推論をしつつ、日々診療の精度を高めているつもりである。そんな中で案外、日常生活に落とし穴がたくさんあることに気づかされる。この季節はとにかく寝冷えが多い。私にはこの季節を乗り切るための独自の理論がある。現在うちの子供たちでそれを検証しているところである。そのうち披露することができるかもしれない。

さて、昔は父親が厳しく、母親が甘いという家庭が多かったように思う。私もそういう両親に育てられた。子どもを育てるときに何か威厳のようなもの、筋の通ったものを見せつけるのが私は必要ではないか、と考えている。父親が忙しさゆえに子育てに関わることがだんだんできなくなり、その分、母親がどんどん厳しくなっている感じがする。

果たして母親が子どもに対して威厳を示すことができるだろうか?特に理由はないが答えはNOである。やはり父親には威厳を、母親には優しさを求めたい。これが自然な家族のあり方ではないだろうか?考え方が古いかな?

いろんな子ども達を見ていて感じるのだが、子ども達の精神的な安定をもたらしているのは、父親の子どもに対する接し方と、母親の優しさ特に声かけの量であると思ったので、ついついこんなことを書いてしまいました。

2005年06月19日

子ども達の管理~私流

今日も微妙な気温で夜を迎えた。子ども達の寝具をどう管理していくか、ということである。

もっと暑くなれば半そでのまま転がしておけば、窓さえ開けなければ問題ない。もっと寒くなればカーディガンをさっさと着せてしまうところである。

でも子ども達は何となく汗ばんでいて長袖のパジャマを着ているのに、これ以上必要なのか??と疑念が湧いてくる。

昨日はその疑念に負けて、データ上は絶対にカーディガンを着せるべきとは思ったのであるが、何となく自分の感覚におぼれてしまい、そのまま子ども達を転がしておいた。

すると子ども2人共に起きたときから「のどが痛い~」ということになってしまった。やはりデータは感覚よりも大切なのか!痛く反省した次第。

今日は鬼になって上着を一枚着せて寝ようと思っている。でもできるだけ遅くに、と思ってこんな時間になってしまっている。いつも眠いはずである(苦笑)。

2005年06月16日

捨て去られる治療

歯性上顎洞炎という病気がある。抜歯した後にその穴から上顎洞に感染を起こしてしまい、口の中に膿がいつまでも流れ込むちょっとやっかいな病気である。

要はその開いた穴が塞がればあとは抗生物質で料理できる状況になるわけである。穴は感染が収まれば塞がってくるのであるから抗生物質を初めから使えば良いではないか、ということを言う人もいるかもしれない。しかしすでに膿がたまっている状況ではなかなか抗生物質が効かないことは容易に予想できる。

とにかく綺麗にする。でも抗生物質は有効性に欠ける予想である。そこで何を選択すべきか。まずはじめに口の中の穴から水を入れて洗えないか、と考えてみた。昔、病棟の患者さんにやった方法である。穴が大きくないと洗えないけれど、穴が大きいと塞がらない。結局、そのときには穴を塞ぐ手術を選択したわけだが、今回は口から洗えるような穴は見当たらなかった。小さい穴なのだろう。

で、仕方がないので、鼻の中から洗浄する方法を選択した。シュミット探膿針による副鼻腔洗浄である。なんで「仕方がない」なのか?と思われる人もいるかもしれないが、準備が面倒で時間がかかるので気持ちとしては「仕方がない」になってしまうのである。患者さんも大変だ。鼻から針で刺されて一瞬とは言えやや痛い処置である。でも存分に膿が出てさぞかしさっぱりした状態で帰宅しただろうと思う。

何軒か耳鼻科を経由したようだが、どこも上顎洞洗浄を選択しなかったようだ。でもこの場合、やはり選択肢の上位に挙がるべき処置のように思う。昔の処置だから捨て去られる運命にあるのか、あるいは面倒だからみんな避けているのか、はたまたリスクがあるのにあまり点数がつかないから嫌気がさすのか。大切にしたい古い治療がどんどん忘れ去られている昨今だが、ハイテクばかりが能ではないということでも改めてこの古臭い処置を通じて強く感じさせられた。

