合う薬
今日は少し難しい話。
とある患者さん。私の処方した漢方薬が良かったようで
「この薬はどうも私に合っているみたいなんですよ」
とおっしゃってくれた。
・・・?
薬が本人に合っているから効いたのか??
確かに、本人に合っているのだと思う。でも、それは偶然「合った」のではなく、私が「合わせた」のであると言いたい。実際かなりよく考えて選択した処方であった。
でもよく「私には合わない」「私には合っている」なんて話をよく耳にする。日常のありふれた会話で出てくることだ。
私が処方したものでも合わないということは少なからずある。でもそれは本人が薬に合わなかったのではなく、こちらが本人に合わせた処方を選択できなかったのだと私は思う。
大した違いではないけれど、もっといろんな面で検討を加えれば、きっともっと良いものが選択できたに違いない。
ただ現状の医療レベルでは、それを完全にすることはできていないし、また患者さんの側も偶然頼みの部分を持っているのだな、と改めて思い知らされた。
まだまだ勉強することが多そうだ。
2005年07月12日
こどもの診察
こどもの診察は面白い。と何度も書いているけれど(笑)。
何と言っても泣き叫ぶ子供をどうやって、あるいは何回で泣かずに診察を受けさせることができるか、これがやりがいのあるところなのだ。
必ずどんな子ども達も耳鼻科は怖い。でも必ず泣かずに、進んで診察台に向かうようになるものである。
子ども達に安心を与えればいいのである。もちろんご両親の協力は必要だ。私は
1.同じ手順
2.同じ診察
3.同じ口調
4.同じ薬(全部同じとはいかないが)
を使っている。あとはきちんと短期間で治す事が求められる。
ご両親に必要なのは、ありのままを伝えること、ありのままを心構えさせることである。つまり、
1.耳鼻科に行くことを伝える
2.何で行くのかを伝える
3.行くとどうなるのかを伝える
4.処置が終わったあと、できたことに関して適切に誉める
ということである。まあ当たり前のことだ。これらを全て繰り返しているとだんだん子ども達は泣かなくなっていくのである。
2005年07月09日
今日も・・
今日もいろいろな人たちに来ていただきました。
今日の行きがけに、「そういえば最近、治らないっていう事を言われなくなったなあ。やっぱり漢方の知識も、詳細をとことん聞く胆力も何でも総動員して治療している成果がとうとう出てきたなあ。」なーんて考えていたわけです。
でもやはりそれは甘い甘い考えでした。
「まあだいたい良いのですけれど、、、」
「仕事中に#$%&・・」
こんな患者さんがちらほら。。。本当に自分の力不足が申し訳ないのですが、ただ今のところこれが自分の全力であるのも事実です。
漢方の勉強を始めたときのように、やはりもうひとつ何か欲しいと感じます。西洋医学の縦糸と、東洋医学の横糸、そしてもうひとつ欲しい。精油(アロマの)に関する本をアマゾンで買ってみようと思って買い物かごに入れてありますが買うか買わぬか。。。そしてまだ横糸も少し弱いので強化しなくてはと思い、また日々鍛錬している今日この頃です。
日常の診療にご不満を持たれた皆様(たくさん居られたら悲しいですがー)、完璧診療まではまだしばらくお待ち下さいませ。日々努力中でございます。
2005年06月24日
のどの痛み
今日の診察では季節柄、耳が痒くなったり、めまいがしたり、聞こえがおかしくなったりという診察もあったのだが、今日は喉の診察について考えてみたい。
風邪をひいた人は、「喉が痛くなった」と言って診察室に来られる。この時点ですでに風邪を発症して数日経過していることが多い。それを指摘して発症日を推測するためにいろいろ質問する、というのが私の常道なのだが、最近ではなかなかさかのぼれない。それは何故か?
