【栄養療法】鉄の欠乏について2
通常の鉄剤を服用するとフリーラジカルで胃痛が生じることがあること。鉄過剰症は、経口投与では生じないことをお話しました。
ところが、鉄を過剰に投与されなくても血清鉄の値が上昇することがあります。それは溶血しているとき、すなわち、赤血球が壊れているときです。このときには赤血球中のヘモグロビンが血清中に出てきますので血清鉄の値は上昇するのです。
これは酸化ストレスが増しているときに生じる現象です。生活環境や、食事の環境の見直しが重要ですが、同時にビタミンEを摂取することで改善されてくるでしょう。
体内貯蔵鉄の指標となるフェリチンという値があります。通常の血液検査では何故か測定されることはまずありません。この値は若い女性では大体低下しています。月経の影響はそれだけ大きいわけです。
ところが若い女性で、フェリチンが低下しない人がいます。正常値だから良いのではないか?ということにはなりません。フェリチンが高い若い女性のの場合考えておかなくてはならない状態がいくつか考えられます。
ひとつは生理不順。生理がこないと出血しないので、フェリチンの値が下がりません。もうひとつは肝臓が炎症などで、フェリチンをたくさん作るように刺激を受けている場合です。あとは、鉄が潜在的に欠乏しているとき、フェリチンを代償的に作って、何とか鉄を貯蔵しようとしている場合でしょう。
私は少しフェリチンの値が高かったので、肝臓の負担を軽減するように、ビタミンBとたんぱく質を十分に補ってきました。これでフェリチンが下がると良いのですが、下がらないときには潜在的鉄欠乏を考えないといけません。
来週ももう少し鉄のお話が出来ると思います。
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2010年10月31日
鉄の欠乏について
鉄については以前にも話をしたかもしれません。
とにかく重要なミネラルなので繰り返しになっても良いでしょう。
鉄欠乏性貧血の方で鉄剤を服用すると胃が痛くなる、という人もいると思います。私はずっと胃酸過多による症状が出てしまうのだと解釈していたのですが、実は違っていました。
原因はフリーラジカルです。
胃の中で3価の鉄が2価に変化しますが、このときにフリーラジカルができてしまいます。これが胃痛の原因になっているのです。
こういう場合でも、胃痛なので胃酸分泌を抑える薬が投与されているケースが多いようです。しかし、それだと鉄が2価に変化しませんから、吸収が悪くなり、鉄剤を投与している意味がなくなってしまいます。
やはり鉄剤はヘム鉄の形で2価のまま摂取した方が良さそうですね。
医師は、鉄過剰症について学生時代に習います。試験にも出やすい項目なので、よく覚えています。反面、鉄欠乏性貧血はありふれているので、かえってよく分かっていないという面がありそうです。
鉄の過剰は口から鉄分を摂取しても生じないようです。過剰になるのは、鉄剤を注射した場合だけのようです。鉄をたくさん摂らないといけない人はたくさんいます。そういう場合にはきちんとしたサプリメントを口から摂れば問題ありません。
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2010年10月24日
【栄養療法】分子整合栄養医学講座を受講しました~ホモシステイン
先週、分子整合栄養医学講座を受講しました。国内唯一の講座で、全国から興味を持っているドクターが集まってきます。今年は昨年よりも20人くらい多い70人くらいのドクターが、もの凄い量の講義内容と格闘していました。
飲み会の席で、あるベテランの先生が「ホモシステインを測定している」と話してくれました。
ホモシステイン・・?