2005年06月16日

気管支炎 耳鳴 めまい

今日の診察では2つの減少が気になった。先週末から体調を崩して風邪を引いたという人が多いこと、もうひとつは耳鳴、めまいの患者さんが激増したことである。みんな揃いも揃って先週末から具合が悪いのであるが、9日に少し暑く、10日になりやや涼しく、しかし最低気温と湿度が高くて寝苦しかったので体調を崩してしまったのだろうか。

以前から疑問に感じていたが、気管支炎が梅雨時に多いのである。今日も何人か来ていた。どうも湿度お高い日が好発日として怪しいのであるが、確信がもてるところまでいたっていない。自分としては湿度が高いために、熱が気管から逃げずに気管支炎が発症するのだと思っている。気管は定常状態でも呼気により結構熱を逃がしていて正常の状態を保っているのではないだろうか?私はよく梅雨時に厚着をして風邪を引かないようにと試していたことがある。このときにも気管支炎になったので上述のように考えるようになった次第である。

湿度が高くなると始まる病気として定番なのは耳鳴、めまいである。これらは水の調節不良と感じるときには、朝に症状が出やすい。従って寝ている間の気候が水の動きを妨害するときに発症してくるのであろう。

以前に気圧が発症に関連するのだ、と言っている先生方も多いのだが、これは誤りであると思う。気圧として公表されているのは相対気圧である。その場所が海抜0メートルであると仮定したときの気圧である。しかし肉体に影響を及ぼすのは測定値そのもの、すなわち絶対気圧である。気圧が低くて生じる病気があるのであれば、高地に住んでいる人たちのほうが発症率が高くないとおかしいことになる。しかしそういうデータは存在しない。やはり湿度と気温で説明した方が説得力があると思う。

2005年06月13日

私は嫌い!後発品薬剤。

独自に開発した薬剤の特許が切れると、他の製薬メーカーが独自の製法で同じ構造式の薬剤を作る。これが後発品薬剤と呼ばれるものである。

さて、ドクターや薬剤師の反応は様々。
・安いから好ましい
・やはり安かろう悪かろうではないか?
・大手メーカーではないので、安定供給できるのか?
・大して変わらない
・開発したメーカーがかわいそう
・薬価が下がっても中小メーカーは供給してくれるのか?
・医療費抑制のために仕方がない

私の感想。

他の医師に受診している患者さんの薬のリストを見たとき目がくらくらすることがある。後発品の知らない名前ばかりのリストになっているときがある。昨今は相互作用などの検索もしてから処方しなくてはならない(と私は思っている)ので、治療薬2005を使って、必要な限り検索して自分の使える薬を探していくことになる。

こんなに手間がかかることを医師みんながやっているのだろうか?ちょっと疑問に思うことがある。コンピュータで検索してもそこそこ時間がかかる。後発品はデータが古いと検索しきれないこともある。だいたい同じ成分の薬に対して10個も20個も名前があるのである。そんなもの人間業では覚えられるはずがない。覚えたいとも思わない。

仕組みが単純な方が安全に決まっている。患者側も行政も多少のコストを払って安全をとるべきではないだろうか?私は私の患者さんが他の医院に出かけたときに危険な目に遭いにくいようにできるだけ先発品を使用したいと思っている。

ただ・・
行政が後発品を推進しているので「後発品を使用しないと処方箋料は半額です」なんてことになりかねない。今でも実は後発品を使用しない処方箋料は20円安いのである。20円だから我慢できるが、今後の制度の変化が少し怖い。

2005年06月10日

水泳ブームも考えもの

子どもにプールを習わせるのが流行のようだ(何て言いつつ自分の子ども達も習っている)。

プールの後に体が冷たくなったままということがあり、これで鼻水が止まらないことも少なくないようなので注意が必要だ。風邪の後に鼻水だけが止まらないという時には、プールについても一応チェックしておきたい。診察中には「すぐに温かい風呂に浸かるように」と指導している。