これは推測なのだが、風邪の病歴をさかのぼれない人たち、つまり風邪という自覚を持たずに喉が痛いと言って来られた人たちは、決まってかなり多忙な人たちである。したがって、そのハイテンションによってだるさとか寒気は飛んでしまい、熱でさえ発散して微熱程度で済んでしまっているのだと思う。
そうして喉が痛いと言って初めて診察室にやってくる、これが真実なのではないだろうか?たかが喉の痛みなのであるが、こんがらがった糸をほぐしてより正確に処方を出すためには結構いろいろ考えざるを得ない。
喉の痛みにもなかなか取れないものがあるのは確かである。例えば不適切に消炎鎮痛剤が使われてかえって痛みが増したり、微熱が取れなくなったりすることも少なくないが、あまり一般には知られていないのは残念である。
今日は「喉の痛みがずっと取れない」と言って来られた患者さんが居られた。折角遠方から来られた方だったので、自分なりに集中して対処した。私はその患者さんには漢方処方で対応してみたのだが、満足のいく結果になったであろうか?その方は知り合いの紹介で来られた。喉の痛みで紹介してくれたその紹介者の方にも、わざわざ来ていただいたその患者さんにも、この場を借りて御礼を申し上げる次第である。
2005年06月21日
子どもにまつわる話
こどもの診察は面白い。けれど大人にはない難しさがあるように思う。難しいからこそ挑戦しがいがあるのもまた事実である。
今日は幼稚園か、というくらいに子どもばかりの診察であった。自分に子どもが生まれる前は、子どもの診察が得意です、と言える事はなかったように思う。ただ子育てに自分なりに真剣に取り組み、いろいろ悩んだりしているうちに、少しやり方が分かってきた面があるように感じている。
子どもは症状を言わないし、所見も取りにくい。圧倒的な情報不足の中であれこれ推論をしつつ、日々診療の精度を高めているつもりである。そんな中で案外、日常生活に落とし穴がたくさんあることに気づかされる。この季節はとにかく寝冷えが多い。私にはこの季節を乗り切るための独自の理論がある。現在うちの子供たちでそれを検証しているところである。そのうち披露することができるかもしれない。
さて、昔は父親が厳しく、母親が甘いという家庭が多かったように思う。私もそういう両親に育てられた。子どもを育てるときに何か威厳のようなもの、筋の通ったものを見せつけるのが私は必要ではないか、と考えている。父親が忙しさゆえに子育てに関わることがだんだんできなくなり、その分、母親がどんどん厳しくなっている感じがする。
果たして母親が子どもに対して威厳を示すことができるだろうか?特に理由はないが答えはNOである。やはり父親には威厳を、母親には優しさを求めたい。これが自然な家族のあり方ではないだろうか?考え方が古いかな?
いろんな子ども達を見ていて感じるのだが、子ども達の精神的な安定をもたらしているのは、父親の子どもに対する接し方と、母親の優しさ特に声かけの量であると思ったので、ついついこんなことを書いてしまいました。
2005年06月19日
捨て去られる治療
歯性上顎洞炎という病気がある。抜歯した後にその穴から上顎洞に感染を起こしてしまい、口の中に膿がいつまでも流れ込むちょっとやっかいな病気である。
要はその開いた穴が塞がればあとは抗生物質で料理できる状況になるわけである。穴は感染が収まれば塞がってくるのであるから抗生物質を初めから使えば良いではないか、ということを言う人もいるかもしれない。しかしすでに膿がたまっている状況ではなかなか抗生物質が効かないことは容易に予想できる。
とにかく綺麗にする。でも抗生物質は有効性に欠ける予想である。そこで何を選択すべきか。まずはじめに口の中の穴から水を入れて洗えないか、と考えてみた。昔、病棟の患者さんにやった方法である。穴が大きくないと洗えないけれど、穴が大きいと塞がらない。結局、そのときには穴を塞ぐ手術を選択したわけだが、今回は口から洗えるような穴は見当たらなかった。小さい穴なのだろう。
で、仕方がないので、鼻の中から洗浄する方法を選択した。シュミット探膿針による副鼻腔洗浄である。なんで「仕方がない」なのか?と思われる人もいるかもしれないが、準備が面倒で時間がかかるので気持ちとしては「仕方がない」になってしまうのである。患者さんも大変だ。鼻から針で刺されて一瞬とは言えやや痛い処置である。でも存分に膿が出てさぞかしさっぱりした状態で帰宅しただろうと思う。
何軒か耳鼻科を経由したようだが、どこも上顎洞洗浄を選択しなかったようだ。でもこの場合、やはり選択肢の上位に挙がるべき処置のように思う。昔の処置だから捨て去られる運命にあるのか、あるいは面倒だからみんな避けているのか、はたまたリスクがあるのにあまり点数がつかないから嫌気がさすのか。大切にしたい古い治療がどんどん忘れ去られている昨今だが、ハイテクばかりが能ではないということでも改めてこの古臭い処置を通じて強く感じさせられた。
2005年06月16日
私は嫌い!後発品薬剤。
独自に開発した薬剤の特許が切れると、他の製薬メーカーが独自の製法で同じ構造式の薬剤を作る。これが後発品薬剤と呼ばれるものである。
さて、ドクターや薬剤師の反応は様々。
・安いから好ましい
・やはり安かろう悪かろうではないか?
・大手メーカーではないので、安定供給できるのか?
・大して変わらない
・開発したメーカーがかわいそう
・薬価が下がっても中小メーカーは供給してくれるのか?