ホモシステインは加齢とともに増加し、葉酸、ビタミンB12、B6が欠乏することでも高ホモシステイン血症になります。
高ホモシステイン血症は血管内皮を傷害しますし、活性酸素を発生させる系
活性化してしまうので、動脈硬化や血栓症の危険因子と考えられています。(知らなかったー)
これを防ぐには葉酸を摂取することが重要とのことです。もちろんビタミンB群の摂取も必要です。
ホモシステイン濃度を測定することは、葉酸とビタミンB12の状態をみる事ができるので、実は大変便利だったのですね。
ただ、ホモシステインの値は抗てんかん薬や喫煙で高値になるので、判断には注意を要します。
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2010年10月17日
【栄養療法】ビタミンDについて2
先週はビタミンDのトピックスについてお話しました。
活性型ビタミンDが骨の形成のみならず、ウイルス性気道感染症を抑えるとか、抗がん作用を持つということがポイントでしたね。
ビタミンDには細胞の分化、角化を誘導する働きがあるため、皮膚病である乾癬の治療に用いられています。この働きは抗がん作用にも繋がると考えられます。
また免疫を担当するT細胞やB細胞に働きかけ、免疫を調整してホメオスターシスの維持に大きく役割を果たしていると思われます。これが感染症に対して抑制的に働くのでしょう。
また、ビタミンDは細胞核に直接働く形態をもっており、タンパク合成を調節していると考えられます。これがペプチドホルモンの分泌の調節に役立っており、インスリン(血糖を下げるホルモン)や、カルシトニン(血液中のカルシウム濃度を下げるホルモン)の分泌に関与するのでしょう。
ビタミンDは食事が吸収される場合と、皮膚に光が当たることで合成される場合があります。加齢とともに食事からの吸収も、皮膚での合成も、低下してくるため、少し運動して日光に当たるのが骨そしょう症の予防に効果的とされています。
ただし、必要以上の日光浴は皮膚がんの原因にもなるため、注意が必要でしょう。
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2010年10月03日
【栄養療法】ビタミンDについての概略
今日は趣向を変えて、ビタミンDについてお話します。
というのは、先日、「抗加齢医学の実際」という講演を拝聴した中で、ビタミンDがウイルス感染の免疫にも有効であることを聞いたからです。
実際に、学童のインフルエンザ予防にビタミンDが有効であるという論文や、活性型ビタミンDの濃度が高くなるとウイルス性気道感染症が減少するという論文があります。
ビタミンDは骨を強くするためにあるビタミンであるという認識でしかありませんでしたが、感染症の予防に効果があるとは驚きました。何でも、粘膜上皮のペプチド形成にビタミンDが必要なのだとか(詳細はまだ私も理解していません)。
抗がん作用も取り上げられていました。効果があるとされているのは、大腸がん、乳がん、前立腺がんです。大腸がんには効果がないという論文もあったりして、評価がまだ明瞭でない部分もあるようです。
現代人には不足しがちな栄養素なので、魚を積極的に食べましょうということで講演は終了しました。
私はビタミンD濃度を測定したことがありませんが、自分でやってみようかなと思っています。今年はインフルエンザワクチンを接種しないで、ビタミンDで対処してみようかな(悩み中)。
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2010年09月25日
【栄養療法】大豆イソフラボンについて2
今日は大豆イソフラボン2回目です。
先週の復習ですが、イソフラボンは女性ホルモンと似た作用を持ち、更年期障害や骨そしょう症に効果を現します。若年者の月経異常の場合には、まずたんぱく質不足や鉄分の不足を補い、必要ならイソフラボンを用いると良いでしょう。
今週はホルモン依存性のがんの話からします。
厚労省研究グループが1990年代に行った研究によると、大豆イソフラボンの摂取量が多いと乳がん発症率下がるとのことです。世界的にもイソフラボン摂取量の多い地域では乳がんの発症率が低いとのことです。アメリカでは乳がん再発予防にイソフラボンが使われているそうです。前立腺がんにもイソフラボンは有効なようです。
がんに効果があるからイソフラボンを摂取しましょう!というのも短絡的な感じがして好きではないのですが、一応現時点で効果が確認できている癌への効果を確認してみましょう。
イソフラボンの一種であるゲニスティンには乳がん、前立腺がんの他、腸がん、肝がん、皮膚がん、胃がん、白血病に対して抑制効果が確認されています。また、別の種類であるダイゼインにも、乳がんや白血病に対する効果が報告されています。
ということでまとめますと、イソフラボンの生理作用としては主に、発がん抑制作用、女性ホルモン様作用、そして骨密度低下抑制作用ということになります。