プールには塩素濃度の問題もある。アトピー性皮膚炎が塩素で悪くなることがあるのか、皮膚が赤くなってしまうお子さんもいらっしゃる。一部には塩素濃度がとても高いプールもあるそうなので注意が必要だと思う。

最近、アデノウイルス感染症が流行している。高熱が数日続くので結構辛い。いわゆるプール熱のように結膜炎がある典型的なお子さんは少ないのだが、やはりプールで感染を起こす子もいるのだろうな、と思う。プールに通っているかどうか聞けば良かったなー(反省)。

子どもをプールに通わせるだけでも結構いろいろ考えさせられる。

2005年06月07日

大気汚染?

東京と空気のよいところを行き来する人が「東京に来た時だけ調子が悪くなる」と言う。みな副鼻腔炎が治り難い人たちである。そういう人たちの一部は大気汚染が影響しているのだろうかー?

2005年06月01日

酒と耳鼻科

飲みすぎが体に悪いとか、少し飲むのは体に良いとか。さも分かったようなことを言うのだが、実際にどのくらい良いのか悪いのかちょっと考えさせられることがあった。

昔から飲酒の量を聞くときには、咽頭癌、喉頭癌、口腔底癌、舌癌を意識していることが多かった。これは大酒飲みで酒を味わうように飲んでいる人に口の周りの癌が生じやすいということがあるからだ。料理人が料理をしながら毎日のように飲んでいて口腔底癌、あるいは豪快に酒タバコを飲みながら「がははー」と笑い飛ばす首の短いおじさんの喉頭癌、そんな人たちを思い浮かべる。

日常の症状としては、睡眠時無呼吸やいびきを意識していた。何人か飲酒が原因で、飲酒をやめさえすればいびきなどの呼吸障害が生じない人がいた。私は嗜好を変えるのは無理とは言わないが、結構困難だと思っているので、あまりそういうことは言わないのだが、このときばかりは飲酒をやめるように指導させていただいた。

今日はのどの渇き。
酒を飲むと血管が開くため一時的にのどが渇く。この渇きなら自分でもかなり経験済み(笑)。でも栄養の偏りもかなりありそうで、そのために慢性的に渇きがあり、しかも舌炎までできてしまう、そんな人も居られるのだなあ、と実感。最近ストレスのせいで喉が渇く人が多いのだが、飲酒による栄養障害で慢性的に渇く人がいるのだなあと思い知らされた。

2005年05月28日

風邪百題

風邪に関してはいろんなコメントができる。日々患者さんから感じるあれこれは本当に自分の身になるところだ。

今まで、「薬を飲んでも風邪がずーっと続いてしまっています」と言われると、「そうかー、何でかなー」ということで、所見の取り直し。薬の出しなおし、というのが一般的パターンであった。

しかしある時、「これは一度治ってから、再度ひいた風邪だ」ということが分かるようになってから、「何でこういうことが起こってしまったのか?」というところに思いが巡るようになってきた。

最近では、予想外の朝の冷え込みに対応し切れずに鼻水が続いてしまうということがよくあるようだ。続けて風邪をひくパターンも少なくない。

汗をかいているかどうかも大切な病歴になる。特に子供では主観的な症状の把握が難しい場合が多いので、客観的事実として大切な情報である。

ストーリーをよく聞かないと、汗をかいて冷えて風邪をひいたのか、風邪をひいたので放熱のために汗をかいているのか、判断を誤ることになる。冷えたのであればより鼻に傾斜した薬を出さなければいけないし、風邪の汗ということであれば、通常の風邪の対応で十分な場合が多い。

時間経過で風邪を診るということが巷では軽視されているが、風邪の診断ではもっとも重要な観点ではないかと思っている。風邪であれば百題くらいは書けるのではなかろうかと思い、「風邪百題」としてみた。

2005年05月24日