・医療費抑制のために仕方がない
私の感想。
他の医師に受診している患者さんの薬のリストを見たとき目がくらくらすることがある。後発品の知らない名前ばかりのリストになっているときがある。昨今は相互作用などの検索もしてから処方しなくてはならない(と私は思っている)ので、治療薬2005を使って、必要な限り検索して自分の使える薬を探していくことになる。
こんなに手間がかかることを医師みんながやっているのだろうか?ちょっと疑問に思うことがある。コンピュータで検索してもそこそこ時間がかかる。後発品はデータが古いと検索しきれないこともある。だいたい同じ成分の薬に対して10個も20個も名前があるのである。そんなもの人間業では覚えられるはずがない。覚えたいとも思わない。
仕組みが単純な方が安全に決まっている。患者側も行政も多少のコストを払って安全をとるべきではないだろうか?私は私の患者さんが他の医院に出かけたときに危険な目に遭いにくいようにできるだけ先発品を使用したいと思っている。
ただ・・
行政が後発品を推進しているので「後発品を使用しないと処方箋料は半額です」なんてことになりかねない。今でも実は後発品を使用しない処方箋料は20円安いのである。20円だから我慢できるが、今後の制度の変化が少し怖い。
2005年06月10日
水泳ブームも考えもの
子どもにプールを習わせるのが流行のようだ(何て言いつつ自分の子ども達も習っている)。
プールの後に体が冷たくなったままということがあり、これで鼻水が止まらないことも少なくないようなので注意が必要だ。風邪の後に鼻水だけが止まらないという時には、プールについても一応チェックしておきたい。診察中には「すぐに温かい風呂に浸かるように」と指導している。
プールには塩素濃度の問題もある。アトピー性皮膚炎が塩素で悪くなることがあるのか、皮膚が赤くなってしまうお子さんもいらっしゃる。一部には塩素濃度がとても高いプールもあるそうなので注意が必要だと思う。
最近、アデノウイルス感染症が流行している。高熱が数日続くので結構辛い。いわゆるプール熱のように結膜炎がある典型的なお子さんは少ないのだが、やはりプールで感染を起こす子もいるのだろうな、と思う。プールに通っているかどうか聞けば良かったなー(反省)。
子どもをプールに通わせるだけでも結構いろいろ考えさせられる。
2005年06月07日
酒と耳鼻科
飲みすぎが体に悪いとか、少し飲むのは体に良いとか。さも分かったようなことを言うのだが、実際にどのくらい良いのか悪いのかちょっと考えさせられることがあった。
昔から飲酒の量を聞くときには、咽頭癌、喉頭癌、口腔底癌、舌癌を意識していることが多かった。これは大酒飲みで酒を味わうように飲んでいる人に口の周りの癌が生じやすいということがあるからだ。料理人が料理をしながら毎日のように飲んでいて口腔底癌、あるいは豪快に酒タバコを飲みながら「がははー」と笑い飛ばす首の短いおじさんの喉頭癌、そんな人たちを思い浮かべる。
日常の症状としては、睡眠時無呼吸やいびきを意識していた。何人か飲酒が原因で、飲酒をやめさえすればいびきなどの呼吸障害が生じない人がいた。私は嗜好を変えるのは無理とは言わないが、結構困難だと思っているので、あまりそういうことは言わないのだが、このときばかりは飲酒をやめるように指導させていただいた。
今日はのどの渇き。
酒を飲むと血管が開くため一時的にのどが渇く。この渇きなら自分でもかなり経験済み(笑)。でも栄養の偏りもかなりありそうで、そのために慢性的に渇きがあり、しかも舌炎までできてしまう、そんな人も居られるのだなあ、と実感。最近ストレスのせいで喉が渇く人が多いのだが、飲酒による栄養障害で慢性的に渇く人がいるのだなあと思い知らされた。
2005年05月28日
睡眠について
日本人は睡眠を軽視しがちである。かく言う私もこんな時間にブログを書いているので人のことは言えない。
先日学会で、夜のアジアの写真を見せていただいた。何時ごろなのだろうか?日本が一番時刻が遅いと言うのに日本中が煌々と明るく照らされていた。中国の内陸部などは電気事情が悪いところもあるのかもしれないが、日本の明るさは見た目に明確に異常であった。
睡眠時間は7時間がちょうど良いというのがいろんな疾病罹患率から言えることの様であった。長くても短くてもあまり健康のために良くないらしい。それと睡眠が短いことによるいろんな健康に対する悪影響があるようだ。もしかするとアレルギーなどの反応も睡眠不足による自律神経の異常に起因するところなのかもしれない。
今はかなり難しいかもしれないけれど、歳を取ったら好きなように寝られるようになっておきたいものだ。
あー、早く寝ないと・・。
2005年05月23日