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2010年09月19日
【栄養療法】大豆イソフラボンについて
今日は大豆イソフラボンについてお話してみます。
大豆イソフラボンは、うちのクリニックで最初に入れたサプリメントです。それだけ可能性を感じていますし、しっかりとした製品であれば効果はそれなりに出るだろうと思っています。
最初は、難聴に効果があるという論文を見て使ってみることにしたのです。しかしその情報の真偽はまだ明確ではありません。恐らく患者さんをうまく選べば良いのでしょうけれど、まだ研究が足らず、実用面で評価できるまでに至っていません。
さて。
イソフラボンが最も効果を現すと思われるのは、更年期障害の方の症状だと思います。女性の場合、女性ホルモンが45歳ごろから急激に減少してきますので、女性ホルモンと似た作用を持つイソフラボンは有用だと思います。
イソフラボンは更年期のホットフラッシュや、月経不順、イライラ、肩こりなどに効果を現すととともに、骨の形成促進、吸収抑制を起こし、骨そしょう症を防ぐものと思われます。
ちなみに、女性は明確に血中エストロゲン濃度が下がるため、骨が脆弱になって骨折することが多いのですが、男性の場合には女性のように閉経という転機がないため、アルコール飲酒、喫煙、甲状腺異常、癌の存在などが原因になって二次的に骨そしょう症になることが多い(30%程度)ようです。
最近、若い人で月経異常が増えているようです。痩身願望があるため、難しいのでしょうけれど、まずはたんぱく質や鉄分を摂取することで栄養状態を改善させて、さらにまだ月経異常があればイソフラボンを使用してみるというのも一法でしょう。
さて、次週はイソフラボンについてもう少し掘り下げてみます。
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2010年09月12日
【栄養療法】(余談)私の糖代謝と脂質代謝について
今日はちょっと私のことをお話してみます。
私は超音波検査で脂肪肝があるのです、コレステロール値も少しだけですが高いのです。尿酸の値も正常上限でした。
脂肪肝を表す血液データとしてGOT20 GPT23と、GPTの方がやや高い値だったのです。20前後の肝炎などがない場合、GOTの方が理論上は高くなります。GPTが高いのは脂肪肝のことが圧倒的に多いのだそうです。
普通であればコレステロールを下げたり、尿酸を下げる薬を使うのかもしれません。しかし私は全く美食家ではありませんので、何か体の異常から来ているに違いないと考え、栄養状態の改善で対応しようとしました。
食後血糖が上がらないように、食前にプロテイン5gを飲み、食事の内容は自由にしました。むしろ油モノが増えたかもしれません。ビタミンB群が重要であることは理解しておりましたので、毎日少しずつ摂取しました。
すると、今回の採血の結果はGOT20、GPT19、尿酸値もかなり下がり、コレステロール値も緩やかに下がり正常範囲に入ってきました。
当初、脂質代謝を改善しようとEPAとDHAを摂取使用と思ったのですが、どうしても自分の体が受け付けなかったのです。そこで基本的な糖代謝とアミノ酸代謝を改善しただけなのですが、脂質にも良い影響があったようです。
3つの代謝はそれぞれ強く結びついているので、まずは最も基本になる糖代謝からきちんと修正していくことが重要なのではないかと感じました。ただ私は昔から血糖が上がり易かったので、効果が大きくでたのかもしれません。脂肪肝はどうなっているかしら・・。
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2010年09月04日
【栄養療法】(拡大番外編)サプリメント外来の行きつくところ
今日はちょっと脱線してサプリメントの総論をお話しようと思います。
先日、ナチュラルハーモニックスクールに行ってきました。
河名さんという代表の方は、自然栽培の作物を店頭に揃えるために大変なご努力をされた方なのです。自分の目でひとつずつ確かめてきたので、ホンモノに対するこだわりが半端ではありません。
まず話されたことは、経済第一主義ですべてのものが提供されているが、これを命第一主義に変えなくてはならない、ということでした。
私もこれは本当に納得しました。真に体に良いものを全ての生産者と流通業者が努力して提供するということが、これからは必要になってくるでしょう。このためには消費者が命第一主義で作られた作物を積極的に購入して良いものを作る生産者を支えていくことが必要です。我が家もハーモニックトラスト会員になることにしました。
このサイトにはいろんな食材の安全を見分ける方法が書かれていました。
こういう自然栽培で作られた強い食材を使っていると、サプリメントなど不要である、と河名さんは話しておられました。果たしてサプリメントは必要ないのでしょうか?
現状では私は必要だと思います。
自然栽培の野菜に目が向いている人たちはかなり健康に関心のある人たちであると言えます。そういう人たちの場合、日頃から体のケアが成されていて、河名さんのスクールにもいらっしゃる人たちなのでしょう。
しかし健康に関心のない人たちも少なからず存在します。そういう方たちは健康に関する情報を集めることはしないので、体調が悪くなると良い野菜には目が向かず、病院に来ることになるわけです。もちろん、病院にいらっしゃる方が全て健康に関心がないとは思いませんけれど。
そういう人たちには、まず健康の立て直しが必要であると考えます。サプリメントはそういう面では大変有用なツールであると思います。健康に関心が薄いのですから結果を早く出す必要もあると私は考えています。
ある程度、栄養状態が良くなってから、次の段階に進むわけですが、さらに品質の良いサプリメントを飲んでいくというのもひとつの手段と考えます。
しかし私はもうひとつの道として、自然栽培で作られた作物を勧めていく、ということも面白いのではないかな、と考えています。
現在の農業の問題点は、作物の品質にあると考えます。ですので、その点がクリアされるのであれば、農業から状況を改善していくというのは、考え方としてとても良いのではないかと思うのです。
みなさん、如何思われますでしょうか?
ご意見、質問はメールで結構ですのでお寄せ下さいね。
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2010年08月22日
【栄養療法】コンドロイチン硫酸とグルコサミンについて2
今日はコンドロイチン硫酸とグルコサミンについて考えます。
先週は老人の膝痛や白内障、飛蚊症の予防、肌の保湿にコンドロイチン硫酸とグルコサミンが役立つ可能性があるので、総合的に老化を予防する可能性があるというお話をしました。
他にも効果の上がる可能性のある病態があります。
手術後や外傷のときには、組織の修復に役立つことが考えられます。これは予想がつきますね。
ではこれはどうでしょう?
ネフローゼ。これは通常なかなか治りにくい病気に入ると思います。まず、尿のタンパクがどのように保存されているか考えてみましょう。
腎基底膜は負に帯電して、同じく負に帯電しているタンパク質が腎糸球体でろ過されにくいような仕組みを持っています。これを荷電バリアと言います。もちろんタンパク質がろ過されてしまわないように、網の目のサイズも小さくなっています。これはサイズバリアと呼ばれます。参考サイト
コンドロイチン硫酸は負に帯電しているので、これが助けになり尿タンパクが出ている人(つまりネフローゼの患者さん)でも、尿タンパクが出なくなるようです。これについては、裏付けとなる情報をサイト上で探したのですが、見つかりませんでした(泣)。
ただ、コンドロイチンを摂取して尿タンパクがなくなった方の体験談がこのサイトに掲載されています。ご覧下さい。
やはりネフローゼにコンドロイチン硫酸の効果があることは明らかのように思えます。
来週も続くと思います。
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2010年08月14日